「うぅ……ヒリヒリしまぁす……」
泣き言を言いながら顔に化粧水を塗ってるのは、エル。日焼け止めを塗りなさいとあれほど言ったのに、海に出たエルの顔には愉快な日焼け跡がくっきりと出来ていた。
日焼け跡と言っても周囲が真っ赤になっているだけで、このあと黒くなったりはしないというのだからたちが悪い。私は赤くなって皮が剥けてしまうから、日焼け止めは必須だった。
「さっきお風呂もすごくしみましたし、明日からはグラスの言うとおりにしまーす」
「ええ。是非そうしてください」
私はエルの体に化粧水を塗り込みながら、エルをたしなめる。痛い目にあっているのだから、きっと明日は自分で塗ることでしょう。
「グラスー、明日は背中はよろしくデス」
「それなら私の背中にも塗って貰えますか？」
「スィ！モチロン！」
明るいいつも通りの笑顔で答えてくれるエル。
今日はエルが早々に海に飛び出して行ったので、マルゼンさんが塗ってくれたのだ。そして言われた。
『明日はエルちゃんにしてもらいなさい』と。
こうしてお願いしてみたらエルは快諾してくれて、良かったと思う気持ちと、嬉しいと思うどこかくすぐったい気持ち。
エルが、私の肌に。そう考えたら少し頬が熱くて、でも恥ずかしいわけではなくて。
（なんでしょう。塗ってもらうだけなのに、こんなに気持ちをかき乱されるなんて）
エルに触れるのも触れられるのも初めてじゃないのに、改めてお願いすると照れのような言葉にしがたい気持ちが沸いてきてしまう。
（せめて、エルも私と同じ気持ちならいいのに）
目の前にいるエルを思わず睨むように見てしまうけれど、エルは首を傾げてきょとんとしただけだった。