静かなのは落ち着くから好きだけれど、夜中に目を覚ましたときの静寂はどこか寂しくて苦手。
まるで私一人だけしかいないような、そんな錯覚を覚える。
（たぶん、少しだけ、体調が良くないのかも）
そんな風に考えてしまうときは、決まって体調の悪さに心が引きずられているとき。
明日から体調管理に気をつけなくちゃと、もう一度寝なおそうとしてみるものの、何だか寝付けない。
（寝ないと、ますます体調が乱れてしまうのに）
何度かごろごろと体勢を変えてみるけれど、どうにも寝付けない。けれどここで起きて明日の予習をしようにも、ライトの灯りで隣で寝ているエルを起こしてしまうかもしれない。
「……グラス？」
「えっ……？エル？」
いつから起きてたんだろう。
「あの、もしかして、起こしてしまいましたか……？」
「ううん。何か目が覚めちゃったデス」
二人して目を覚ますなんて、なんて偶然だろう。一人しかいないと思っていたところにエルが現れてくれたことが、本人には言えないけど嬉しい。
「グラス、寝れないの？」
「……はい」
隠しても仕方がないから正直に話す。すると衣擦れの音がして、気配が近づいてきて。
「グラス、お邪魔します」
「えっ」
そのままエルが私のベッドに潜り込んできた。そしてギュって抱きしめられる。
心地よいぬくもりが、私を包む。
でも、どうして。
「グラス、今ちょっとだけ人肌が恋しいんじゃないかなって」
私が聞く前にエルが教えてくれた。
そんな風に考えてはいなかったのだけれど、エルのぬくもりに安心して眠気が少しずつ戻ってくるのを感じる。
「朝までぐっすりスリーピングデスよ」
優しさに溢れた甘いエルの声が更に眠気を誘ってくれて、私はゆっくりと意識を手放した。