タイキ×ドーベル
※置き場に迷いましたが、タイキ×ドーベルが前提なのでこちらに。
タイキシャトルは空になった隣のベッドを見て、深いため息を吐いた。
今日、同室の彼女、メジロドーベルは遠征で部屋を留守にしている。
普段なら寂しいと喚いてしまうところだったが、タイキシャトルは比較的落ち着いていた。その腕の中には「タイキが寂しくないように」と、メジロドーベル置いていった彼女自身を模したぬいぐるみが収まっている。
大きめのサイズをわざわざゲームセンターでメジロドーベルは取ってきてくれた。
あの、ひと目を気にしてしまうメジロドーベルが、彼女自身のぬいぐるみを、間違いなく注目を浴びるゲームセンターという場所で、自らの手で、だ。タイキシャトルはエアグルーヴからそれをあとで聞いて、それはそれは大層喜んだ。
「ドーベル……ふふっ」
ぬいぐるみは先程までメジロドーベルのベッドに潜り込ませておいた。そのおかげか抱きしめるとふわりと彼女の香りが、タイキシャトルの鼻腔を優しくくすぐった。
さて、そろそろ寝ることにシマショー。
タイキシャトルは大切に大切にメジロドーベルのぬいぐるみを抱きしめて、ベッドに潜った。
潜ったのだが……。
(うぅ……ドーベルのぬいぐるみがあるのに、やっぱりとってもロンリーデース……)
ぬいぐるみは一人である寂しさを軽減させてくれているはずなのに、別の気持ちが沸き上がる。
(会いたいデス)
寂しくはない。あまり。そんなに。ちょっとだけ。
しかし、メジロドーベルに今すぐ会いたいと気持ちが目覚めてしまった。
会いたいと寂しいはよく似ていて、すぐに気持ちはまざりあって、タイキシャトルはくすんと鼻を鳴らす。
「うぅ……これじゃスリープできないデース」
メジロドーベルに電話したくても明日がレースの本番で、彼女のレースの邪魔だけはしたくない。
そう考えて、頭に浮かんだのは可愛い後輩たちの姿だった。
「ウマアネゴに言って、二人のとこに行きマショー……」
同じ寮内とはいえ、報告は一応しなければならない。ヒシアマゾンに一言報告すると「それならアタシのとこにいなよ」と言われたが、「可愛い後輩のとこに行きたいのデース」と断りを入れる。
とぼとぼ、ひっそり。足取りはいつもより大人しく、可愛い後輩、エルコンドルパサーとグラスワンダーの部屋へと赴く。
事前にヒシアマゾンに注意されたとおり、控えめにコンコンと部屋の扉をノックすると「はい」と甘く優しい声が返ってきた。
「グラス、ワタシデース」
「タイキ先輩?」
返事をしたのはグラスワンダーで、ノックをしたのがタイキシャトルだとわかるとすぐに扉を開けた。
グラスワンダーの目に開けてすぐに飛び込んできたのは、耳が伏せて寂しいデスといったオーラを全開で出しているタイキシャトル。タイキシャトルの寂しげな顔と、腕に抱かれたメジロドーベルのぬいぐるみを見て、ふわりと微笑みながらグラスワンダーは彼女を招き入れた。
「あー……、エルはもうグッドスリーピングデスネ」
「ええ。明日も朝早くから走り込みをすると」
大きく口を開けて間の抜けた顔を晒してるエルコンドルパサーに、タイキシャトルは申し訳なさそうに身を縮こまらせる。
「タイキ先輩、今日はドーベル先輩が遠征でしたっけ」
「イエース。ドーベルがいなくてロンリー。ぬいぐるみを代わりに置いていってくれたのに、ロンリーで、今すぐ会いたくなっちゃいマシタ」
「なるほど……」
「グラァス、一緒に寝てクダサーイ」
「構いませんよ」
「オウ、イエース!!」
グラスワンダーの快諾に隣で寝ているエルコンドルパサーのことを考え、リアクションも声のボリュームを控えめにしながらも、目の前にいる可愛い後輩に抱きついた。
「……私、きっとタイキ先輩の気持ちがよくわかる日がいつか来ると思うので」
「グラス?」
タイキシャトルに抱きつかれたまま、グラスワンダーは視線を健やかに眠るエルコンドルパサーの方へと移す。
「いつかエルは世界に羽ばたいて、この部屋を空ける日が多くなります。きっと、そのとき私は今日のタイキ先輩のように、寂しいと感じるのだと」
「グラス……」
エルコンドルパサーを見るグラスワンダーの視線には、寂しさが滲む。それはタイキシャトルがよく知っている感情だ。今日の自分よりもずっとずっと離れている時間が長くなるだろう後輩に、タイキシャトルはたまらなくなった。
「グラス。もしその時が来たら、今度はワタシたちのところに来てクダサイネ。いつでもウェルカムデース」
「……もしものときは、はい。今のタイキ先輩の言葉を思い出します」
「うぅ……ロンリーは良くないデス。絶対に来てクダサイ」
「……ふふっ」
タイキシャトルの言葉にイエスともノーとも言わず、グラスワンダーは笑みを漏らすだけだった。
夜も深くなり始め、タイキシャトルとグラスワンダーは同じベッドに潜り込む。
「グラス、このドーベルを真ん中に挟んでオーケー?」
「イエスです」
メジロドーベルのぬいぐるみを真ん中に置いて、タイキシャトルはグラスワンダーをその大きな体で包み込んで眠りについた。
タイキシャトルは空になった隣のベッドを見て、深いため息を吐いた。
今日、同室の彼女、メジロドーベルは遠征で部屋を留守にしている。
普段なら寂しいと喚いてしまうところだったが、タイキシャトルは比較的落ち着いていた。その腕の中には「タイキが寂しくないように」と、メジロドーベル置いていった彼女自身を模したぬいぐるみが収まっている。
大きめのサイズをわざわざゲームセンターでメジロドーベルは取ってきてくれた。
あの、ひと目を気にしてしまうメジロドーベルが、彼女自身のぬいぐるみを、間違いなく注目を浴びるゲームセンターという場所で、自らの手で、だ。タイキシャトルはエアグルーヴからそれをあとで聞いて、それはそれは大層喜んだ。
「ドーベル……ふふっ」
ぬいぐるみは先程までメジロドーベルのベッドに潜り込ませておいた。そのおかげか抱きしめるとふわりと彼女の香りが、タイキシャトルの鼻腔を優しくくすぐった。
さて、そろそろ寝ることにシマショー。
タイキシャトルは大切に大切にメジロドーベルのぬいぐるみを抱きしめて、ベッドに潜った。
潜ったのだが……。
(うぅ……ドーベルのぬいぐるみがあるのに、やっぱりとってもロンリーデース……)
ぬいぐるみは一人である寂しさを軽減させてくれているはずなのに、別の気持ちが沸き上がる。
(会いたいデス)
寂しくはない。あまり。そんなに。ちょっとだけ。
しかし、メジロドーベルに今すぐ会いたいと気持ちが目覚めてしまった。
会いたいと寂しいはよく似ていて、すぐに気持ちはまざりあって、タイキシャトルはくすんと鼻を鳴らす。
「うぅ……これじゃスリープできないデース」
メジロドーベルに電話したくても明日がレースの本番で、彼女のレースの邪魔だけはしたくない。
そう考えて、頭に浮かんだのは可愛い後輩たちの姿だった。
「ウマアネゴに言って、二人のとこに行きマショー……」
同じ寮内とはいえ、報告は一応しなければならない。ヒシアマゾンに一言報告すると「それならアタシのとこにいなよ」と言われたが、「可愛い後輩のとこに行きたいのデース」と断りを入れる。
とぼとぼ、ひっそり。足取りはいつもより大人しく、可愛い後輩、エルコンドルパサーとグラスワンダーの部屋へと赴く。
事前にヒシアマゾンに注意されたとおり、控えめにコンコンと部屋の扉をノックすると「はい」と甘く優しい声が返ってきた。
「グラス、ワタシデース」
「タイキ先輩?」
返事をしたのはグラスワンダーで、ノックをしたのがタイキシャトルだとわかるとすぐに扉を開けた。
グラスワンダーの目に開けてすぐに飛び込んできたのは、耳が伏せて寂しいデスといったオーラを全開で出しているタイキシャトル。タイキシャトルの寂しげな顔と、腕に抱かれたメジロドーベルのぬいぐるみを見て、ふわりと微笑みながらグラスワンダーは彼女を招き入れた。
「あー……、エルはもうグッドスリーピングデスネ」
「ええ。明日も朝早くから走り込みをすると」
大きく口を開けて間の抜けた顔を晒してるエルコンドルパサーに、タイキシャトルは申し訳なさそうに身を縮こまらせる。
「タイキ先輩、今日はドーベル先輩が遠征でしたっけ」
「イエース。ドーベルがいなくてロンリー。ぬいぐるみを代わりに置いていってくれたのに、ロンリーで、今すぐ会いたくなっちゃいマシタ」
「なるほど……」
「グラァス、一緒に寝てクダサーイ」
「構いませんよ」
「オウ、イエース!!」
グラスワンダーの快諾に隣で寝ているエルコンドルパサーのことを考え、リアクションも声のボリュームを控えめにしながらも、目の前にいる可愛い後輩に抱きついた。
「……私、きっとタイキ先輩の気持ちがよくわかる日がいつか来ると思うので」
「グラス?」
タイキシャトルに抱きつかれたまま、グラスワンダーは視線を健やかに眠るエルコンドルパサーの方へと移す。
「いつかエルは世界に羽ばたいて、この部屋を空ける日が多くなります。きっと、そのとき私は今日のタイキ先輩のように、寂しいと感じるのだと」
「グラス……」
エルコンドルパサーを見るグラスワンダーの視線には、寂しさが滲む。それはタイキシャトルがよく知っている感情だ。今日の自分よりもずっとずっと離れている時間が長くなるだろう後輩に、タイキシャトルはたまらなくなった。
「グラス。もしその時が来たら、今度はワタシたちのところに来てクダサイネ。いつでもウェルカムデース」
「……もしものときは、はい。今のタイキ先輩の言葉を思い出します」
「うぅ……ロンリーは良くないデス。絶対に来てクダサイ」
「……ふふっ」
タイキシャトルの言葉にイエスともノーとも言わず、グラスワンダーは笑みを漏らすだけだった。
夜も深くなり始め、タイキシャトルとグラスワンダーは同じベッドに潜り込む。
「グラス、このドーベルを真ん中に挟んでオーケー?」
「イエスです」
メジロドーベルのぬいぐるみを真ん中に置いて、タイキシャトルはグラスワンダーをその大きな体で包み込んで眠りについた。