タイキ×ドーベル

 朝起きれば、まだ気持ちよさそうにすやすやと眠っているルームメイト。ちょっとだらしない寝顔が可愛いと感じてしまうのは、きっとアタシがタイキのことをよく知るようになって、そして、好意を抱いているから。
「タイキ、朝だよ」
 こうして起こしてあげるのもすっかり日課で、でも声をかけてあげるだけじゃ起きないのだ。
「タイキ、起きて」
 ゆさゆさ。
 近づいて、体を揺さぶって、むむっと眉が中央に寄っていく。すると頭を布団で覆って「mmm……」と悩ましげなうなり声が上がった。
「あとファイブミニッツ……」
「そう言って十五分寝てたのは誰?」
「ワタシ……デース」
「ほら、朝ご飯食べ損ねちゃうから。起きないなら置いてっちゃうからね」
「ノー!!」
「うわっ」
 さっきまでのねぼすけはどこへやら。タイキは勢い良く起き上がって、アタシにぎゅっと力強く抱きついてくる。寂しがりのタイキは一人にされることが嫌だから、そういうことを匂わせる言い方をするとすぐに起きてくれる。
(でも、この勢い良く抱きしめられるのは慣れないな)
 ぎゅうぎゅうとアタシの体に押し付けられる、タイキの豊満な体。顔が胸に埋まりそうになる。
「タイキ、苦しいから」
「だってぇ、ドーベル、先に行くって」
 うるうると瞳を潤ませてこっちを見てくるしょんぼりとした様子は、なんだか大きな犬みたい。
「ちゃんと起きれたなら待っててあげるから、ほら、支度してきなよ」
「イエース!」
 一度しっかりと起きてしまえばシャキッと目を覚ましてくれるのが、タイキのいいところ。まあ、寝ぼけたままなこともあるんだけど。
 タイキが身支度を終えて、さて食堂へとなったところでふいに後ろからぎゅっと緩く抱きしめられる。
「タイキ……?」
「ドーベル、おはようのキスしてないデース」
「っ、恥ずかしいから」
「ダメ?」
 また、しおらしく、仔犬みたいな顔。
 恥ずかしいからこの習慣は止めたいけど、でも、タイキのこの顔を見ちゃうと、すごい罪悪感が押し寄せて。
「……ほら」
「サンクス」
 アタシはタイキのキスを受け入れるしかなくなってしまうのだ。
 唇に触れるしっとりと柔らかな感触。初めてじゃないのに、ドキドキと心臓はうるさくて、ほっぺたも熱くなってしまう。
「今日もメニーメニーハッピーな一日になりマース」
「……もう」
 幸せそうに緩んだタイキの笑顔に、アタシの口元もそっと緩んだ。
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