エルはいつでも我が道を行く。そんなエルを引き止めるのは、ルームメイトである私の役目。
「ほらほらエル？　今日はこれくらいにして、もう休まなくちゃ駄目ですよ？」
「うぅ……エルはまだまだやれますよー！！」
　今日だってオーバーワーク。頑張るエルは素敵だけど、頑張り過ぎは毒だと言っても中々聞いてくれないエルはちょっと嫌い。
「休むのもトレーニングの一つだって、トレーナーさんにも言われたでしょう？」
　私とエルを気にかけてくれている優しいトレーナーさんの顔が浮かぶ。ここで無茶をしてエルが倒れたりしたら、トレーナーさんはとても悲しむだろう。
　もちろん、私も悲しい。
　エルにはいつだって元気でいてほしいから。
「部屋に戻ったら、膝枕でもして眠らせてしまおうかしら？」
「えっ！？　そ、それは恥ずかしいデース！！」
「部屋には私達しかいないのに？」
「だっ、だって、グラスの顔すっごく近いし、いいニオイしますし……。すっごくドキドキしちゃいますよ」
　そう言ってもじもじとしてくれるエルは、いつもの勢いが鳴りを潜めて、普段と違う可愛さがある。
　思わずニヤついてしまいそうになる口元を右手でそっと隠して、私はエルの後ろに回った。
「ほらほら、汗を流して部屋に戻りましょう？」
「わかりました！　わかりましたからぁ！！　膝枕は無しデスよ！？」
「わかってまーす」
　エルってば、まだわたわたしてる。そんなに嫌がられるとちょっとだけ寂しいような、傷ついてしまうような。
　でも、エルが無茶をしないと約束してくれるなら、これでいいんです。