君の
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《君の背》
冷たい雨と、崩れた化粧を流すためにシャワーを浴びている。
温かいお湯が体を流れて行って、芯から溶けてしまいそうな気分になる。
もっとも、それはシャワーの温かさだけでなく。彼が帰ってきてくれたことへの安堵があることは言わずもがな、だ。
『ジン、シャワー空いたよ』
「ああ」
髪を乾かしながらソファーへ座れば、入れ代わるようにシャワールームへ消えていく彼。
(帰ってきたんだな)
ハンガーにかけられたコートと、フックにかけられた帽子。灰皿のタバコ。
それらを眺めてひっそり微笑んだ。
彼がいる。それがこんなに嬉しいなんて。
「…おい、[#dn=2#]」
『あ、ジンあがっ…って、な、なんか着てよ!』
「あ?着てるだろ」
『違うよ上!Tシャツでいいからなんかないの!?』
「今更何が恥ずかしいんだよ」
『うっ…』
ドカッと隣に座った彼。確かに下はちゃんとズボンだ。でも、なぜか上半身裸。
「仕方ねぇだろ、このまま服着たら濡れるだろうが」
『あっ、ドライヤー壊れてるんだっけ…』
びしょびしょではないにしろ、幾分濡れた彼の髪。
私くらい短ければ大して気にもならないが、彼程の長髪ならそれも頷ける。
『ジン、後ろ向いて』
「あ?」
『ほら』
訝しげな彼に背を向けさせて。自分は使わないヘアゴムで軽く結わう。
長い銀髪にやや苦戦したが、そこそこ綺麗にまとまった。
『どう?少しはいい?』
「まあまあだな」
満更でもなさそうな彼の背中をまじまじと見る。
彼の背中を見る機会も少ないが、こうして髪に隠れていないのを見るのは初めてのように思う。
細くて、白くて。なのにたくましい。
(私は、この背中に守られている)
「…どうした?」
『ん?愛しいなぁって』
彼の体に腕を回して、背中に額をくっつけた。
私を快く思わない人からの言葉、攻撃、危険な仕事、全部この背中が守ってくれている。
私なんかの為に、見えない傷を沢山つけながら。
『私を守ってくれてるこの背中が、とても愛しい』
「はっ、そうかよ」
『うん。だから』
いつかは、私がこの背中を守れるようになりたい。
「随分と先の長い話だ」
『そうだね』
私の方に体重を少し預けて、彼は愉しそうに喉で笑った。
『…でも、無事に帰ってきてよかった。お帰りなさい』
「、ただいま」
いつかは君の背を
(預けられてみたい)
(今は守られるだけだとしても)
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