君と僕の
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《君と僕の記憶》
微かに聞こえた銃声と、僅かに香る硝煙の匂い。
頭の中で何かが瞬くように現れて繋がりかけた。
「…大丈夫、終わった」
『……』
抱き締めてくれる温もりの中に、燃え上がる家が浮かんで消える。
それから、倒れるお父さんと、お母さんの悲鳴。
「…お前は何も心配しなくていい」
うっすら漂う鉄錆びのような血の臭いに、揺れる銀髪。
『……』
そんなの、嘘だ。
「…暫く此処を離れるぞ……聞こえるか、ベルモット」
「もう着いたわよ。…派手に殺ったわね」
「ふん…」
「…あの方には上手く言っておくわ。残党もいないし、連絡するまで大人しくしてて」
「…そうか。いくぞ、暫く俺の部屋にいることになる」
『………』
ジンは、私の手をそっと。でも力強く握った。
この、優しい手が、撃ったの?
お父さんと、お母さんを?
そんなの、
(嘘……だよね?)
私はジンの目を見ることが出来なくて。
次々と浮かんでくる記憶の欠片に押し潰されそうで。
『………』
「大丈夫。…大丈夫だ」
今日何度も聞いた筈の"大丈夫"を信じきることができなくて。
「お前だけは、守ってやる」
その言葉を疑うこともできなくて。
『……っ、』
信じたい。
その思いだけで手を握り返した。
連れられたジンの部屋は簡素だった。
ベッドとサイドテーブル、クローゼット。
私の部屋以上に無機質。
ただ、彼の煙草の匂いがやけに胸を焦がした。
(…この匂いに、抱えられて、あの家を出た…それは間違いない)
繋がりかけの記憶はあくまで繋がりかけで。
確証のない憶測で拒絶したくない。
したくない、のに。
「…どうした」
『………』
「…、怖かったな」
どうしても体が強張って。
そんな私に優しくしてくれるのが、嬉しくて辛くて申し訳なくて。
(…え、待って)
複雑な感情を一杯に抱えて、引っ掛かった台詞。
(お前"だけ"は、守ってやる)
それが意味するものは?
(これから…の話?それとも、今までに守られなかった何かがあって…?)
待って、イヤ、思い出したくない!
だって、だって!
「……、お前…まさか」
『…っ!』
揺れる、銀色の向こう。
胸から血を流して倒れてるお母さん。
頭から血を流して倒れてくお父さん。
銀色から覗く、優しい手に握られていたのは
怖い、黒い、拳銃。
ああ、ねえ。
嘘。
なんでこれが、真実なの。
君と僕の記憶
(それは最も望まれない真実)
Fin