君と僕の
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《君と僕の銃声》
そのデートの帰り、愛車を運転していれば。
後ろから着けている車があることに気づく。
『…?』
「遠回りするぞ。頭を低くしてろ」
FBIや警察のような洗練された大人しい尾行じゃない。
荒々しくて煽るような動きは裏の奴らだ。
このまま市街で撒いてしまえればいいが、ポルシェは目立つ。
助手席にこいつがいる以上戦闘に持ち込む訳にはいかない。
「…ベルモットに電話しろ。それから、お前の携帯でサイドミラーから後ろの車を撮って送れ」
『っ!』
「大丈夫だ。………ああ、俺だ」
何か悪いことになってるのは察したんだろう。雨月は慌ただしいく指示に従い、ベルモットを電話口に呼び出す。
「…あの車に尾行されてるってこと?」
「ああ。市街を何周かしてるが離れなくてな。心当たりはあるか」
「………ん?……ジン、アジトに帰って来て頂戴。こっちで迎撃するわ」
「あるんだな、心当たり」
「あの車、組織で使ってた奴よ。最近見なかったから足がついてお釈迦にしたのかと思ってたけど……隠されてただけみたいね」
「…身内か」
「何人で組んでて何のつもりかわからないから、こっちは少数精鋭にしておくわ」
「…任せるぞ」
「はいはい。……雨月?怖がらなくて大丈夫よ、私とジンがいるんだから。じゃあ、また後で」
見えるようで見えない話。
組織の人間に俺が尾行される理由なんぞない。というか、指示を出せる奴がいない。
まあ、あの下手な尾行を見れば幹部レベルの奴じゃなくて下っ端か、よくて中堅だとは思うが…
(…雨月に気づかれたか)
最悪なパターンが頭を過る。
『…』
「大丈夫だ。ベルモットも言ってたろ。……俺がいる」
強張る彼女に声をかければ、ルームミラー越しにぎこちなく微笑んだ。
アジト周辺。
車通りが少なくなったあたりから超スピードで飛ばして、車を物陰につける。
地下へ直通している隠し戸を開ければ、ベルモットがいた。
「…こっちは私とウオッカ達で見るわ。暫く、あの部屋にいて頂戴。無線は繋げたままにしておくから」
「…ああ。雨月、来い」
手を引いて薄暗い廊下を急いでいれば、正面から人の気配がして。
後ろ手に雨月を隠しながらポケットのベレッタに手を伸ばす。
「…やっぱり匿ってるって本当だったんだ。その子ですよね?プログラムに精通してる天才って」
そこには、何度か組織で見かけた、ヘラヘラした若い男が立っていた。
愉悦と金で世界が回ってるような、奴。
拳銃を持って、研究室の扉に手を置いて薄っぺらく笑っている。
「お前に話してやる筋合いはない」
「ふぅん?…でも、俺昇進したいんすよ。だから、殺させてください」
そこで、こいつが8年前の、雨月の両親の件を知ってると確信した。
「どこで嗅ぎ付けたか知らないが、銃を向ける相手を間違えたようだな」
「いやいや。先に反逆したのはそちらでしょう?それとも利用するだけしてから消すつもりですか?ご執心な幹部様が?」
ケラケラと汚く笑うそいつが、銃口を定めずに発砲した。
弾は床にめり込んだだけだが、驚いた雨月が飛び出してしまう。
「…っ!」
それを狙ったように今度は雨月に銃口が向いたから。
彼女を抱き締めるように庇いながらベレッタの引き金を引いた。
パァンと、乾いた音がひとつ。
「…がっ⁉」
「喋りすぎだ、イカれ野郎」
弾丸は喉を貫通し、血飛沫があがる。
「……見るな。目閉じて、じっとしてろ。終わったから」
彼女を庇う時、耳を覆うように回した腕を緩めて。
小刻みに震える背中を撫でた。
君と僕の銃声
(それは、あのときも僕が引いた引き金が立てた音)
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Fin