君と僕の
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《君と僕の始点》
「随分甲斐甲斐しいのね」
「立ち聞きとは悪趣味だな、ベルモット」
「あら酷い。聞こえちゃったのよ」
彼女の部屋を出れば、廊下の壁に寄りかかる女。
俺以外に唯一、アイツの素性を知っている奴。
アイツが、雨月が話せなくなったのは、
俺のせいだ。
アイツの両親は組織の優秀な科学者だったが、娘の雨月も秀才の持ち主で。プログラムの解析やロックの解除なんかを得意としていた。
娘を利用しようとした組織に気付いたんだろう、アイツの両親は逃亡を計画。
それがバレて両親は処刑された。
……アイツの目の前で。
撃ち殺したのはまだ幹部になってなかった俺。
家に火を付けたのはベルモット。
アイツはドアの隙間から見ていて、ショックで卒倒。その音で俺は見られていたことに気付いた。
その場で殺すべきだったが、能力を知っていた故に拘束して連れ帰ることになって。
『-っ?………!?』
運のいいことに、目を覚ました雨月は、その日の記憶も声も失っていた。
「貴女の両親は、貴女を守る為に亡くなったの。私達は、ご両親の仲間よ」
そこに嘘ではないが真実でもないことを吹き込むと、14歳だった雨月はそれを信じた。
俺とベルモットが、両親の仇をとって自分を守ってくれたのだと。
「あんまり情を移さない方がいいんじゃない?」
「そっくりそのまま返してやる。それ、アイツの飯だろ」
「ふふ、彼女が私達に情を移すのはいいことでしょ?」
ベルモットが持っていたコンビニの袋には、彼女が好きなサンドイッチとジュース。
「…フン。俺は生憎、移るような情を持ち合わせてないんでな」
アイツが、もし。本当のことを思い出して、組織を害するものになったとしたら。消さなければならない。
雨月の部屋に再び入って、サイドテーブルに飯を置いてやる。
「情がない、ねぇ?」
部屋を出て施錠した。
ベルモットに先を促しながら移動する。
「…そんな目をしていて、いざとなったらあの子を殺せるの?」
「愚問だな。お前はどうだ?全てを知ったアイツを、殺せるのか?」
「そのまま返すわ。愚問よ」
カツン。と、階段に差し掛かってハイヒールの音が響く。
「……お互い、頑張りましょうね」
「……フン」
お互い、アイツを消さない為に。
君と僕の始点
それは、歪な嘘と拗れた優しさ
Fin