君と僕の
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《君と僕の舞台》
組織の地下、日の光が届かない研究室に足を向ける。
ドアに3回ノックして足を踏み込んだそこには、何台ものパソコンと山積みのフロッピーディスクやCD、本と書類のファイルがぎっしり詰まった本棚。
用事があるのは、その山に埋もれるようにしてパソコンのキーを叩く女。
「・・・今日期限の解析、終わってるか?」
後ろ姿に声をかければ、彼女は片手を上げて3本指を立てた後、指で丸の形を作った。
「30分待てばできるんだな?なら待ってる」
それに答えれば、今度はOKのサインを出して、彼女の後ろにある椅子を指さす。
「ああ」
座っていい。のサインに適当な相槌をうって、その椅子に凭れた。
別に、こいつと喧嘩しているわけではない。
こいつとの間に会話が発生しないのは、
[思ったよりはやく終わりそう]
彼女が声を出せないから。
ノートパソコンにタイプされた文字と、デスクトップのload-96%の文字を交互に叩いてそれを示す。
「そうか、待ってて正解だな」
耳は聞こえている。
現に、俺の返事にニコニコと頷いていた。
声を出せない分、彼女は表情や仕草で伝えようとするから。
実年齢より子どもっぽく見えるし、実際、声を失ってから成長が止まったかのようだ。
・・・それもそうか。
彼女が声を失ったのは14歳の時。
それから8年、この窓もない研究室に籠ってハッキングやデータの解析をしているのだ。
精神が発達する材料がない。
『(はい、どうぞ)』
口をパクパクさせて差し出されるUSB。
受け取って頭を撫でれば、嬉しそうに目を細めた。
「・・・お前、仕事に没頭するのは構わねぇが・・・ちゃんと寝ろよ。隈できてんぞ」
しかし、次の言葉で慌てて目元を隠す。
「急ぎのもんがねぇなら休め。その様子じゃ飯も食ってないな」
罰が悪そうに頷く雨月に溜め息を吐けば、心配そうに見上げられた。
「怒っちゃいねぇよ。起きたら食えるようになんか買っとくから、部屋で寝てろ」
『(ありがとう)』
眠そうにはにかんだ彼女の隈をそっと親指で撫でて、研究室と隣合う彼女の自室へ促した。
君と僕の舞台
それは、仄暗くて薄ら寒い地下室
Fin.