君と
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《君と繋ぐ》
彼女は、最早立ち上がる気力を失いつつある。
1日の殆どを座って、または横たわったまま過ごしていた。
「…何か、欲しいものはあるか」
『ううん…大丈夫よ』
食欲も減少していて、まともな量はついぞ食べていない。
こんなときに、彼女の好きな食べ物すら知らない自分が腹立たしかった。
『ジン…もっと、近くにいてよ』
「…」
『寂しいじゃない』
弱っていく彼女を見るのは辛い。
だから、無意識のうちに距離を空けていた。
それを、彼女は力なく腕をのばして呼ぶ。
「………」
『ふふ、ありがとう』
その手を取って握りしめれば、彼女は穏やかに微笑んで見せた。
握った手の体温の低さ、細くなった指、儚げな笑み。
どれもこれもが胸を締め付けて苦しい。
俺が、こんなに苦しい思いをするなんて、思ってもみなかった。
『ねえジン。そろそろお迎えがくるわ…。その時には目も開けられないし、返事もできないかもしれないけど…ずっと、話しかけて、手を握っててね』
私、ジンが大好きだから。
か細い声で紡ぐ彼女の指に、自分の指を痛いくらいに絡めた。
「ああ」
君と繋ぐ
(折れそうな手と、不確かな明日)
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