君と
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《君と誓う》
旅行から帰ってきた私は、明白にやつれていた。
確かに楽しかったし、幸せだったのに。
細くなる食も、疲れやすくなった体も、病気に蝕まれたとしかいいようがない。
「…雨月」
『ジン…もう1回我が儘言わせて?』
「なんだ」
『結婚式、したい』
そこまで来てしまってから、こんなことを言う私も大概だ。
本当は、言わないつもりだったこと。
私は、誓える将来なんてないのだから。
「…そのつもりだった」
『え?』
「おおっぴらにはできねぇ。俺とお前だけ…二人だけの結婚式だ。それでもいいか?」
そう言って、彼はクローゼットを開ける。
そこには、シンプルなウェディングドレスと、綺麗なブーケが入っていた。
『……十分だよ』
泣きそうになるのを堪えて、彼に抱きついた。
何時もの部屋に、白いドレスの私。彼も、絶対に着ない白いタキシード。
ギャラリーもいない、牧師もいない、十字架も鐘もないこの空間で。
『汝、病める時も健やかなる時も、死が二人を別つ時まで、妻を愛することを誓いますか?』
自分で常套句を口ずさんだ。
「…死が俺達を別つことなんてできねぇよ。お前が死んでも愛してる。俺が死んでも愛してる」
『…っ!』
「汝、病める時も健やかなる時も、死が二人を別つ時まで、夫を愛することを誓うか?」
『馬鹿…私だって…死んでも愛してるわ』
彼は、嬉しそうに笑った。
私も釣られて笑ったのに、涙が溢れて。
誓いのキスは少ししょっぱかった。
君と誓う
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