君と
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《君と泣く》
ジンがなんとなく気になった、ゴミ箱のそれ――雨月が大量に飲んでいる薬のカラ。
1つ手にとって名前を読んだ。
彼は毒にこそ精通しているが、薬の類いはそこまででもなく。ネットにその名前をうちこんだ。
…それはビタミン剤であった。
(杞憂か)
何を恐れていたのか。
と、気紛れにもう1つつまみ上げ、再びネットへ繋げる。
「強心薬?」
杞憂は懸念へと変わり、もう1つ、もう1つと薬を調べていく。
抗血液凝固薬、鎮痛薬、呼吸器拡張薬、胃腸薬、睡眠薬…
懸念は再び恐怖を呼び戻した。ビタミン剤やアミノサプリより多い治療薬の数々。
「…」
言葉を失い立ち尽くしていれば、出先から彼女が戻ってきた。
『…気づいちゃったんだ?』
「なんで黙ってた」
『セカンドオピニオンって知ってる?今日、聞きに病院行ってきたの』
投げ出すようにソファーへ沈んだ彼女に、静かに寄り添った。
『…一ヶ月、持てばいいほうだってさ』
前回、生死の境を彷徨ったのは銃弾によるものだった。
その時にとったスキャンでわかった体の異常。CT、MRI、X線、全てで確認したら、手の施し様のない程ボロボロの体だった。
「…」
『私ね、こんな仕事してるから、まともな死に方できないのは解ってたよ。でも…っ』
もう少し長く、ジンの傍に居られると思ってた。
抑えられた嗚咽さえ愛しいこの女が。
後一ヶ月したら、いないかもしれない。
声を殺して泣く雨月を抱えて、男は緑色の瞳から一粒だけ、雫を溢した。
君と泣く
(すべてを知って、静かに)
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