君の
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《君の願③》
ヒロイン視点
たとえば。
どこが好きなの?なんて聞かれた時。
多分私は「全部」と答えてしまう。
好きなところを数えて?なんて言われれば。
きっとそれは、切りがなくて。
じゃあ、できるだけ数えてごらん。
となれば。
真っ先に挙げるのは、おそらく。
髪。目。唇。指。腕。脚。背。声。名。
まだ聞いてくれるなら、続きを。
******************
─君の爪─
ジンは、指が長い。
男の人にしては細いが、男性らしく節のある指。
その先に、縦長の、型の整った爪が付いている。
普段は手袋をしているせいか、拳銃や毒を扱う割には艶やかで綺麗な爪。
それこそ、「引き金を引きやすいように」なんて理由で短く切り揃えられているのが、几帳面で彼らしい。
「………楽しいか?」
『楽しい。………ジンは、嫌?』
「嫌では無いが………変な感じだな」
その爪に一生懸命、私は透明なマニキュアを施している。
『ごめんね。もうちょっと付き合って』
「嫌じゃねえっつったろ。ただ、何が楽しいのか不思議で仕方ない」
彼の視線に宿る不可解さは当然だろう。
わざわざ透明を、何故塗るのか。
手袋で守られるその指先に、トップコートなんてものも必要ではない。
ただ。
『…触れる口実が欲しかっただけ』
そう呟けば。
彼は少しの間を置いて笑いだす。
「それは、悪かったな。ククッ、好きにしろ」
それから。先に塗り終えた左手で口元を覆って、尚笑う。
「にしても、なんで透明なんだ?他の色も買ったんだろう?」
視線は、サイドテーブルの上。
まだ袋に入ったままの小瓶が2つ。
『…あれは、ジンの色だから』
「は…?」
黒と銀。
『ジンには、私の色を……って…思って………』
透明は、私。
ジンに染められるまでは、何もなかった私。
「あー…そうかよ」
『………きもち、悪い?』
「いや?………終わったら、あれは俺に貸せ」
彼は、視線を小瓶に向けたまま呟く。
『いいけど…透明、嫌だった?』
「違ぇよ馬鹿。………俺にも触れる口実ってやつを寄越せ」
少し、恥ずかしそうに早口なのが伝わってきて。
顔も上げられないまま、小さく
『ありがと…お願いします』
それしか言えなかった。
~小さな指先に 愛を込めて~
(私の爪は、銀色に彩られる)
(お前に黒は似合わないから、なんて)
─君の手─
『…っ!』
時折、怖い夢を見る。
内容は目が覚めれば忘れてしまうのだけど、とにかく怖かった。
寒くて、不安で、冷たくて。
誰かに助けて欲しくて、必死に振り絞る声も、もがいて伸ばす腕も、誰にも届きはしない。
そして、ふと。
その空間から目を開くのだ。
見上げる天井はいつもと同じ。
いつもと同じ毛布にいつもと同じ枕。
それから
「…どうした、まだ夜だぜ?」
私を悪夢から引き戻してくれる低い声と、優しい手のひら。
『ほんとだ…まだ真っ暗ね』
頭を撫でるその体温が、とても心地よくて。甘えるようにすり寄った。
「………生憎、俺は子守唄やお伽噺は苦手なんだが」
『…うん、いいの…ジンがそこに居てくれれば、それでいい』
子どもみたいに、ぎゅっと抱きついて。
もっと撫でて、と、頭を振る。
いい大人が。なんて呆れられる。
わかってるつもりだ、いつもなら。
ただ、悪夢から覚めたばかりの私は。
焦燥感で嫌に脈打つ心臓と、今にも泣き出しそうな涙腺と、叫び出しそうな声帯と、寒くてどうにもならない心を…助けて欲しくて。
思考回路は建前や我慢を選択しない。
『ジン……そこにいて。お願い、私を放しちゃ、いや』
嫌。厭。
助けてくれるのは、彼だけだ。
助けられるのは、ジンだけだ。
「…安心しろ。ここにいる」
求められるままに頭を撫でてくれるのが、酷く優しい。
もう片方の手が、背中を擦ってくれるのも、とても安心した。
『…ずっと。ずっと一緒にいてね。駄目よ、先にいっちゃ…置いてっちゃ、嫌なんだからね』
「…ああ」
『…私、貴方がいなきゃ、眠ることもできないんだから』
「大丈夫だ。ここにいる。ほら、目を閉じろ。そんで、ゆっくり息をするんだ」
頭を撫でていた手が、私の瞼をそっと覆う。
温かい。ジンの体温。
『…ジン………』
「おやすみ雨月。明日の朝、会おう」
『…おやすみなさい、ジン。…大好き』
今度はきっと。
彼の手が、悪夢から守ってくれるから。
~その手に、何度救われたか~
(おやすみ、愛しい人)
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