リクエスト1
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《out of blue》
『なんで私が検事局にお使いしなきゃいけないのかなぁ…』
事件の資料を渡しながら、部屋を見回して愚痴をこぼす。
大体、ここにすんなり入れたこと自体おかしい。
「弁護士には見えねぇんじゃねぇか?」
『あなたも検事には見えないけど?』
私とゴドー、もとい神乃木荘龍は幼なじみで、今は恋人同士。
まさか20年近く前の恋が、今頃になって実るとは思ってなかった。
「そう拗ねるな、可愛い顔が台なしだぜ」
『拗ねてませんー』
この歳になっても、やり取りは子供の時のまま。いつも言い負かされて丸められてしまう。
「そういうところは…昔から変わらねぇな」
『そういうところ?』
「クッ…俺の方が優勢になると不機嫌になって唇を尖らせるところ、だ」
言いながら人差し指で私の唇を突いた彼。私の顔は見る見るうちに赤くなっていくだろう…顔に熱が集まるのが解る。
「真っ赤だな」
『だ、誰のせいだと思って…!』
「俺。…それ以外は許せねぇな」
ほら。
やっぱり負けちゃう。
ますます赤くなったであろう頬を抑えると、想像以上に熱かった。
「ククッ、クールな羽影弁護士が形無しだな」
『…荘龍のせい、だからね』
先手を打ったつもりだった。さっきの会話を繰り返すのは目に見えていたし。
「そいつは嬉しい限りだぜ…そんな顔、他の奴らに見せられたらたまったもんじゃねぇ」
そういってグッと引き寄せられる。
咄嗟に、当たりそうになった机の角を避ければ、彼の腕の中にすっぽりと収まる。
『荘龍…?』
うるさい心臓に耳を塞いで彼を見上げる。
でも、赤いバイザーからは視線が読み取れなくて。
閉じられた唇が動くのを待った。
「…その顔も反則だな」
少しの間があって紡がれた言葉。そして、紡ぎ終わるのとほぼ同時に、彼の唇が私のそれを塞いだ。
ここは検事局で執務室で、もしかしたら誰か来るかもしれないなんてことは解っていて。
それでも、
若干背伸びをして応える私がいる。
反則…その上連敗。
『んっ…』
息が苦しくなって口を放せば、口角をあげてニヤリと笑う男。
その余裕が少しムカつく。
『…変わってないね、その唐突なとこ』
腕の中から見上げて呟く。
前触れもなく、"検事局にいる"と聞いた時は本当に驚いた。
でも、星影先生にも言わない事を私に教えてくれたのがとても嬉しくて。
受け入れるのに時間はかからなかった。
『…無茶はしないでね』
「それこそ無茶、だな」
『そういうと思った』
それにいつだって、この人は無茶ばかり。それでいて平気な振りをするのが得意だったっけ。
「…お前がいるから無茶ができるんだ」
『…』
「男ってのは、帰る場所があったらどこへでも飛べるんだぜ?」
『…』
「…なぁ、雨月…」
『解ってるよ。ばーか』
無茶をしない彼は彼じゃない。
私はいつだって彼の一番の理解者でありたいから。
『現に私を選んでくれたものね』
後輩のあの娘の為に一生懸命な所だって、彼の魅力だ。
ここで諦めたら彼じゃない。
『私はいつも、あなたの味方だよ…荘龍。待つことくらいしかできないけど』
「…雨月」
『ただし、絶対拗ねてるから、ちゃんとご機嫌とるように。ね?』
私から唇を合わせれば、彼は背伸びをする背中を支えるように腕をまわした。
「心得たぜ、お姫様?」
『止めてよもう、恥ずかしい』
ちょっと嬉しかったけど、言わなくても見透かされてるだろうから。
いつもの調子で笑う。
『じゃ、私は帰るよ』
「直帰か?」
『うん』
「送る」
『えっ、仕事は?』
「構わねぇよ」
(せっかく資料持っきたのに…)
呆然とする私をよそに、車のキーを出す彼。
そして、私の横に来ると
「まあ、送りオオカミかもしれねぇがな」
なんて囁いた。
―それこそ唐突でいいのに
そんな事いわれて
どんな顔で車にいたらいいの―
out of blue
(唐突に…)
Fin.