リクエスト1
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《遥への日常》
ヒグラシのなく頃、夏の夕方を雨月と歩いていた。
緑が多いため小道に木陰がさして、散歩をするにはよい公園だった。
『御剣さん、手、つないでいいですか?』
「…あぁ」
まさに、二人が手を伸ばし合おうとした時だ。
「御剣、何してるんだ?」
「御剣検事、お久しぶりです!」
『御剣さん、お知り合いですか?』
成歩堂と真宵くんが話しかけてきた。自然と、お互いに手を引っこめる。
「私は真宵!霊媒師で、こっちが弁護士のなるほど君。御剣検事とは幼なじみなんだって」
『私は雨月といいます!弁護士に霊媒師ですか!凄いですね!!』
彼女は霊媒師という響きに疑問を持たないのか、淡々と受け入れてしまった。
「それにしても御剣検事、隅におけないね。いつの間に可愛い彼女手にいれちゃって」
「御剣に限ってまさか」
「その…まさかだが」
「なんですってぇぇ!!」
『あの、真宵さんとなるほどさんは付き合ってらっしゃるんですか?』
「「ないない!」」
「なるほど君じゃ頼りがいがなくてさ」
「悪かったな、頼りがいがなくて」
「あ、雨月ちゃん、よかったら今度一緒にお出かけしよう!街にいってみたくて」
「行きましょう!真宵さんも霊媒の案内して下さい!」
「辞めた方がいいよ、一緒に修行させられるから」
私を抜いて3人が盛り上がり出してしまった…
早めに切り上げようと思っていた矢先、一番聞きたくない声が聞こえた。
「お、真宵ちゃんじゃねぇか!…なんだ、成歩堂と御剣も一緒か」
「矢張、僕をついで扱いするのやめてくれないか」
「ついでだろ?…あれ、そこの彼女……」
「雨月さんって言って、なんと、御剣検事の恋人です!!」
『初めまして、雨月です』
「なにぃっ!!」
一段と騒がしくなった。これは、帰るどころか…下手したらついて来られる。
「御剣、お前いつの間にこんな…あんた、雨月ちゃんのなんなのさ!!」
「今し方、恋人という説明を受けたばかりだと思うが…」
「俺は信じねぇぞ!雨月ちゃん、御剣みたいな堅いやつやめて俺にしようぜ☆」
『矢張さんって面白い人ですね』
「だろっ♪」
「お前、カスミさんはいいのか?」
「成歩堂聞いてくれよ~…」
勝手な事を言うだけ言って泣き出す矢張。またカノジョと何かあったらしい。
雨月は、その輪の中で楽しそうに笑っている。
なんというか、複雑だ。
笑っている雨月は好きなのだし、誰とでもすぐに打ち解けられるのは長所だ。
解ってはいるのだが…
「……真宵ちゃん、そろそろ帰ろうか。春美ちゃんも待ってるし」
「えー、…そうだね。帰ろっか」
私と目の合った成歩堂が真宵くんに帰りを促す。
自分でも解る程、多分今不穏な空気を発してるに違いない。
「俺もこれからバイトだから行かねぇと…あ、雨月ちゃん、連絡先教えてくれよ」
『え』
「ダメだ!貴様のような輩に教える必要はない」
「なんだよ御剣!友達に向かってその言い方はないだろっ!」
「友達になった覚えはないが」
矢張が引き下がらない。
かといって雰囲気が悪くなるのも雨月に申し訳ない。
『矢張さんすみません。今日携帯忘れてしまって…また今度でいいですか?』
真宵くんに目配せをしながら、割って入る雨月。
真宵くんがウインクをしているところをみると、芝居のようだ。
「…そうか……そうだよな!運命ならまた会えるよな!」
何か納得したような矢張を訝しく思っていると、
『御剣さん、そろそろ帰りましょう?』
「あ、あぁ」
「またね、雨月ちゃん!今度恋ばな聞かせてね」
『うん、またね』
そんなこんなで成歩堂達が引き上げて、暫く歩いたあと、不意に雨月が私の手を掴んだ。
『やっと手、繋げますね』
「む、」
『御剣さんもヤキモチ妬くことあるんですね』
「な…そのようなアレは…」
『そうですか?てっきり妬いてくれてるんだと思ってたんですが』
悲しげに語尾を下げた彼女にややあって"多少は…"と呟けば、少し目を見開いて、優しげに笑った。
『御剣さん』
「む…?」
『確かにああいう面白い人達の中にいるのは楽しいですが…私は御剣さんと二人でいる時間の方が大切なんですよ』
不意に歩みを止めた彼女と、向き合う形になる。
『私は、御剣さんが一番好きですから。心配ご無用です』
そういうと恥ずかしそうに満面の笑みを浮かべた。
私も、靄が晴れたような気持ちになって、絡めた指に力をこめた。
「…私もだ」
たった一言
それで心が晴れるなら
きっといつまでも
お互いが望む限り
日々は幸せに流れてゆく
遥への日常
(でも、ちゃんと捕まえといて下さいね)
(ふ…言われなくても離すまい)
(離れてくれっていっても離れませんから)
(それなら一緒に住むか)
(えっ…!)
Fin.