リクエスト1
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《とある日常》ヒロイン視点
『御剣さーん、ただい…あれ?』
勢いよく開けた扉の向こうには誰もいない。
『せっかく少し早く来たのに…』
まあ。仕事なんだから仕方ない。仕事しながらでも私を構ってくれる御剣さんは十分優しい。
(…せっかくいないんだし、いろいろ見てみようかな?暇だし。)
壁に飾ってある派手なスーツ…というか衣装。
どうしてこれを着てたのか、ちょっと不思議だけど、似合うんだろうな…
今度着てもらおう。
オバチャンからのトノサマンの人形。
初めは元カノかと思って凄く不安になったけど…
……みっちゃんって呼べるのは羨ましいかも……
なんて、部屋を一周したのだけど
『まだ帰ってこないのかなぁ…』
ソファーに座ってぼんやりとチェス盤を眺めていたら眠くなってきて……
いつの間にか寝てしまった。
…御剣視点…
次の案件の資料を探す為に資料室へ足を運んだのだが、目当ての資料がなく、時間がかかってしまった。
しかも、帰りではそこかしこで話しかけられて更に遅くなってしまった。
「…!」
そろそろ雨月の来る時間だと思いながらドアを開ければ、ソファーの上に既に彼女はいた。
座っている、という体制からはやや傾いていて、どうやら眠っているらしかった。
「…雨月、」
声をかけてみるものの、ピクリともしない。
もう一度、声をかけながら肩を叩いてみる。
『ん…』
…それっきり起きない。
どうしたものか…このまま寝かせておくか。
どこか幸せそうに寝入っている彼女、髪をなでたり頬に触れたりしてみる。
すると、猫のように体をよじるものだから、つい笑みがこぼれた。
少し身を乗り出して顔を覗き込む。長い睫が時々震える。薄く開いた唇からは寝息がこぼれていた。
「…雨月」
その唇に吸い寄せられるように指でなぞり、自分の唇を重ねた。
『ん…ん?』
苦しかったのか、ゆっくり瞼を開けた彼女は一瞬驚いて、口を離した。
そしてすぐに真っ赤になって、次の瞬間には抱き着いてきた。
『御剣さんっ、お帰りなさいっ』
「む、…ただいま」
『なんだか、いつもと逆で新鮮ですね』
「いつもは私が出迎えるからな」
頭を軽くぽんぽんと叩けば、目を細めて擦り寄ってきた。
まるで猫か。若しくは、母親が帰ってきた時の子供のようだ。
『…御剣さん、また私の事子供とか思いませんでした?』
「……いや」
『異議あり!御剣さん、私を子供扱いする時、凄く穏やかな目をしてるから解るんですよ?』
「な…」
『反論は証拠をつけてどうぞ?御剣検事?』
これは…また拗ねているということか?
確かに寝てしまうほど待たせてしまった訳だが……
「別に、子供扱いしているからではない。ただ単に、そういう行動が愛しく思えてしまうのでな」
『…っ…し、証拠は!!』
「証拠?そんなに見たいなら…」
一度彼女を離して、目を合わせる。照れているような、怒っているような、不思議な表情をしている。
「…目を開けていることだな…」
クッ、と顎を右手で持ち上げて、左手で後頭部を支えた。
『ん…っふ…』
唇を合わせるだけのキスではなく、息もできないような長くて深いキス。
必死に目を開けているのか、苦しいのか…至近距離の瞳に涙が溜まっている。
『ふ…ぅん…』
「…解って貰えただろうか?」
『…っ』
「子供だと思っていたら、こんな事はしないのだよ」
口を離し、涙を拭ってやりながら髪を撫でる。
「異議は?」
『…ないです』
未だに息を乱して上気している彼女に、魅力を感じない者はいないだろう。
「さて異議のないところで…」
『え…』
「次は待たせたお詫びをしよう…、あぁ、目は好きにしていい」
再び顎に手をかけてゆっくり近く。
開けようか開けまいか、閉じようか閉じまいか…迷っている雨月に、
さっきよりも長く深く口づけた。
たまには
こんな日があってもいい
きっと日常にとけて
幸せな思い出になる
そうやって
1ページずつ増えていく
とある日常
(この日があってから、彼女は私が不在だと寝たふりをして待っている)
Fin