水っぽいお題2
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《泣き虫》
泣き虫。
私の彼に対する印象はそうだった。
けど、月日というものは、人を変えるらしい。
「オドロキホースケは大丈夫です!!」
ニコニコと叫ぶ彼は、私が知っていた彼より、ずっとずっと、明るくてカッコいい人になっていた。
『法介君、いつもメソメソしてたのに…随分かっこよくなっちゃって』
「メソメソって……いつの話だよ」
『中学校くらいかな?高校別だったもんね』
「…それを言うなら雨月だって随分変わったぞ」
『そう?』
中学校の頃。
葵くんと仲良くなるまで法介君は、いつもどんよりして、すぐに泣いちゃうような男の子だった。
「男勝りでお転婆で口より手が出る、ゴリラ女だった雨月が…モデルだもんな」
『あれ、モデルしてるの知ってるんだ。てっきり興味ないかと』
「モデルに興味ないのは当たってるけど、そこまで世間に疎くないよ。新聞広告の一面飾ったじゃないか」
『あれね。私もお気に入りの写真なんだ。……って、ゴリラ女は酷くない?』
一方私は法介の言う通り、活発通り越して粗雑な…女の子とは言いがたい生き方をしていた。
「今と比べたらゴリラだろ。……本当、見違えるくらい綺麗になった」
『…でも、中身は変わってないよ。だから、喋らない"お人形"っていう職業を選んだ』
「それでテレビ、ラジオ、取材NGのモデルなんだね」
『装飾品の良さを語る動くマネキンなのよ、モデルって。だから、言葉で"私"ってイメージを付けるのも良くない…って、建前ね。口を閉じてれば可愛い、なんて小さい頃から聞き飽きてるし、自覚してる』
男所帯だったのもあって口も悪いし、口答えと屁理屈はお手の物。
「…俺は、歯に衣着せない雨月の物言い、好きだったけどな」
『…そう?』
「罵倒のボキャブラリーも多くて、言われる側じゃなければ、寧ろ聞いてて楽しかったよ」
法介君みたいな人は、少ない。
言わなければ良かったと思う過去も、たくさんある。
今でも正論を言ったとは思ってるけど、傷つけただろうなと、悔やむこともある。
『……そっか』
「なんだ、雨月の方が泣き虫になったのか」
『え……?』
「我慢しなくていいよ。言いたいことは言えばいい。泣くまで我慢するなんて、らしくないよ」
そんな私に、彼は
「おしゃべりしよう?」
そう、手を差し伸べた。
fin
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