水っぽいお題
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涙
《涙の訳》
気候も穏やかになり、春の風がそこかしこを吹き抜けている今日この頃。近くの公園では桜も咲き始めたらしい。
早めに仕事が終り、恋人の執務室へ出かけていく。
もし手伝えればその分早く帰れるし、よければそのままお花見デートもできるかもしれない。
なんて、ノックもそこそこに扉を開けた。
『怜侍、こっち終わったよ。手伝うことある?』
「ム、こちらの資料を枚数分ずつまとめてくれないか。12ページまでで5部必要なのだ」
『了解、テーブル借りるよ』
「すまないな」
差し出されるプリントを受け取ろうと、彼の顔を近くで見てぎょっとした。
今にも泣き出しそうな、涙を湛えた表情に。小さく鼻を啜る音。
『怜侍、なんかあったの?』
「いや、心配する程のことではない。気にするな」
何か言い返す前にその視線はパソコンの画面へ戻ってしまって。仕方なく自分はソファに座りこんで書類をまとめていく。
それでも時折聞こえる鼻を啜る音。目線を上げれば、目元を抑える彼の姿が目に入る。
心配しない方が無理だ。
一人で抱え込んでしまうくせに、それを表に出すまいとする彼が涙を流すなんて。ただ事じゃない。
『ねぇ、怜侍…』
まとめ終えた資料をデスクに置きながら、彼の肩に手を乗せる。
『何か、力になれることある?』
「いや…本当に大したことではないのだ」
『だって…こんな泣きそうな…』
目の下を指でなぞれば。
向き直る彼は困惑したような顔で視線を泳がす。
『話してみたら、意外と解決するかもしれないよ?』
「…そうか、そうだな………雨月、」
"マスクを持っていないだろうか"
『へ?』
「その、今日は花粉症の薬を忘れてしまったのだ。おまけにマスクも切れてしまって、目は痒く鼻は止まらない…仕事がはかどらないのだよ」
『…………心配して損した…』
「…ム?」
『……私の執務室に予備のマスクあるから持ってくるよ。急ぎじゃないなら、残りは明日に回した方が早く済むんじゃない?』
「助かる。では、そうしよう」
涙
の訳
は花粉症でした
(早く終わったけど、)
(お花見デートにならないな)
(ちぇっ、残念)
Fin.