水っぽいお題
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
浜
《浜辺》
『やっぱり、ちょっと寒かったね』
「ごめんよ。夏に来れなくて」
『いーの。別に泳ぎたかったわけじゃないし』
"海に行きたい"
私が言った言葉を覚えてくれていた彼。
夏はライブや仕事に追われて来れなかったからと。
風も冷たくなった頃、彼のバイクで季節外れの海に来ていた。
『それに、この方が二人っきりになれていいよ。響也の周り、すぐ女の子でいっぱいになっちゃうし』
覚えててくれただけでも十分。
そう口にすれば、彼は申し訳なさそうに笑った。
「少し、歩くかい?」
『うん』
砂浜はちょっぴり歩きにくかったけど、彼が手をとってくれて。
波の音を聞きながら歩いていく。
『そうだ、私、浜辺でしたかったことがあるの』
「なんだい?」
『こうやって…』
砂浜に書いた大きな相合い傘。名前はもちろん、響也と雨月。
「ちゃんとハートも書かないとね」
『うん。あっ!』
大きな波が来て、私の名前が消えてしまった。
そう。
もしかしたらいつか、私じゃない人の名前が入るかもしれない。
私に、彼は身にあまる。
「雨月ちゃん、また考えてるでしょ」
『バレた?』
「そんな寂しそうな顔してたらね。でも、それは杞憂だ」
私から木の枝を取り上げた彼は砂に文字を書く。
「波が何度消したって、ここに入る名前は変わらないよ」
"雨月"
彼の筆跡で書かれたその文字が愛しい。
『ありがとう。私もずっと、そうありたいよ』
私は、貴方以外の隣なんていらないから。
浜辺に残る相合い傘
いつか波が消してしまうとしても
Fin