水っぽいお題
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沈
《沈黙》
「…どうしても、話してもらえませんか」
『…』
「…せめて、話さない理由を教えて下さい。私は貴女の弁護士なのですから」
留置所で面会するのは何度目か。殺人容疑で拘束されている彼女は、全面的に容疑を認めている。
目撃証言や証拠品を見ても、それ自体は特に問題がない。
ただ、彼女が発した言葉は『私が殺しました』それだけ。
取り調べも黙秘しているようで、検察も動機や関係は何一つ掴めていないらしい。
『…』
「現場の状況から見て、大分争ったのでしょう?正当防衛とか、その時の状況で罰が変わるんです」
『…』
「やれやれ、僕にも話してくれないの?雨月ちゃん?」
『…』
「久しぶりの再会が留置所ってのはアレだけど、ちょっとお話しようよ」
『…』
僕と彼女は幼なじみだ。
友達以上恋人未満を続けること20年。しばらく会ってないな…と思っていたらこの状況。
"盾之君"と僕を呼ぶ彼女の声も顔も、とても遠い思い出に感じる程、彼女は疲れきっていた。
「…僕が知らないうちに、色々抱えこんだみたいだね」
『…私が殺した。それ以外の真実はないわ』
「僕は知ってるよ。君が、意味もなく人を殺せる人間じゃないこと」
『…』
「教えてはくれないんだね…言えない理由も、聞かせてはもらえないの?」
『……鶴も鳴かずば撃たれまい』
「…!」
『私が殺めてしまったのは真実。それは変えられない。私は罪と同じだけの罰を受ける』
「…雨月ちゃん」
彼女の意志の強さはよく知っている。喋らないと決めたら梃でも口を割らないだろう。
「解った…でも、僕は君が殺したなんて信じられないから、調査はするよ」
『……』
「どんな結果になるか解らないけど、君が自由になったら」
その時は、
精一杯ハグさせてね?
『…』
「…!……」
その疲れきった体で、彼女は僕の知っている可愛い笑顔を浮かべると、小さく頷いた。
「はは…オジサン頑張っちゃうよ」
『…』
「…絶対、助けるからね」
彼女が認めている以上、有罪になるのは9割9分確定だ。
だけど
沈黙
を守る事で彼女が戦うというなら
僕は
沈黙
を破る事で彼女を守る
Fin.
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