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《なる君なんか》
※ヒロイン→成歩堂からヒロイン→矢張になるお話
※すっごく短い
※むしろ成歩堂が噛ませ犬
………………………
私は、友人のなる君が嫌いだ。
「それでね、ちいちゃんがね」
久し振りに会って遊ぼうって話になったのに。
話の中心はずっと「ちいちゃん」。
なる君の、彼女らしい。
「これ、ちいちゃん似合いそう」
ショッピングモールが新しくできたから行ってみよう、と、誘ったのは私。
新しい鞄が欲しいって話しておいたのに。
なる君は、ここにいない「ちいちゃん」を想ってバックを見ている。
いいな、そのバック。可愛いな。
「プレゼントしたら喜ぶかな」
喜ぶと思うよ。
でも、そのバック、私も欲しい。
私に、似合うかは見てくれないんだね。
私がどう思うかは聞いてくれないんだね。
「買ってくるから、自分の見ててよ」
ううん、ここに欲しいものはもうないからいいの。
『…はぁ』
外に出て、店先の壁に寄りかかってため息をついた。
そもそも、RYUと縫い込まれたピンクのセーターを着てきたときから違ったのだ。
私が知ってたなる君は、こうじゃなかった。
自分の話をしたら私にも話を振ってくれたし、一方的に誰かの話をすることなんてなかったのに。
それだけ、ゾッコンなのだろう。
私なんか、見えないくらいに。
「お待たせ。あ、あっちの店も見に行こう、ちいちゃん好きそう」
本当に本当に、見えてないんだ。
「…あれ、何も買わなかったの?」
『うん。私が欲しいものは何もなかった』
「そっか…残念だったね。じゃあ、また」
そうだなぁ。本当に、残念だった。
なる君が私を見たのは、最後のその一瞬だけだった。
そんななる君なんか…嫌いだ。
新しい鞄を買うこともせず、なる君にメールすることもせず。
日々は淡々と過ぎて行った。
そんなある日。
「ちいちゃんにフラれた」
そんな連絡が来た。
そのときの感情は『そうなんだ』くらいの無関心。
自分の事ながら意外だった。
だって、もっと喜ぶと思ったのに。
ちいちゃんのいないなる君は、私が好きななる君に戻る筈だから。
でも、喜べなかったし、好きだった頃の気持ちも思い出せなかった。
(そうだよね、私、なる君のこと、好きだったよね)
ずっとずっと好きだったのに。
ちいちゃん、なんて知らない人に盗られて。
あんなに好きだったのに。
私のことなんか全然見てくれなくなっちゃって。
私なんて、その程度の存在だったんだと思ったら。
一気に冷めてしまったんだ。
だから、多分。
「どした?なんかあった?」
『ううん、大丈夫』
「ならいいけど…ほら、あれ可愛くね?ちょっと持ってみろよ」
私は、矢張を選んだ。
彼は周りが引くくらい私にゾッコンで。
いつも好きだとかいい女だとか言ってくれていた。
中々靡かない私に痺れを切らせて違う女の人と付き合っては「やっぱりお前の代わりにはならない」といって帰ってくる。
…実際は、彼女に私の話ばかりしてフラれてしまうらしかったけど。
たまに余所見しても、私をちゃんと見ててくれる。
そんな彼といる今の方が幸せだ。
叶わない夢を見るなら、今ある現実に幸せを見つけた方がいい。
『どう?似合うかな?』
「ああ!それはお前が持つために作られた鞄ってくらい似合ってるぜ!」
『ふふ、大袈裟!』
私はこの選択を、間違ってるとは思えなかった。
だって
「ごめんね、呼び出して」
それから、なる君と直接会って「ちいちゃん」にフラれた経緯を聞いたけど。
『そっか…残念だったね』なんて、いつかの台詞が頭を過っただけ。
ただただ相槌を打って聞いていた。
「いつも、話を聞いてくれてありがと。そっちは?何か変わった?」
話の締めくくりにそう言ったなる君は、私が好きだった頃のなる君だったけど。
そこにトキメキも感動も喜びも存在しなくて。
この優しい笑顔が好きだったな、って思い返していた。
『…ああ、うん。矢張と付き合うことになったよ』
あとは、自分の台詞にちょっとはにかんだだけ。
「そう…なんだ」
おめでとう、と。言い淀んだなる君の真意は解らない。
でも。
「…なあ、やっぱり成歩堂がいいか?」
『ううん?やっぱり矢張がいいかな』
私はこれで良かったと思う。
『私を見ててくれてありがとう。これからは、ちゃんと矢張を見るからね』
fin