夕神詰め合わせ2
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《検事とFBI》
※名探偵コナンの世界軸
『捕まえたよ。亡霊を狙撃したスナイパー』
「そうか。思ったより速かったな」
『亡霊に関する動きがあるって情報は漏れてしまってたからね。色々網は張ってたの』
「なるほどなァ」
『というか、何年も追ってたのに亡霊自体を捕まえるのがこんなに遅くなって…ごめんね、迅』
「お前さんは悪くない。よくここまで頑張った」
死刑執行前日。
漸く真実は明るみになった。
国籍も本名も解らない、世界を股にかけるスパイが黒幕となれば。
追う側も世界相手の精鋭になる。
『…ありがとう。正直国境を跨いで捜査するのは骨が折れたのよ。相手がスパイなだけあって、探る為には自国の疚しいことを露呈する可能性もあったし、中々協力が得られなかった』
「だろうな。それでも、お前さんが危険を犯してまで噛みついていたのは聞いてる。…十分だ。苦しかったろ」
『迅程じゃないわ。貴方を鎖から開放するための苦しみなら、耐え抜いてみせる』
彼女は、FBIという立場から亡霊を追っていた。
それは本来の仕事でもあるが、慎重な性格の彼女が違法捜査とのグレーゾーンまで攻めていたのは。
紛れもなく恋人の無罪の為。
「…強かな女だな」
『ふふ、貴方も忍耐強い男よ?7年も…よく耐えて…』
「お前がそれだけ頑張ってるのを知ってて、諦められるわけねェだろ。…ありがとな」
そんな無茶をやってのける彼女に触れるのも、穏やかに話すのも、7年ぶり。
俺の髪はのび、彼女はショートヘアになって。
目の下の隈が取れなくなった俺と、目元にシワが刻まれた彼女。
そう短い時間ではなかったことを、節々で感じられた。
懐かしい。
愛しい。
その気持ちを、自由になった両腕を広げることで表せば。
彼女はひとつぱちくりと瞬きをして。それから溢れそうな笑顔を浮かべると、腕の中に収まった。
『お帰り、迅。…ただいま、迅』
「あァ…ただいま。んで、お帰り」
胸元に埋まる彼女の呼吸を感じるのがとても心地よくて。
雨月も、夕神の心音を感じられるのが幸せだった。
務所から出て適当に借りたアパートの狭い部屋。
何をするでもなく二人で寄り添った。
時折思い出したように、手掛けた事件の話や、出会った人の話をして。
それから温かいお茶を飲んで。
やっぱり寄り添っては手に触れたり頬を寄せたりして過ごした。
『…穏やかだね』
「あァ」
『ずっと休みなく動いてたから…時が止まってるみたい』
「…俺は、やっと動き出した気がするな」
『そう、だよね』
「だが、こんなに心が穏やかなのは久し振りだ」
『……ん』
お互い、犯罪を相手にする仕事だ。
安寧の時なんて、そう長く続かないし。
いつ途切れるかもわからない。
だからこそ。
『ね、もっと触れたい』
「…目、閉じろ」
穏やかな触れあいは艶やかに貪るものに変わるし、日が上る頃にはまた穏やかなものに戻る。
『迅…7年は、元には戻らないから…ゆっくり長く生きようね』
「…そうだな。7年、長生きしなきゃな」
繋ぎ合う手から感じる体温は、いつもあるわけではない。
そんなこと、よくわかっていた。
「……お前、またアメリカいっちまうんだろ」
『……』
「…いいんだ。お前が生きたいように生きたらいい。俺も、今までより自由になる分、離れる距離は物理的なものだけだ」
世界を飛び回る彼女と、裁判所に縛られる自分では、同じ時を過ごすことは難しいだろう。
だからこそ、今いる時を大切にしたい。
『……ありがとう。迅も、私に縛られないで…自由に生きてね』
絡め合う指先は、到底自由になることも自由にすることも望んでいないが。
幸せになる方法はゆっくり考えることにした。
「また、帰ってこいよ。待ってる」
『…うん。絶対帰ってくる。たまには、遊びに来てくれると嬉しい』
「あァ」
空港で国際便を待つ僅かな時間。
感傷的なのに、やはり穏やかな空気が流れていて。
微笑んでいるのに、今にも泣いてしまいそうな雰囲気だった。
だった。のだ。
「雨月ー!よかった、間に合った!」
遠くから金髪の女性が駆け寄ってきて、彼女の腕をがっしりと掴んだ。
『ジョ、ジョディ?なんでここに…』
「追いかけてる組織が日本で活動しているみたいでね、本部を日本に立てることにしたのよ。そして、その捜査員に組み込まれてるのよ、私も、貴女も」
『……え?』
一気に捲し立てた女に色々ついていけなかった彼女は。
一拍おいて一文字紡ぐと、再び黙りこんでしまう。
「…誰なんだ?」
『あ、ああ。彼女はジョディ、FBIの仲間よ。こっちは夕神、日本で検事をしてる私の恋人』
「そうなの?じゃあ彼にとってはよかったわね、当分日本にいられることになって」
『それ、もうちょっと詳しく教えて。よくわからないわ』
「だから、そのままよ。貴女も日本で仕事するの。この飛行機に乗る必要はなくなったの」
『…急、だね』
「本当はアメリカで一息ついてからでもよかったんだけど、日本にいるって聞いたから。二度手間にならないように先発組の私がここに来たのよ」
『そっか。ありがとうジョディ』
このやり取りは英語で交わされていて。大体こんな感じだろうとしかわからない。
『迅、私まだ日本にいられるみたい』
「だな」
「彼、ジンって名前なの?」
『そうなの。仕事しにくいったらないでしょ?』
「ふふ、そうね」
「?」
『今追ってる組織の中枢人物にね、ジンって呼ばれてる男がいるのよ』
「なるほどなァ」
そりゃァ、呼びにくいだろうな。
飛行機のキャンセルをしながら二人の会話は進んでいく。
「でもまさか、貴女のカレが侍だとは思わなかったわ。まだ日本には侍や忍者がいるって本当なのね」
『またそんなこといって。侍っていうか浪士っていうか…剣術はできるけどね。ってかジョディのカレも日本人じゃない』
「シュウは侍っぽくないでしょ?武道も射撃も長けてるけど」
『たしかにね。彼もくるの?』
「ええ」
やっぱり英語で交わされるそれは、ざっくりとしかわからなかった。
なのに突然。
「好きな人の近くだったり、力になれると思うと仕事って頑張れるのよね」
会話は日本語になって。
ジョディ、というFBIは俺に目をむけた。
何かを察したらしい雨月は肩をすくめて笑う。
『そうね。私があんなにも必死になれたのは、彼の為。そして、彼と幸せになる為よ』
―それがたった一つの真実―
「俺だってお前を幸せにするために、お前と幸せになるために生き延びたんだからな」
ヒュウ。
とFBIが囃し立てた。
(貴女そのまま寿退社でもしたら?)
(そのうちあるかもねー)
Fin
オマケ
「お前、亡霊捕まえる為にハニートラップやったってのは本当か」
『…ジョディに吹き込まれたわね?』
「答えろ」
『はぁ…。まあね、でもベッドまで行かずに終わったわよ』
「…」
『その不満顔の意味は』
「お前さんに色目なんざ使えたのか、って思っただけだ」
『ふーん…?じゃあジンも試されてみる?私の色目がどのくらいの効果だったのか、さ』
「俺はきかねェぞ?そのままのお前で十分だ」
『…馬鹿。私が先に堕とされちゃったじゃない』
Fin