御剣と色んな勤め人
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《居酒屋店員》
2017 拍手
最初に彼を見たのは、まだ名札に若葉マークをつけた新人の頃。
居酒屋のホールスタッフの私は、なんとも奇妙なグループを案内した。
青いスーツでトゲトゲ頭のお兄さんと、赤いスーツでヒラヒラしたお兄さん。そこに、和装の女の子とがたいのいいおじさん。
なんだこれ、家族?友達?仕事仲間?
よくわからないままオーダーをとって、飲み物を運べば。
"裁判お疲れさまっ!"
という掛け声と乾杯。
(裁判?被害者仲間とか、弁護士仲間?)
よく見れば、青いスーツに弁護士バッジ。弁護士仲間か……と合点すれば、"刑事はさー"と呼び掛けられるおじさん。"御剣検事それは…"と呼び掛けられてる赤いスーツのお兄さん。
(なんだこれ、なんだこれ!)
いよいよ奇妙なグループだった。
個人個人、見た目も特徴的だったので、2度目以降の来店ではこちらから気付けるほど。
度々メンバーは入れ替わり立ち代わりして、小さな女の子、元気な若者、なんか有名なボーカルのイケメン等々。青い人と赤い人がメインで3~6人のグループでよく来てくれた。
それが今日。
赤い人が一人で来ている。
いつもは連れてこられた、という感じで。決まってウイスキーのロック、つまみはチーズの盛り合わせ。
だから、今日もそうだろうと思いながら。お絞りとオススメメニューを持っていった。
『いらっしゃいませ。こちらお絞りとオススメです。えっと、…とりあえずいつものウイスキーとチーズにしますか?』
「…あ、いや…」
『それは失礼しました、どうぞ、ゆっくり選んでください』
「その、オススメはなんだろか」
『うーん、イチオシは…秋刀魚の塩焼きですね!尻尾がお皿から出ちゃうくらい大きいんです』
「そうか…ともすれば酒はウイスキーじゃない方がいいか?」
『ウイスキーならいつものではなく日本生まれの竹鶴をオススメしますが…日本酒をお試しになるなら、こちらが飲みやすいと思いますよ』
「ならば、それと秋刀魚を。…できれば、頭を落として貰えないだろうか」
ある程度は、いつもの接客トークだった。
ただ、話しているうちに、顔立ちが綺麗なこととか、奇抜なスーツにも殺されない気品を感じて。
ちょっとだけ、笑顔に媚が入る。
『秋刀魚の頭ですね、できますよ。骨や内臓は大丈夫ですか?』
「ああ、問題ない。その、」
魚と目が合うのが怖いだけだから。
『…』
「…これから食べるものの目を見ると、食べにくくてな…」
『ふふ、優しいんですね』
更にその、気品の奥。
可愛さを見つけてしまってからは、
『また来て下さい!お待ちしております!』
私のお気に入りの常連様です。
fin
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