御剣と色んな勤め人
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《図書館司書》
2013.9~2013.12
『いつもありがとうございます』
「いや、どの道もういらないものだからな」
よく使用する公立図書館に、読み古した本を寄付した。資料として使う書物が多くなってきたため、娯楽小説や内容が頭に入っている本を定期的に持ってきているのだ。
『そのうち御剣さんの寄付だけで一つ本棚が埋まってしまいそうです』
朗らかな笑顔を浮かべる、この図書館の司書。
割と広い図書館なのだが、彼女が一人でとりしきっている。
彼女はここにある蔵書の位置や貸し借りの情報を殆ど把握しているので、他の人材がいらないのかもしれない。
「ム…迷惑だろうか」
『とんでもない。珍しい本をこんなに寄付して頂けるなんてとても嬉しいです。本の購入予算は多くありませんから』
彼女のその笑みを見ると、本当に本が好きで、今の言葉に嘘がないことは一目瞭然だ。
私が持込む本は入手困難なものやマイナーなものもあり、その類をみた時の反応は恋する乙女そのもの。
今も目を細め、少し赤く染まった頬で、愛おしそうに本の表紙を撫でている。
「本当に本が好きなのだな」
『ええ。紙に文字が書いてあれば読まずにいられない程に』
「ジャンルにこだわらないのか」
『一応文学作品は全て好きです。流石に専門書等は読んでも面白くありませんので…』
「面白くない、ということは読むのだな?」
『そうですね、理解できないと解っていてもつい』
そう言って笑った彼女につられて私も笑った。
彼女の淑やかであどけない笑顔は癒しだ。
そして、私をときめかせる。
「次に持ってくる時は小説を多めに持ってこよう」
『そ、そんなつもりでは…』
「いつか寄付するものだ。順番が前後するというだけのことなのだよ」
『、ありがとうございます』
やはり、嬉しそうに微笑んだ彼女に胸が高鳴った。
次に持って行った小説の中に、一通の手紙を紛れさせた。
"紙に文字が書いてあれば読まずにいられない"
そう言った彼女が、それを読むことを見越して。
(私が本を寄付しにいくのが)
(貴女に会うための口実だと知ったら)
(貴女は…なんて反応するだろう)
どうか、いつものように。
朗らかに、淑やかに、あどけなく笑ってほしい。
Fin.