御剣詰め合わせ
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《雪と炬燵と蜜柑》2019拍手
『雪つもるかなぁ』
「どうだろうな。雲も薄いし、じきに止みそうだが」
向かい合って座る炬燵。
出窓の向こうでしんしんと降る雪を、二人で眺めた。
『雪は好きだけど、凍ると歩きにくくて嫌』
「君はよく転ぶからな」
『……ぅ』
「気をつけてくれたまえ。心配で仕方ない」
『はーい』
冷え込んできたから、と二人でお揃いの半纏を買って。ついでに色ちがいのモコモコパジャマも着ている。
ピンクとグレー。
御剣さんがグレーを着るつもりだったらしいけど『赤は御剣さんの色だから』と、フリーサイズなのをいいことにピンクを押し付けた。
やっぱり似合ってる。可愛い。
「…む、酸っぱい」
『御剣さんは酸っぱいミカンばっかり当てるよね。はい、半分あげる』
「君はいつも甘いのを当てるな。いいのか?」
『酸いも甘いも分かち合っていこうではありませんか、ねぇ?』
「…ならば、お言葉に甘えて」
そんな、ピンクのモコモコパジャマで半纏まで着こんだ御剣さんと、ミカンを食べていた。
御剣さんの剥いたミカンの皮はボロボロと細かく、机に散らばっている。
…こんなところにも、指先の不器用さが出てしまうらしい。
私の手元の、綺麗に剥かれた…というか、遊んで作ったタコやお花型の皮を恨めしそうに見つめていた。
まあ、甘いミカンでご機嫌は治ったようだけれど。
『触ったときに解るんだよね、酸っぱいとか甘いとか』
「やはり熟してると柔らかかったりするのか?私も固いのは避けてるつもりなんだがな」
綺麗にミカンの筋をとりながら、眉間にヒビを入れて彼はモゴモゴと呟く。
『うーん、確かに柔らかいのが多いけど…固くて甘いのもあるよ。なんだろ、結局フィーリングなんだよね』
「ふむ…ならば真似ようがないな」
『いいじゃん。私が選べばいいだけだもん』
「そうだな。果物選びは君の十八番だ」
筋のなくなったミカンを満足げに口に放る彼を見ながら、私はにんまりと口をつり上げた。
『ふふ、ねえ、私がどうして御剣さんに猛アタックしたか知ってる?』
「なんだ、唐突に」
『触ってわかるのは、果物の甘さだけじゃないってこと』
「!」
『はじめましての握手したときにね、この人が一番私を大切にしてくれるって、直感したの。くすぐったいくらいの優しい感じが、ぶわっ!…て』
その時のことを思い出して、にんまり笑った頬は緩んだままニヤニヤしてしまう。
「……それ、は。私もわかるぞ」
『ん?』
「君と、初めて握手したとき…というか、今もだが。…君に触れるととても満たされた気持ちになる。…甘い果物を食べたような、香りのいい紅茶を飲んだような、そんな気分にな」
『……ふふ、そっか。御剣さんも、そう思ってくれるんだ』
結局、そのままデレデレと笑みが垂れ流れていく。
『私を選んでくれて、ありがと』
離さないで、ね?
Fin.
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