御剣詰め合わせ
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《エイプリルフール》2018拍手
私は思ったことを直ぐ口にしてしまうタイプだ。
どうしても心に秘めるとか、考えてから口に出すとかが出来ない。
よって
『御剣さんのそういうとこ、大好きです』
なんて、本人にうっかり告げてしまったのだ。
告げられた当人は至極怪訝な顔をしている。
因みにそういうとこ、とは。書類を届けに来た私に紅茶を用意してくれたことと、お茶菓子が以前私が好きだと言った銘柄のものだったこと。
『あ、えっと、お菓子をくれるからじゃないですよ?勿論人として好きです!』
するつもりのなかった…というか、口にしたら自覚した告白を取り繕う為に。
私は一層墓穴を掘った。
人として好きとか、それは無理がある。
「………そうか、それはどうも」
彼は1度デスクに視線を落として、ため息混じりにそう返事をした。
え、なんか思ってた反応と違う。
彼なら易々口にするな…と説教が始まるか。天然が発動して餌付けされたな、と笑うと思ったのに。
0.1%、告白として受け止めて返事をくれるのも期待しなかったわけじゃない。
ただ、どれもこれも外れて。
そんな、嫌そうな顔で"どうも"なんて。
興味ないみたいな言い方されるとは思いもしなかった。
(口は災いのもと、自業自得だよね)
やっぱり、そういう言葉は心に秘めるべきなんだろうな。
好きだと思ったからって言っちゃいけないんだ。
バイバイ恋心、ハロー失恋
余りに早く結末を迎えた片想いに変な笑い声が出る。
『は、ぐすっ…あは、…ううっ…あはは』
違うな、泣きたいんだけど、自分の馬鹿さ加減が笑えて仕方ないんだ。
「……その涙も嘘か?」
そんな私に、冷ややかな目を向ける彼の言葉。
嘘?なんで?
彼がさっき目を落としたデスクのカレンダーで思い当たる。
今日、4月1日。
『…っ!』
エイプリルフールだと、御剣さんは思ったのだ。私が嘘をついて、彼の反応を諮ったのだと。
それは嫌な顔もするよね、告白が嘘なんて。好きの反対が嫌いという解釈ならもっとひどい。
『御剣さん』
「…なんだろうか」
『明日、もう1回言いますから!返事用意しといてください!』
「な…」
『いいですね?私は本当に貴方が大好きなんですから!』
言い放つや、私は彼の執務室を飛び出した。
存外告白って恥ずかしいね!
明日も言わなきゃいけなくなったんだけど、同じ台詞じゃ安いかな?
もっと捻る?もっと語る?もっと…
ああ、無理!心臓張り裂ける!
執務室に残された御剣は、呆然と彼女が飛び出したドアを眺める。
彼女が、素直でばか正直で、エイプリルフールなど考えもしない人間だと、解ってたはずなのに。
予期せぬ告白に踊った心は、事実を受け止めるのを恐れた。
万が一、嘘だったら?
そう思うとどうしても真意を聞けず、どうも、なんて酷い返しをしたのだ。
ハラハラと零れる彼女の涙が心に刺さって、ああ不味いと思ったのに。
嘘じゃなかったのか、と聞くところを、それも嘘か、などと。本当に酷い。
けど。彼女はそれで私の解釈に気付いたのだろう。
ハッと顔をあげると
『明日、もう1回言いますから!返事用意しといてください!
私は本当に貴方が大好きなんですから!』
そう言い放った。
(…返事を用意すべきか、告白を用意すべきか)
早く、明日になればいい。
Fin