御剣とイベント
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《ハッピーハロウィン》
和洋折衷で宗教もへったくれもない日本は行事が大好きだ。
クリスチャンじゃなくたってクリスマスを祝うし、バレンタインの意味合いは本家とは全く違うものにまでしてしまう。
そんな中にハロウィンがある。カボチャのランタンやカボチャ味のお菓子は出回るのに、仮装は中々浸透していかない行事。
少子化の日本では子供向けの行事は余りウケないのかもしれない。
別に、子供に限らず大人が仮装してもいいと思う。
なんて、夕方5時少し前に頭を過ぎった。小さい時から行事が好きな私は今でもワクワクしてしまう。
今日はこのまま帰れそうだし、カボチャでデザートくらい作ろうか。そのくらいなら、お堅い恋人も文句を言わないだろう。
そうこうするうちに5時を過ぎて、最寄のスーパーに寄りながら帰宅する。
同棲中の恋人が帰るのはいつも遅い。
有能な彼は、私よりずっと多い仕事を持っているのだ。
ならせめて少しでも家事の手伝いを…と無理矢理私が転がりこんだ事で始まった同棲。
掃除が雑なところ以外は家事の文句は言われていない。ただ、行事好きの私が張り切りすぎてその度に呆れられるだけだ。
『……案外、よさげ?』
呆れられるのは解っているけど、我慢しきれなかった私はスーパーの雑貨屋で買ってしまったのだ。
真っ黒なウィッチハット。
あの、魔女が被っている大きな尖んがり帽子。その尖んがりは可愛らしく折れて、先にはボンボンが着いている。
それに合わせるように、クローゼットから出した黒地のワンピースと紫のストールを着て、鏡の前に立ってみた。
中々魔女に見えない事もない。
…子供じみていることには目をつむる。
今は上がっているテンションをそのままに、彼の為に夕飯を作ろう。
「ただいま」
夕飯の支度が終わった頃、いつもより少し早く彼は帰ってきた。
『お帰り、怜侍。トリック オア トリート!』
「…Trick or treat、だ」
『Trick or treat…?』
「そうだ」
まさかの発音に対するツッコミ。
ほかに突っ込むとこあるでしょ?
予想外の反応にポカーンとする私に、差し出された彼の右手。
小さめの、カボチャをモチーフにしたバスケット。
蓋の隙間からお菓子が見えている。
『えっ…?』
「ム?お菓子か悪戯か、なのだろう?…魔女の悪戯となれば何をされるか解らないからな」
『…っ!!怜侍ありがとう!』
バスケットを受け取って飛び跳ねたい程喜んだ。
だって、今まで怜侍が行事にのってくれた試しは殆どない。
クリスマス=教会でミサ、とか言ってる怜侍がハロウィンをしてくれるなんて思いもしなかった。
「雨月がイベント好きなのはよく解ったからな。喜ぶだろうと思って」
『うん、凄く嬉しい!本当にありがとう!』
玄関から部屋へ移動しながらも、バスケットと彼を見てはニヤケが止まらない。
「……まあ、魔女帽まで準備してるとはな」
『本当は怜侍にも何か着てもらおうと思ってたんだけどね』
「それは遠慮しておこう」
なんて、眉間にヒビを入れるから笑ってしまう。
でも、そういいながら帽子を突いて"似合っている"と言ってくれた。
『ご飯にしよう?ハロウィンだからカボチャ使ったんだ、デザートもあるよ』
テーブルにメニューを出せば、彼は苦笑とも微笑ともつかない顔で笑った。
「雨月は本当に…和洋折衷というか、まあ…別に構わないが」
今日の夕食はカボチャとこんにゃくの煮物と、カボチャの味噌汁。メインはお肉を焼いただけ。デザートを作っていたら時間が足りなくなってしまったのだ。
『デザートはカボチャの茶巾絞りだよ』
そう付け加えれば、穏やかな表情で確実に苦笑された。
「まるで冬至のメニューだな」
『ああ、通りで。なんか違うと思ったんだよね』
違和感の正体に納得して一人頷けば、それにも彼は笑いを零していて。
怜侍が少しでも楽しんでくれるなら。
こんなチグハグなハロウィンでもいいと思うんだ。
(では、私からもTrick or treat)
(え!怜侍がイタズラ!?逆に見たい!)
(…………。ム、)
(考え抜いた彼に)
(私はデコピンされました)
small trick.
それはそれは小さなイタズラ
Fin.
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