成歩堂の日
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《晴れた日は》
雲量0。見事な快晴。
観測地…成歩堂宅。
『成歩堂君、お散歩行こうよ』
たまたま"暇だったから"と部屋に押しかけて来てた彼女はそういい出した。
「え…なんで?」
『晴れてるから』
無邪気に笑いながら、もう帽子まで被って。
人の返事を待つ気はないらしい。
「外、暑いよ?」
『じゃあ水筒持っていこうか』
「もうじきお昼だよ?」
『じゃあお弁当も持っていこう』
「日焼けするよ?」
『日焼け止め塗ってあるよ』
彼女の傍らからひょいひょいと出てくる、自分の疑問を打ち砕く諸々。
「なんでこんな暑い時に…」
そう言いながらも公園まできてしまった自分は。
きっと、じゃなくて確実に彼女に弱い。
『よかった、ベンチ空いてた♪』
木陰になっている、テーブル付きのベンチ。
いつもなら誰かしらたむろしているのに、誰もいない。
「これだけ暑ければ外に出る人もいないだろうしね」
『だから今日誘ったんだよ』
"公園で二人っきりになれる時なんてそうそうないもん"
「じゃあ、そのお弁当とかは…」
『最初から成歩堂君とお散歩と言う名のピクニックにいく為に』
にこっ、と笑った彼女には何も言えない。
広げられたお弁当は、どうみても手作りで。
しかも、手渡されたサンドイッチは美味しかったわけで。
「雨月は、策士だよね」
『成歩堂君が絡む時だけだよ。いつもなんて疲れちゃうから』
無邪気、も罪になるなら即刻彼女は有罪だろう。
たまにサラリと期待させる事を言う。
僕達はまだ、友達、という関係なのだから。
「僕を嵌めるの楽しい?」
『うーん、どうかな』
水筒のお茶をコップにそそぎながら、僕にも分けてくれる。
一人分よりやや大きめの水筒の中身は、氷がたくさん入っていて冷たい。
「最初からピクニックのつもりで来たんでしょ?」
『まあねー。ほら、直球で誘うのは恥ずかしいじゃん?』
それをしゃべってしまったら意味がないんじゃ…なんて思いながらも期待のベクトルは上がってしまって。
「なんだか、凄く意識されてるみたいだね」
なんてふざけてみたら
『じゃあ告白でもしてみる?』
予想の斜め上をいく返事が返ってきた。
「なんで僕が」
『別に好きじゃないならしなくていいんだよ?』
今日何度目かの"なんで"は更に予想外に返される。
「…好きだよ」
『…』
「雨月のこと、好きだよ」
彼女の顔を見ながらいうことはできなくて。
ジリジリと太陽が照らす青空に目線を向けたまま、呟くように言葉を繋ぐ。
言い終えて、意を決して彼女の方へ顔を向ける。
そこにあったのは、両手をほんのり赤く染まった頬にあてて、にまぁっ、綻んだ彼女の顔。
『私も、成歩堂君のこと好き』
その、にまぁっとした笑顔のまま返ってきた言葉に、僕まで頬が緩んだ。
『両想いだね』
「うん」
『恋人にしてくれるの?』
「うん」
雨月の頬はさっきより赤く染まっていて、足をパタパタさせている。
『嬉しいな』
小さく漏れた言葉を聞いて、自分の頬まで染まる気がした。
「そろそろ、帰る?」
この昂揚した気分に昼過ぎの日差しは熱すぎて。
お弁当の包みをしまう彼女を促せば、こくん、と頷いた。
『お散歩楽しかったね』
「暑かったけどね」
『じゃあもう熱いのは嫌?』
ぎゅっと掴まれた右手。
遠慮がちに離れていく彼女の左手を握る。
「これは別」
『成歩堂君の手、凄く熱い』
「雨月の手だって」
暑すぎて誰もいない公園で、熱い手を繋いで。
顔を真っ赤にして帰った。
そんな暑さの中、やけに青空が爽やかに感じて、たまに吹き抜ける風がやけに心地よくて、指を絡ませた雨月がいつもよりずっと近くて。
真っ赤な顔はずっと笑顔のままだった。
晴れた日は
君と散歩にいこう。
帰り道は手を繋いで。
Fin.
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