ゴドーの日
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《辛いやつ》
困ったものを貰った。
“本場のレトルトカレー 辛口”
もうイロイロ間違ってる気がする。
レトルトカレーの本場は日本の筈。でもこれはレトルトの本場のカレー。ああもうややこしい。
これは航空会社に勤めている友人がインド土産としてくれたもの。私が甘党で辛いものが滅法ダメなのを知ってのものだ。
「グリーンカレーはココナッツミルクが入ってるから少しまろやかだよ♪」
なんて書いてあるけど、毎回その手にかかって辛いだの苦いだのという思いをしている…
『という訳なのですが食べませんか?』
男の人なら辛いものは多少免疫があるだろうと思ってランチの時間に差し入れをしてみた。
「コネコちゃんからは嬉しいが…」
『無理に食べることないですよ。辛いの好きな人探しますから』
「…食うさ、他の奴に渡されるくらいならな」
そういうと彼は私のランチジャーを受け取る。
嬉しいような、ちょっと呆れたような気分だ。
『ぅっ…』
蓋を開けた瞬間にスパイシーな香り、私からすれば激臭が漂う。
嗅いでいるだけで辛い。
慌てて、念のために持ってきていた紙パックの牛乳を飲む。
一方彼はといえば、そんな私を笑いながら平気そうにカレーを食べていた。
『辛くないんですか?』
「そりゃ辛くないカレーなんて苦くないコーヒーだぜ」
…………………辛くないカレーはカレーじゃないってことですね?そう言いたいんですね?
それにしても、見る見るうちに減って、あっという間になくなったカレー。
(本当にマイルドだったのかな?)
なんて思っていたら。
「味見してみるかい?」
『え?もう食べ終わっちゃいましたよn…っっっっ!』
ふわっと近づいたスパイシーな匂い。距離をとる間もなく唇が重なった。
香辛料で熱を持った唇と舌。
まして体温だってある。
苦しいとか恥ずかしいとか、イロイロある筈なのに、頭を駆け巡る文字は
熱い
辛い
熱い
辛い
熱い
辛い
熱い
辛い
熱い
辛い
熱い
辛い
熱い
辛い
熱い
辛い
熱い
辛い
熱い
辛い
熱い
辛いってば!!!!!!!!!!
『辛いですっっ!!』
なんとか追いかける舌から逃げ出して第一声。
本当ならもっと可愛いことを言いたいのだけど、とてもそんな状態じゃない。
『牛乳牛乳牛乳っ』
口の中がヒリヒリして痛いくらいだ。…………なのに。
『っ、返して下さい!』
彼はスッとパックを取って持ち上げてしまう。
私の方が背が低いから、背伸びをしてみるも届かない。
『~~っ、か、返して下さい、お願いしますっ』
「いやあ、いつも淡々としてるアンタがここまで必死だと愉しいもんだぜ?」
『人で遊ばないで下さい!ほ、本当に口がヒリヒリして…』
もうここまで来たら水道水でもいいのかもしれない。
口に辛いのが広がるから避けてたけど、このままよりは断絶いい。
『…ちょっ』
なのにそんな考えも読み取ったように腕を掴む彼。
もう辛いのかも解らず、痛いようなヒリヒリが舌に残って涙が出て来る。
何で私の味覚はこんなにお子様なんだ、もう少し耐性が欲しかった。
「…いじめすぎたな、悪い」
牛乳を差し出されて急いで口にいれた。いつ何処で誰に聞いたか解らないけど、辛いのを解消するには牛乳が一番いいと思う。
『うぅ………』
「余程苦手なんだな」
『最初からそう言ってるじゃないですか…』
空になったパックを畳みながら返事をする。
楽しそうなこの人には反省なんてものはないんだろう。
「涙目で背伸びしながら頼む姿は結構良かったんだが…もう戻っちまったか」
『!』
ああ、そうだった。
恥ずかしい…やっぱりこっそり糸鋸刑事にでも渡せば良かった。
なんて思ってたら、
「まあ…なかなか可愛かったぜ」
って言いながらアイスコーヒーをだしてくれた。
もちろんミルク多めで砂糖入り。
『ありがとうございます』
「おう。ところで、夕飯を一緒にどうだい?カレーのお礼に」
『え…』
「アンタはカレー食べられなかったろ?甘口カレーも手を抜かずに美味く作る店があるんだ」
ぽすっ、と頭を撫でられる。それとほぼ同時に昼休み終了のチャイムが鳴る。
「終業までに返事をくれよ?結構混むからな」
『っ是非ご一緒させて下さい』
「ククッ、即答だな」
間髪入れずに答えれば、彼は楽しそうに口元を歪ませた。
……………今日は事件が起こりませんようにっ!
オマケ
『カレー美味しいです!』
「良かったな」
『はいっ、ありがとうございます』
「……」
甘口なのにコクのあるカレーに思わず顔が綻んで。
一瞬フリーズした彼は、スッと唇を近づけた。
『?、ゴドー検j…っっっっ!』
「あ…わりぃ。あんまり可愛かったんでな」
ちなみに、彼が頼んだメニューは激辛カレー。
『辛い辛い辛い辛いっっ(涙)』
(絶対わざとだっ!!)
Fin.