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いや、だって。
そんな急な話があってたまるか。
あれから1年程、なんの変化もない日々を過ごしていたのに、
「雨月ちゃん、実家に戻ったよ」
成歩堂が、苦々しく僕に教えたそれ。
理由は教えてくれず、ただ、その態度から調べろと言われているようだった。
(オデコ君は…?)
あんな、解りやすく好意を露にしていた彼が止めないはずない。
「先輩ですか?話が本当に急で…挨拶もしてないんですよ」
寂しいなぁ、と笑った顔は。
あの時見た、雨月ちゃんに好意を寄せる顔ではなかった。
(なんなんだ…)
連絡先も変わっていてメールも電話も繋がらない。
彼女に何があったんだ。
そんな、モヤモヤした数日を過ごしたある夜。
日付も変わる頃、知らない番号から着信があった。
携帯の番号を知っていて、登録してない人なんて…
(まさか。いや、頼むそうであってくれ!)
「も、もしもしっ!?」
『…っ、が、牙琉さん、ですか?』
「その声、雨月ちゃんだね?」
『はい。あの…こんな時間にごめんなさい、少しでいいので…お話したくて』
「今、どこ」
『え』
「行く。すぐ会いに行くから、どこにいるの?」
言われた場所は海の見える公園。受け答えをしながらキーを掴み、車を飛ばした。
20分かそこら。公園の入り口に彼女を見つけて車の後部座席に招いた。
僕も、後部座席に座る。
『もう…牙琉さんてば、かっこよすぎです…本当に、すぐ来てくれて…』
今にも泣きそうな、寧ろ今まで泣いていたんだろう顔で微笑んでみせる彼女。
ああ、そんな顔で笑わなくていいから。
お願いだから…
「…君のためなら、出来る限りのことをするよ。ねえ、何があったか聞いてもいいかい?」
彼女の泣き顔を見たくなくて、思わず抱き寄せた。
彼女が泣いていると、自分の胸も苦しい。
『…話しても、いいですか』
躊躇っていた彼女の手が、怖ず怖ずと僕のジャケットを掴んだ。
オデコ君と彼女は付き合っていた。でも、法廷爆破に巻き込まれて一部記憶喪失に。
それは、恋した相手を雨月ちゃんから森澄さんに書き換えてしまった。
(彼女は、天使じゃなくて人魚だったのか)
声を発することも、王子に思い出されることもなく、泡にもなれなかった…哀れで優しい人魚。
『オドロキ君にも、嘘、つかれるなんて…"先輩がいいんです"って、言ったくせに…っ』
悔しい、悲しい。彼女の涙は次々と溢れて、僕のシャツの色を濃くしていく。
「…っ」
『…、なんで、牙琉さんが、泣いてるんですか』
胸元から顔を上げた彼女が、泣き顔のまま不思議がる。
「僕にもよく、解らないよ…ただ、君が泣いていると僕も悲しいんだ。何もできない僕が悔しいし…僕なら絶対泣かせなかったのにと思うと…」
言うべきではないかもしれない。
でも、何年も抱えた片想いは少しこじれてしまっているみたいだ。
「…雨月ちゃん、人魚姫が幸せになってもいいと思うんだ。…もしよければ、僕と恋をしてくれないか?」
『…な………』
「ごめん、変なことを言っているかもしれない。でも…ずっと好きだったんだ。君の天使のような微笑みが大好きで……お願いだよ、泣かないでくれ」
『っ……困っちゃいますね…本当に……牙琉さん、カッコよくて…私…っ
…彼を忘れても、許されますか。貴方に恋をしたと答えても、許されますか』
その眉尻を下げた微笑みに、僕は再び恋に落ちた。
「許すよ。…法が許さなくても、僕が許す」
『っ…』
「いいよ。すぐに忘れられなくて。ゆっくり、ゆっくり幸せになろう」
『は、い』
(人魚は声を取り戻した)
(その声が)
(ゆっくりゆっくり)
(僕の色に染まればいい)
Fin
いや、だって。
そんな急な話があってたまるか。
あれから1年程、なんの変化もない日々を過ごしていたのに、
「雨月ちゃん、実家に戻ったよ」
成歩堂が、苦々しく僕に教えたそれ。
理由は教えてくれず、ただ、その態度から調べろと言われているようだった。
(オデコ君は…?)
あんな、解りやすく好意を露にしていた彼が止めないはずない。
「先輩ですか?話が本当に急で…挨拶もしてないんですよ」
寂しいなぁ、と笑った顔は。
あの時見た、雨月ちゃんに好意を寄せる顔ではなかった。
(なんなんだ…)
連絡先も変わっていてメールも電話も繋がらない。
彼女に何があったんだ。
そんな、モヤモヤした数日を過ごしたある夜。
日付も変わる頃、知らない番号から着信があった。
携帯の番号を知っていて、登録してない人なんて…
(まさか。いや、頼むそうであってくれ!)
「も、もしもしっ!?」
『…っ、が、牙琉さん、ですか?』
「その声、雨月ちゃんだね?」
『はい。あの…こんな時間にごめんなさい、少しでいいので…お話したくて』
「今、どこ」
『え』
「行く。すぐ会いに行くから、どこにいるの?」
言われた場所は海の見える公園。受け答えをしながらキーを掴み、車を飛ばした。
20分かそこら。公園の入り口に彼女を見つけて車の後部座席に招いた。
僕も、後部座席に座る。
『もう…牙琉さんてば、かっこよすぎです…本当に、すぐ来てくれて…』
今にも泣きそうな、寧ろ今まで泣いていたんだろう顔で微笑んでみせる彼女。
ああ、そんな顔で笑わなくていいから。
お願いだから…
「…君のためなら、出来る限りのことをするよ。ねえ、何があったか聞いてもいいかい?」
彼女の泣き顔を見たくなくて、思わず抱き寄せた。
彼女が泣いていると、自分の胸も苦しい。
『…話しても、いいですか』
躊躇っていた彼女の手が、怖ず怖ずと僕のジャケットを掴んだ。
オデコ君と彼女は付き合っていた。でも、法廷爆破に巻き込まれて一部記憶喪失に。
それは、恋した相手を雨月ちゃんから森澄さんに書き換えてしまった。
(彼女は、天使じゃなくて人魚だったのか)
声を発することも、王子に思い出されることもなく、泡にもなれなかった…哀れで優しい人魚。
『オドロキ君にも、嘘、つかれるなんて…"先輩がいいんです"って、言ったくせに…っ』
悔しい、悲しい。彼女の涙は次々と溢れて、僕のシャツの色を濃くしていく。
「…っ」
『…、なんで、牙琉さんが、泣いてるんですか』
胸元から顔を上げた彼女が、泣き顔のまま不思議がる。
「僕にもよく、解らないよ…ただ、君が泣いていると僕も悲しいんだ。何もできない僕が悔しいし…僕なら絶対泣かせなかったのにと思うと…」
言うべきではないかもしれない。
でも、何年も抱えた片想いは少しこじれてしまっているみたいだ。
「…雨月ちゃん、人魚姫が幸せになってもいいと思うんだ。…もしよければ、僕と恋をしてくれないか?」
『…な………』
「ごめん、変なことを言っているかもしれない。でも…ずっと好きだったんだ。君の天使のような微笑みが大好きで……お願いだよ、泣かないでくれ」
『っ……困っちゃいますね…本当に……牙琉さん、カッコよくて…私…っ
…彼を忘れても、許されますか。貴方に恋をしたと答えても、許されますか』
その眉尻を下げた微笑みに、僕は再び恋に落ちた。
「許すよ。…法が許さなくても、僕が許す」
『っ…』
「いいよ。すぐに忘れられなくて。ゆっくり、ゆっくり幸せになろう」
『は、い』
(人魚は声を取り戻した)
(その声が)
(ゆっくりゆっくり)
(僕の色に染まればいい)
Fin