リクエスト3
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《過保護な彼と抜けてる彼女》
※R15:チラッと如何わしい表現あり。15才以下の閲覧をお控え願います。
それは、御剣さんの執務室へ向かうべく検事局の廊下を歩いていた時のことだった。
キョロキョロとメモを見ながら周りを見渡す若い男の人。局で見かけたことがないし、来客が道にでも迷ったのだろうか。
『あの、どうかしましたか?』
「!え…あ、ちょっと場所が解らなくて…この人なんだけど…」
『ああ、その検事さんは下の階ですよ。階段を降りてすぐ左の部屋です』
「ありがとう!あの、よければ名前を聞いていい?お礼がしたいんだけど…」
『これ、名刺です。あ、でもお礼とかいらないんで』
「僕の名刺も…そういわずに」
『私、用事があるので失礼しますねっ!』
やっぱり迷子の人だった。声かけてよかったなー、なんて思っていたけど。
名前を聞かれ、うっかり名刺を差し出して思い出した。
"局で無闇に名前を教えるな、どんな輩がいるかわからないから"
御剣さんの注意。
慌てて名刺交換だけして立ち去ったけど、人助けだし、いいよね?
「いい、というと思ったか?」
『でも、困ってたみたいだったから…』
「部屋を答えてすぐに離れてもいいだろう。…それに、この名前は少々関わりたくないしな」
『知り合いですか?』
執務室にくるのが遅くなった理由を述べる手前、廊下での経緯を話した。
それだけでも不機嫌そうだったのに、名刺を見せれば眉間のヒビがすさまじいことになっている。
いつも彼の前では真っ赤な顔も、今は不安で真っ青になっているだろう。
「春日井という名字で気付きそうなものだが…今政界で厄介な男だ。背格好からしてそいつの息子だろう、そっちもいい噂は聞かないが…何か荷物は持っていなかったか?」
『うわ…そんな人だったんですね。ビジネスケース以外には紙袋を持ってましたよ。御菓子っぽかったです』
「…、賄賂を疑ってもいいかもしれないな」
『え…』
「私がその辺りを探ろう。君は春日井からの連絡を一切受け付けるな。それから、できるだけ一人にならないように」
『うん、気を付ける』
その時は、
(御剣さん相変わらず心配性だなぁ)
くらいに思ってた。
でも、その後頻繁に鳴る電話。多数のメール。
(これ、春日井さんだ…)
言い様のない不気味さからどれも無視していたのに、突然の不可抗力だった。
「やあ、雨月ちゃん。連絡とれないから事務所にお邪魔したよ」
まあそれはそうだ。
名刺にはしっかり
"成歩堂なんでも事務所…弁護士"
と書かれているし、住所も載ってる。
『…』
「あれ?覚えてない?検事局で会ってさ…今日はお礼と、ちょっと相談が…」
『相談?』
「うん、弁護士の君に会えたのは運命かもしれない。助けてもらえないかな?」
元来人助けが好きでお人好しと言われる自分。
助けて欲しいと言われたら断れないのである。
『とりあえず、お話を』
「ありがとう!多分気づいてると思うんだけど、僕の父は政界で疎まれていてね…でもそれは罠なんだ、父を失脚させたい輩のデマで…父の無罪を証明してはもらえないかな?」
一気に捲し立てた春日井の言葉に、完全にお人好しモード全開である。
『それは…なんとしてでも助けないと!』
「心強いよ!今日はその件で取引があるみたいなんだ…一緒に行って証拠を掴もう」
『はい!』
そう、ここに成歩堂さんがいればサイコロックを見いだし、みぬきちゃんかオドロキ君がいれば動揺や不自然さを感じ、心音ちゃんがいれば心の不和を聞き取ったのだろうけど。
生憎そこには御剣さんの忠告すら抜け落ちた雨月と、含みのある笑いをした春日井しかいなかったのだ。
「じゃあ、これから取引場所の倉庫にいこうか」
『わかりました!』
だから、のこのこと着いてきてしまったんだ。
『あの、ここで張ってればくるんですよね?』
薄暗い倉庫に入り、どこに潜めばいいかと見渡している間に閉められるシャッター。
『春日井さん?』
「ああ、来ないんじゃないかな?」
『え』
「だって、全部嘘だもん」
にやり。
不気味な笑みが近づいたと思ったら、距離を取る間もなく押さえつけられる両手。
『なっ!』
「ああ、叫ばない方がいいんじゃない?」
『ひっ!』
私に馬乗りになった彼の手にはジャックナイフ。
片手で押さえつけられる両手はびくともしないし、ナイフを突きつけられた喉は声も出せない。
「うん、従順で馬鹿な子は好きだよ」
その、目の笑っていない不気味な笑いかたのまま、両手はガムテープで縛られた。
恐怖で声の出ない口も、ガムテープを張られる。
状況を飲み込むのに必死な私に追い討ちをかけるように、春日井の口が動いた。
「まさか、これからなにされるか解らない程バカじゃないよね?」
ガタガタと震えるだけで頭の整理は何もできなかった。
ただ、"なにされるか"と言われて解らない程バカでもなかった。
『んー!』
「さっき言ったよね?従順で馬鹿な子は好きって。反抗する馬鹿は嫌いってことだよ?」
唸ったり首を振ったりという抵抗を試みたところ、笑っていない目に冷たさが宿る。
これは危ない人だ。
やっと気づいても遅いのだろう、ジャックナイフはブラウスを一気に引き裂いた。
「こっちは一目惚れだったんだけど、君があんまり避けるんだもん。煽ってたんでしょ?」
欲を含んだ視線が不快に感じる。けど、近付く不気味な笑顔にも顔を背けられないのは、反抗してはいけないと本能が告げるせいだ。
避けずにいれば気を良くしたのか、鎖骨に噛みつかれる。
『んぐっ!』
「泣くほど嬉しい?嬉しいよね?僕に好かれるなんて嬉しいでしょ?」
最悪だ。こんなやつに。
好きな人以外に誰にされて嬉しいものか。
これも全部、御剣さんの言いつけをちゃんと聞かなかったせいだ。御剣さん、怒るかな…
(御剣さん…助けにきてくれないかな…)
都合のいい考えだと思った。こんな姿、彼に見られたくはない。でも、彼以外に見られるのも嫌だった。
「ね?なに考えてんの?僕が目の前にいるっていうのに」
ああ、不味い。
再び目に冷たさが宿って、ナイフの切っ先がストッキングへ向かった。
(もう…やだっ)
現実から逃げるために目をきつく瞑った、その直後だ。
ガタンっ
大きな音に驚いて目を開ければ、同じように驚いて後ろを振り向く春日井と。
蹴り破られたシャッターから飛び込んでくる赤が目に入った。
「雨月から離れろ!」
「ぐはっ!」
駆け込んできた赤は春日井を殴り飛ばした。
そして、一緒に飛ばされたナイフを蹴飛ばしながら春日井を拘束する見慣れた刑事。
「御剣検事!単独特攻はやらないって言ったじゃないっスか!あと、春日井逮捕っス!」
ああ、あれはイトノコさんだ…。
ってことは目の前にいる赤い人は……
「雨月…」
『み…つるぎ、さん』
ガムテープを剥いでもらい、震える声でやっと紡げば。御剣さんに痛いほど抱き締められた。
「馬鹿者!あれほど一人になるな、警戒しろといったではないか!お前のお人好しは確かに長所だが、自分が危険にあってどうするのだ!」
『っ…、ご、ごめ…なさっ、』
御剣が感情的になる、ということは。それだけ本気なのだ。
本当なら安心するような言葉をかけてやりたいのに。
破られたブラウス、白い鎖骨に残された色濃い赤。
殴り飛ばした時にナイフや春日井の爪が引っ掛かったのだろう、裂けた黒いストッキングから覗く素足。
これから"なにをされるか"が明白に解る状況で冷静でいられるほど、御剣はできた男ではなかった
「とりあえず、これを着たまえ」
御剣は自分のスーツを雨月に羽織らせる。丈の長いそれは、彼女を隠すには十分だった。
『…ごめんなさい』
「謝らなくていい。雨月を一人にした私にも非がある。怖かっただろう、もっと早く助けたかった…」
『御剣さんは、助けにきてくれました。私が馬鹿で、こんな、こんな…』
スーツの襟を必死に握る姿を見ては、居たたまれないのだ。春日井のやつ、死刑にしても足りない。
「……」
『…、御剣さん?』
パトカーではなく、自分の車に彼女を乗せて。ゆっくり抱き寄せた。
そのまま何も言わず、ひたすら髪と背中を撫でる。
真っ青だった彼女の頬に赤みがさしてきた。
『み、御剣さん///』
どのくらい経っただろうか。
真っ赤な顔の彼女は私を引き剥がしにかかる。
「少しはいつもの調子がもどってきたか。赤いぞ、顔」
『うっ///』
「そんなに私が好きか」
『!』
いつもいつも、会うたびに赤くなる彼女。それが真っ青とは本当に怖かったのだろう。
少しずつ落ち着いてくればやはり顔が赤くなって。
その様子に優越感を覚えてしまったのは罪だろうか、自然に意地悪を紡いだ。
ただ、その意地悪に可哀想なくらい赤くなって頷くものだから、こっちまで赤くなってしまって。
「なら、今後雨月を泣かせていいのは私だけだ。こんな真似も…私以外には絶対させない」
嗚呼。
真っ赤な顔でこんな台詞を吐いても決まらないのだろうな。
そうは思いつつも、治まらない苛立ちや焦燥に任せて吐ききった。
『…私も、そうでありたいです。御剣さんなら、いい…御剣さんじゃなきゃ嫌です』
(君は…少し男というものをわかりたまえ…。気が持たない)
(だ、だから…、御剣さんなら…その…あの、御剣さんが、いいんです)
(…っ、)
誰か助けてくれ
なけなしの理性が飛びそうだ…
(雨月ちゃん、災難だったね)
(成歩堂さんも私のせいで沢山怒られて…すみません)
(まあ、御剣の過保護は今に始まったことじゃないからいいけど…悪化したね?)
(これを期に同棲することになったのは嬉しいんですけど、移動時の報告義務ができました…)
((確かに心配だけど、御剣…お前が犯罪になりそうで僕は怖いよ…))
Fin.
※R15:チラッと如何わしい表現あり。15才以下の閲覧をお控え願います。
それは、御剣さんの執務室へ向かうべく検事局の廊下を歩いていた時のことだった。
キョロキョロとメモを見ながら周りを見渡す若い男の人。局で見かけたことがないし、来客が道にでも迷ったのだろうか。
『あの、どうかしましたか?』
「!え…あ、ちょっと場所が解らなくて…この人なんだけど…」
『ああ、その検事さんは下の階ですよ。階段を降りてすぐ左の部屋です』
「ありがとう!あの、よければ名前を聞いていい?お礼がしたいんだけど…」
『これ、名刺です。あ、でもお礼とかいらないんで』
「僕の名刺も…そういわずに」
『私、用事があるので失礼しますねっ!』
やっぱり迷子の人だった。声かけてよかったなー、なんて思っていたけど。
名前を聞かれ、うっかり名刺を差し出して思い出した。
"局で無闇に名前を教えるな、どんな輩がいるかわからないから"
御剣さんの注意。
慌てて名刺交換だけして立ち去ったけど、人助けだし、いいよね?
「いい、というと思ったか?」
『でも、困ってたみたいだったから…』
「部屋を答えてすぐに離れてもいいだろう。…それに、この名前は少々関わりたくないしな」
『知り合いですか?』
執務室にくるのが遅くなった理由を述べる手前、廊下での経緯を話した。
それだけでも不機嫌そうだったのに、名刺を見せれば眉間のヒビがすさまじいことになっている。
いつも彼の前では真っ赤な顔も、今は不安で真っ青になっているだろう。
「春日井という名字で気付きそうなものだが…今政界で厄介な男だ。背格好からしてそいつの息子だろう、そっちもいい噂は聞かないが…何か荷物は持っていなかったか?」
『うわ…そんな人だったんですね。ビジネスケース以外には紙袋を持ってましたよ。御菓子っぽかったです』
「…、賄賂を疑ってもいいかもしれないな」
『え…』
「私がその辺りを探ろう。君は春日井からの連絡を一切受け付けるな。それから、できるだけ一人にならないように」
『うん、気を付ける』
その時は、
(御剣さん相変わらず心配性だなぁ)
くらいに思ってた。
でも、その後頻繁に鳴る電話。多数のメール。
(これ、春日井さんだ…)
言い様のない不気味さからどれも無視していたのに、突然の不可抗力だった。
「やあ、雨月ちゃん。連絡とれないから事務所にお邪魔したよ」
まあそれはそうだ。
名刺にはしっかり
"成歩堂なんでも事務所…弁護士"
と書かれているし、住所も載ってる。
『…』
「あれ?覚えてない?検事局で会ってさ…今日はお礼と、ちょっと相談が…」
『相談?』
「うん、弁護士の君に会えたのは運命かもしれない。助けてもらえないかな?」
元来人助けが好きでお人好しと言われる自分。
助けて欲しいと言われたら断れないのである。
『とりあえず、お話を』
「ありがとう!多分気づいてると思うんだけど、僕の父は政界で疎まれていてね…でもそれは罠なんだ、父を失脚させたい輩のデマで…父の無罪を証明してはもらえないかな?」
一気に捲し立てた春日井の言葉に、完全にお人好しモード全開である。
『それは…なんとしてでも助けないと!』
「心強いよ!今日はその件で取引があるみたいなんだ…一緒に行って証拠を掴もう」
『はい!』
そう、ここに成歩堂さんがいればサイコロックを見いだし、みぬきちゃんかオドロキ君がいれば動揺や不自然さを感じ、心音ちゃんがいれば心の不和を聞き取ったのだろうけど。
生憎そこには御剣さんの忠告すら抜け落ちた雨月と、含みのある笑いをした春日井しかいなかったのだ。
「じゃあ、これから取引場所の倉庫にいこうか」
『わかりました!』
だから、のこのこと着いてきてしまったんだ。
『あの、ここで張ってればくるんですよね?』
薄暗い倉庫に入り、どこに潜めばいいかと見渡している間に閉められるシャッター。
『春日井さん?』
「ああ、来ないんじゃないかな?」
『え』
「だって、全部嘘だもん」
にやり。
不気味な笑みが近づいたと思ったら、距離を取る間もなく押さえつけられる両手。
『なっ!』
「ああ、叫ばない方がいいんじゃない?」
『ひっ!』
私に馬乗りになった彼の手にはジャックナイフ。
片手で押さえつけられる両手はびくともしないし、ナイフを突きつけられた喉は声も出せない。
「うん、従順で馬鹿な子は好きだよ」
その、目の笑っていない不気味な笑いかたのまま、両手はガムテープで縛られた。
恐怖で声の出ない口も、ガムテープを張られる。
状況を飲み込むのに必死な私に追い討ちをかけるように、春日井の口が動いた。
「まさか、これからなにされるか解らない程バカじゃないよね?」
ガタガタと震えるだけで頭の整理は何もできなかった。
ただ、"なにされるか"と言われて解らない程バカでもなかった。
『んー!』
「さっき言ったよね?従順で馬鹿な子は好きって。反抗する馬鹿は嫌いってことだよ?」
唸ったり首を振ったりという抵抗を試みたところ、笑っていない目に冷たさが宿る。
これは危ない人だ。
やっと気づいても遅いのだろう、ジャックナイフはブラウスを一気に引き裂いた。
「こっちは一目惚れだったんだけど、君があんまり避けるんだもん。煽ってたんでしょ?」
欲を含んだ視線が不快に感じる。けど、近付く不気味な笑顔にも顔を背けられないのは、反抗してはいけないと本能が告げるせいだ。
避けずにいれば気を良くしたのか、鎖骨に噛みつかれる。
『んぐっ!』
「泣くほど嬉しい?嬉しいよね?僕に好かれるなんて嬉しいでしょ?」
最悪だ。こんなやつに。
好きな人以外に誰にされて嬉しいものか。
これも全部、御剣さんの言いつけをちゃんと聞かなかったせいだ。御剣さん、怒るかな…
(御剣さん…助けにきてくれないかな…)
都合のいい考えだと思った。こんな姿、彼に見られたくはない。でも、彼以外に見られるのも嫌だった。
「ね?なに考えてんの?僕が目の前にいるっていうのに」
ああ、不味い。
再び目に冷たさが宿って、ナイフの切っ先がストッキングへ向かった。
(もう…やだっ)
現実から逃げるために目をきつく瞑った、その直後だ。
ガタンっ
大きな音に驚いて目を開ければ、同じように驚いて後ろを振り向く春日井と。
蹴り破られたシャッターから飛び込んでくる赤が目に入った。
「雨月から離れろ!」
「ぐはっ!」
駆け込んできた赤は春日井を殴り飛ばした。
そして、一緒に飛ばされたナイフを蹴飛ばしながら春日井を拘束する見慣れた刑事。
「御剣検事!単独特攻はやらないって言ったじゃないっスか!あと、春日井逮捕っス!」
ああ、あれはイトノコさんだ…。
ってことは目の前にいる赤い人は……
「雨月…」
『み…つるぎ、さん』
ガムテープを剥いでもらい、震える声でやっと紡げば。御剣さんに痛いほど抱き締められた。
「馬鹿者!あれほど一人になるな、警戒しろといったではないか!お前のお人好しは確かに長所だが、自分が危険にあってどうするのだ!」
『っ…、ご、ごめ…なさっ、』
御剣が感情的になる、ということは。それだけ本気なのだ。
本当なら安心するような言葉をかけてやりたいのに。
破られたブラウス、白い鎖骨に残された色濃い赤。
殴り飛ばした時にナイフや春日井の爪が引っ掛かったのだろう、裂けた黒いストッキングから覗く素足。
これから"なにをされるか"が明白に解る状況で冷静でいられるほど、御剣はできた男ではなかった
「とりあえず、これを着たまえ」
御剣は自分のスーツを雨月に羽織らせる。丈の長いそれは、彼女を隠すには十分だった。
『…ごめんなさい』
「謝らなくていい。雨月を一人にした私にも非がある。怖かっただろう、もっと早く助けたかった…」
『御剣さんは、助けにきてくれました。私が馬鹿で、こんな、こんな…』
スーツの襟を必死に握る姿を見ては、居たたまれないのだ。春日井のやつ、死刑にしても足りない。
「……」
『…、御剣さん?』
パトカーではなく、自分の車に彼女を乗せて。ゆっくり抱き寄せた。
そのまま何も言わず、ひたすら髪と背中を撫でる。
真っ青だった彼女の頬に赤みがさしてきた。
『み、御剣さん///』
どのくらい経っただろうか。
真っ赤な顔の彼女は私を引き剥がしにかかる。
「少しはいつもの調子がもどってきたか。赤いぞ、顔」
『うっ///』
「そんなに私が好きか」
『!』
いつもいつも、会うたびに赤くなる彼女。それが真っ青とは本当に怖かったのだろう。
少しずつ落ち着いてくればやはり顔が赤くなって。
その様子に優越感を覚えてしまったのは罪だろうか、自然に意地悪を紡いだ。
ただ、その意地悪に可哀想なくらい赤くなって頷くものだから、こっちまで赤くなってしまって。
「なら、今後雨月を泣かせていいのは私だけだ。こんな真似も…私以外には絶対させない」
嗚呼。
真っ赤な顔でこんな台詞を吐いても決まらないのだろうな。
そうは思いつつも、治まらない苛立ちや焦燥に任せて吐ききった。
『…私も、そうでありたいです。御剣さんなら、いい…御剣さんじゃなきゃ嫌です』
(君は…少し男というものをわかりたまえ…。気が持たない)
(だ、だから…、御剣さんなら…その…あの、御剣さんが、いいんです)
(…っ、)
誰か助けてくれ
なけなしの理性が飛びそうだ…
(雨月ちゃん、災難だったね)
(成歩堂さんも私のせいで沢山怒られて…すみません)
(まあ、御剣の過保護は今に始まったことじゃないからいいけど…悪化したね?)
(これを期に同棲することになったのは嬉しいんですけど、移動時の報告義務ができました…)
((確かに心配だけど、御剣…お前が犯罪になりそうで僕は怖いよ…))
Fin.