リクエスト3
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《見抜けたものの》御剣視点
「いい弁護士紹介してよ、怜侍君」
「貴方がいうんですか、それ…」
「だって可愛い雨月が社会勉強したいって」
「解るように話してください」
信楽さんが執務室を訪ねてきた。
事務所の助手をしている弁護士の雨月さんが、信楽さん以外の弁護を見て勉強をしたいと言い出したそうだ。
紆余曲折あって司法試験を受ける前から面倒を見ていた雨月さん。実の娘かのごとく愛しているとのことで、半端な事務所には行かせたくないと。
この法の暗黒時代と呼ばれる最中、同業者としては悪い面しか見えないのだという。
「でさ、検事目線でいい弁護士って誰かなーと」
「はぁ…」
今までで私を敗訴にさせたのはあの男しかいない。
相棒、と呼べるのもあいつぐらいだ。
弁護士としての力は強くないが、依頼人の為に発揮する力は父並みにあるだろう。だが…
「思い当たる弁護士はいるのですが…」
「えっ!誰!なんて事務所?」
「……成歩堂なんでも事務所」
「……」
「……」
「…法律、事務所?」
「昔は。今は"なんでも"です」
しかも、法の暗黒時代を作った張本人である。
名前自体はあらゆる意味で有名だ。
「怜侍君のお薦めとあらば、噂は所詮噂。身の潔白は事実なんだね」
「あの男については私が保障します。他にも弁護士が在籍していますが、技量はともかく心根のいい者ばかりです」
「そっかぁ…じゃあ、そこに紹介してくれる?」
…
……
…………
「という訳だ、成歩堂。雨月さんを頼みたい」
「唐突だよ、御剣」
「私も唐突に言われたのだ。まさかお前も勉強したいという新米弁護士を断るまい?」
「それはそうだけど。なんせ仕事が…」
「ああ、言い忘れていた。弁護士としての仕事がある時だけ彼女を呼んでくれればいい。というか、暇な時や"なんでも"の部分に彼女を呼ぶな」
「まあ、そうなるよね」
「下手な理由で彼女を招くと後悔するぞ。信楽さん、雨月さんを娘の様に可愛がっているからな」
「…他のメンバーにも伝えておくよ」
「頼んだ」
まあ、この事務所なら信念や奇跡じみた発想の勉強はできるだろう。
……戦術として使えるかは別だが。
…………王泥喜視点…………
「まあ、そういう訳で今回の裁判は雨月ちゃんが一緒に入るから」
『宜しくお願いします』
「こちらこそ」
「お願いします!」
もう、誰も詳しくは突っ込まなかった。
学ぶ意志が宿ったキラキラした瞳に、ぐうの音も出なかったのだ。
「っていっても希月さんも新人だしなぁ…僕とオドロキ君で分担しようか」
「え、俺もまだ1年そこそこなんですけど…」
「1年でも先輩だろ?歳も近いし、雨月ちゃん、オドロキ君と一緒でいいかな」
『はい!オドロキ先輩、お願いします!』
「…お願いします」
成歩堂さんに押しきられ、雨月の目力に負け、後には引けなかった。
『オドロキ先輩、調査とか行きますか?』
「ああ、うん。聞き込みに行くよ。現場も見る」
『ご同行させてください!』
「そんな畏まんなくていいよ」
俺も熱血漢とは言われるけど、彼女から溢れるオーラも希月さん並みかそれ以上だ。
『結構証言とれましたねー』
「そうだね。時間や地理的な矛盾も特になさそう」
調査の帰り、長い髪を口元に持ってくるようにして、嬉しそうに彼女は俺の隣を歩いている。
聞き込みや調査は彼女も自発的に質問したり調査したりと、積極的で。
こちらから何か教えるというより、勝手に学ぶスタイルだった。
『後は裁判ですね!何か、戦法とかありますか?』
「え…特にないけど、強いて言うなら…。怪しいと思ったらひたすら揺さぶって見抜くことかな?」
『……はぁ』
まあ、そうだよな。
「要するに、依頼人を信じて真実を見つける、だよ、うん」
『そうですね!』
何も要せてない説明だったんだけど、"信じる""真実"と、キラキラしたオーラを振り撒いて呟く雨月さんには何も言えず。
「明日、頑張ろうね」
『はい!』
尚も口元を髪で隠しながら笑う彼女に。ただ、明日の裁判は気が抜けないな、と思った。
…
……
………
『オドロキ先輩!あれすごいですね!どうして嘘を見抜けたんですか?』
「ああ…俺、人より目がいいんだ。癖とか仕草とか目についちゃって…動揺とか解っちゃうんだよ」
『それ、いい特技ですね!裁判や取り調べに持ってこいじゃないですか!』
「まあね」
無事に裁判を終えて、二人でロビーで話していた。
(なんでも信楽さんが迎えにくるから待っていなければならないとのこと)
そこそこ白熱した裁判に興奮しているのか、相も変わらずキラキラしたオーラのまま語る雨月さん。
やはり口元を髪で隠しながら話している。
「…で、見抜くついでなんだけどさ」
『はい!なんですか?』
「その、俺と話すときに口元を髪の毛で隠すのはどうして?」
『…!』
「え、無意識だった?成歩堂さんと話すときとかはそれやってないよね?」
『……無意識です。でも、昔からの癖なんで自覚はあります』
弄っていた髪をパッと離し、顔を俯けた。行き場を失った手はスカートを握りしめている。
「なんか、聞いちゃいけなかった?ごめん…気になっただけなんだ」
『あ、いえ!大したことじゃないんです!ちっちゃい時から好きな人の前だと……あっ』
「……大したこと、じゃないかな?」
興味本意で質問したら地雷を踏んだ。
『…すみません、今気付きました。……オドロキ先輩のこと好きになってたみたいです…』
「出会って2日なんだけど…」
『傍聴には何度か来てるので、私は何度もお見かけしてるんです。先輩の裁判、とてもカッコいいから』
握りしめていた手が、髪をいじり始めた。
ああ、本当に。
「俺は、裁判や弁護に対する雨月さんの意欲的で、キラキラした目、好きだなって思った」
『…!』
「その、これから少しずつ、仲良くしていかない?」
差し出した右手。
握手しようと思ったし、彼女もおずおずとだけど、はにかみながら右手を差し出したとき。
「お待たせ雨月ちゃん!オドロキ君もありがとう!」
見計らったように信楽さんがロビーに入ってきた。
『信楽さん、わざわざ来てもらっちゃって…』
「いいのいいの、最近物騒だから。ね?オドロキ君?」
その含みのある笑顔に、
(仲良くなるのは前途多難だな)
と直感した。
(オドロキ先輩、今度ランチでも…)
(あ、そのお店僕も行きたかったんだ!ご一緒してもいい?)
((…))
(雨月さん、このあとよければ)
(雨月ちゃん!それ終わったら事務所の手伝いしてほしいな)
((…))
直感は当たりました。
(見抜けたものの)
(発展できず)
Fin.