リクエスト3
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《遠回り》御剣視点
むくれた彼女が執務室に訪れることは珍しくない。
残念ながら。
いやもう、10年近くこの常態なのだ。なんとかしてくれ、手に負えない。
『レイくん、また聞いてなかったでしょ』
「成歩堂の事務所に来る新しい弁護士が若い女性なのだろ?きいている」
『レイくんの"きいている"は"そういう話を知ってる"のきいているでしょ!私は、』
「どうせ、成歩堂が靡いてしまったらどうしよう。だろ?仮に靡いても成歩堂が振り向かれる訳ない、安心しろ」
『解んないじゃん!嗚呼見えて大人の色気は出てくるし、背も高い方だし、親友助けるくらい優しいし、燃えた吊り橋を渡ろうとする勇気もあるし、依頼人を信じる信念もあるし、それから、』
「解ったから。のろけるのを止めたまえ」
『の、のろけてない!』
三十路まできても落ち着きのない彼女にはほとほと呆れるが、それに付き合い続けている私も大概だ。
これに矢張も加え幼馴染みだ、よくやっていると思う。
『しかもさ、若いって18だよ?jkじゃん!こんなおばさんが勝てるわけないよ!』
「…」
『ねえ、聞いてる!?』
「10年近く前に逆の言葉を聞いた。"こんな小娘が千尋さんみたいな大人の女に勝てるわけない"とな」
『だって…』
「まったく、若い間何をしてたのだ。真宵君を捕まえて"純粋な天使"とぬかし、チナミやアヤメには"美少女"だの、茜君にも"元気で明るい"。みぬき君にまで"親子愛には勝てない"とほざく始末だ」
『だって!リュウ君のまわりは本当に美人ばっかりだし!なんか知らないけど女の子にいつも囲まれてて、自信なくなるのも仕方ないでしょ!』
「…自信も何も、彼女ですらないではないか」
『う…』
「勝てないと喚くぐらいなら何か一つでも勝つ努力をしろ。とりあえず、20年に渡ってアイツに片想いできるのは雨月くらいだ。圧勝だろう」
『誉められてるのか貶されてるのか…』
「両方だ」
私とて暇ではない。
それでもこれだけ付き合ってやれるのは、幼馴染みのよしみ…といったところか。
「…次は玉砕か発展かの報告しか聞かないからな」
『…ええ』
「成歩堂と違って忙しいのだ、時間は有限なのだよ。雨月も、先を越されたくないのなら早く行動に移すことだな」
『…、うん。解った』
「あと、糸鋸刑事が君を探していた」
『えっ、もっと早くいってよ!』
じゃあね、ありがと!
と、慌ただしく駆けていく背中を見送った。
…………ヒロイン視点…………
『はあああ、疲れた』
糸鋸先輩との捜査は難航する。先輩は体力こそあれ、ブレインはあの通り。途中から何故か私が指揮をとっているなんてことはザラ。
まあ、後輩なだけで階級は一緒だし、気にはならないけど。
「あれ、雨月?」
『ん?リュウ君!』
「今帰り?ちょっと遅くない?」
『そう。んー、捜査に時間かかったからね』
「そうなんだ、お疲れ。ご飯は?まだ?」
『まだ。お昼もそこそこだったから、お腹ペコペコ。時間も遅いし、コンビニでなんか買ってこうと思って』
警察署をでて帰路につけば。昼間話していたリュウ君こと成歩堂にばったり出会った。
「時間ある?ファミレスでよければ一緒にご飯にしない?僕もまだなんだ」
『時間は大丈夫。明日非番だし。リュウ君こそ、こんな時間でしょ?何の用事か知らないけど、みぬきちゃんいいの?』
「ああ、僕も調査したところ。みぬきには外で食べてくるっていってあるよ」
『リュウ君もお疲れ。じゃあ、ご一緒しようかな』
ラッキーだな。なんて、頬が緩んだ。
でも、お互い気さくに誘える相手で、友達以上恋人未満。そんな間柄は学生のうちに捨てるべきだった。
タイミングを見失った片想いが限界を訴えて苦しんでいる。
「良かった。ガトがアボカドフェスやってたから、雨月が好きそうだと思ったんだ」
『あ、それCMで見て食べたかったやつ!行こう!』
「はは、急ぐと転ぶよ」
私の好みを覚えてくれてた。そんなことにも浮き足だって、こぼれそうな気持ちを隠すように夜道を駆けた。
『じゃあ、アボカドハンバーグとアボカドサラダ、チーズハンバーグのエビフライプレートでライス付き。ドリンクバー2つで』
「かしこまりました。ドリンクバーはご自由にどうぞ」
一通りメニューを頼んで、ドリンクバーへと足を向ける。
『はい、リュウ君のグレープジュース』
「ありがとう、雨月は?」
『カフェオレ。砂糖とミルク増し増し』
「随分疲れてたんだね」
『まあね』
リュウ君はいつもグレープジュース。無いときは葡萄スカッシュを頼んでいる。
私だって、そのくらいのことは覚えてた。
「よく覚えてたね、僕がグレープジュース好きなのを」
『ん?何年の付き合いだと思ってるの。リュウ君だって、私がアボカド好きなの覚えてたじゃん』
「まあ。フレッシュジュースのお店ではアボカドミルクしか頼まないし、焼き肉の食べ放題でも肉そっちのけでアボカドサラダ食べてたから」
『あー…うん、そりゃ強烈だよね』
アボカド中毒なのかな自分、とも思ったけど。
それだけリュウ君と一緒にいる時間があったんだな、なんてしみじみしてしまった。
『おいしかったぁ』
「それはよかった」
『もう、自分の分は自分で払うっていったのに…今度は私が奢るから。…ハンバーガーとか』
「いいよ、気にしなくて。それに……財布が一緒になればいいと思わない?」
『ん?』
んんんんんんん?
どういうこと?
「ふぅ…。僕達いい歳じゃない?」
『まあ』
「その間ずっと、僕と雨月は一緒に過ごしたわけでしょ?」
『う、うん』
「きっとこの先、雨月以上に気心許せる女性なんて現れないと思うんだ。だから、」
「結婚を前提にお付き合いしてくれませんか?」
ケッコンヲゼンテイニオツキアイ?
リュウ君と?
私が?
『い、今までそんな素振りなかった癖に!』
「え、これだけ食事に誘ったり遊びにいったりしてたのに!?」
『だって!周りにかわいい子一杯いたじゃん、そういう子とも遊んでたでしょ!?』
「…真宵ちゃんとかとのラーメン屋の話をしてるの?どう見ても僕が集られてただろ!あと、雨月以外を僕から誘ったことはないし、自分の意思で食事を奢ったこともない!」
『それは所長としてどうなの!?』
「えええぇ…」
余りにびっくりしすぎて。嬉しいのに、嬉しいのに、素直になれない。
「…で、返事は?」
『…』
「僕をそういう風には見れない?」
ああ、そんな悲しそうに笑うのは反則だ。
『わ、私も、お付き合いを前提に結婚してください!!』
ん?
なんか違くない?
「…まあ、それもありだよね。付き合ってたようなもんだし。みぬきとも面識あるし」
『え?』
「よし、みぬきに報告したら雨月のご両親にも挨拶に行こう」
『ええ!?』
「まさか雨月からプロポーズされるとは思わなかったけど…」
『あ、あれは…』
「僕からも言わせて。」
これからも、僕の傍にいてほしいんだ
『……ふ、不束ものですが、どうぞ宜しく』
「うん、これからも大事にする」
片想いはずっと両思いだったようです。
おまけ
(ところで、こんな時間に調査だったの?)
(ああ、仕事が立て込んでこの時間しか会ってもらえなかったんだ)
(…リュウ君、検事局の方から来たよね?)
(うん。ご推察通り)
(なんでレイくんのとこいったの?)
(雨月が頻繁に出入りしてるって聞いたから、関係を問いただしに)
((わあ、爽やかで黒い笑顔))
(お陰で告白できたんだけどね)
"毎回お前の惚気話を聞かされて迷惑だ。振るか結婚するかどうにかしろ"
(レイくん酷い)
(結婚の報告しにいかないとね)
(…レイくんの眉間のヒビ、増えるだろうなぁ)
御(はっくしゅんっ、花粉にしては可笑しな時期だな……)
Fin