リクエスト2
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《二人一脚》
※逆裁5以降時間軸
『ちょっとお父さん、それ以上眉間のヒビ増やしてどうするの』
「……」
『もう、せっかく娘が退院してきたのにその顔で出迎えるのやめてよね』
「…笑え、という方が無理だろう?私は悔しくて堪らない」
どんな父親だって、程度は違えど娘なら気にかけるだろう。
まして、検事局長である私の娘が、事件の被害者だなんて。
悔やんで当然だろう。
しかもやっと帰ってきた姿が。
『まあ、確かに振袖は綺麗に見えないかもね』
車椅子とあっては。
『っ!?』
酷い痛みが背中に走ったのは、バイトの帰り。
家からそう遠くないコンビニからの帰路。いつもと何一つ変わらないその路地で。
通り魔に襲われた。
骨が軋むような嫌な痛みに支配されて、呼吸もままならなくなった。
(死ぬな、これ)
そう思ったのに、目が覚めたら病院の天井とユガミ検事張りの隈を作った父さんがいた。
父さんが悔しがっている最大の理由は、犯人を有罪にできないこと。
精神薄弱者。
それは、罪を裁かれない人々。
罪を問うても償えない人々。
いくら天才検事といえど、どうにもできなかった。
私を襲った痛みは鉄パイプかなんかで背骨を思いっきり殴られたもの。
脊椎を砕く勢いだったそれは、私の下半身の自由を奪ってしまった。
そして、リハビリやらで座位保持ができるまで回復し、車椅子にのる私を見て。
お父さんは静かに涙を流していた。
『…お父さん、泣き虫だよね』
「昔はこうではなかった」
『なあに、年のせい?』
「違う、お前が泣かないからだ」
『?』
「小さい頃から本当に…」
形容しがたい笑顔だった。
疲れたような、懐かしむような、悔やむような。
それでいて愛しそうに。
「雨月は泣かない子だった、辛くても悲しくても。だから代わりに私が泣く」
『…馬鹿ね、お父さん』
でもその笑顔は、私も同じだ。
『お父さんが泣くから、私は泣かないのよ』
「…」
『ちっちゃい頃、言ってたでしょ?』
"お前が悲しいと、私も悲しくなる"
『だから、私は悲しまないの。犯人が捕まってよかったし、私はこれから車椅子のデコレーションでもして楽しむわ』
「…雨月」
『だから泣かないで、お父さん。私の車椅子、押してくれるでしょ?』
「ああ。押すとも。お前が行きたいところ、どこへでも…」
私の為に泣いてくれる、自慢の父
私の為に笑ってくれる、自慢の娘
二人一脚ではあるけれど
ゆっくりゆっくり
二人の速度で歩んでいく
Fin.
(お父さん、そっち側のタイヤ、そのシール貼って)
(ム、こうか?)
(うわぁ、めっちゃ斜め)
(ぐっ…)
(まあ、それはそれでかわいいからよし。ありがと、お父さん)
End
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