花と蝶 番外
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《梨 ─ナシ─:2020まこたん②》
「ただいま」
『おかえり、遅かったね』
「ああ。いろいろ上手くいかなくてな」
社会人ってのは、融通が利かない。
学生の頃より金は入ってくるが、出費も増えるし休みも減る。
責任は当然あって、付き合いなんてものもついて回る。
『お疲れ様。ご飯とお風呂、どっち先にする?』
同じように働いてるはずなのに、俺より多少帰りが早い雨月は風呂と食事の用意をしていてくれる。
本当に頭があがらない。
「そこはあれだろ、それとも私?ってやつ」
『な…っ////』
そして、玄関まで迎えに来てくれるところ、本当にかわいい。
「ふはっ、真っ赤。風呂でも飯でもいいな、どっちも出来てるのか?」
『あ、うん。ちょうどお魚焼けたとこ』
「じゃあ、飯だな。冷めないうちに」
『わかった。スーツ、着替えてきて』
ポンポンと頭を撫でれば、彼女は赤い顔のままコクコクと頷いて台所へ戻ってゆく。
(俺の嫁がすこぶる可愛い)
あれで、本当に選択肢に雨月があったら迷わず雨月だった。
**********
『…真君、最近疲れてるね』
「今週は急な残業ばっかだからな」
『事前に解らないんだ?』
「早くて午後イチだな。4時とか4時半に仕事が来る。外部待ちの企画だから、こっちからはなんとも」
『うわぁ…お疲れ様。早く落ち着くといいね』
食事も風呂も終わって。
いつもなら、少しテレビを見たり本を読んだりするのだけど。
早々に布団へ潜った。
体力には自信があるけれど、こうも会社に振り回されると精神が疲れる。
ただでさえ、人前では猫被りして、馬鹿な上司や使えない同僚の相手をしているというのに。
幸い残業代は出るし、落ち着いたら有給とって、雨月とどっか出掛けよう。それを楽しみに働いているが。
どのみち、疲れるのは変わらない。
「…そうだな、疲れた」
『うん。真君は頑張ってるよ』
ぽそり、言葉を溢せば。
彼女はそれを掬いあげてくれる。
そして、もぞもぞと布団の中で動いたかと思うと。ぎゅっと、抱き締めるように腕を伸ばして、頭を撫でていた。
「…ふはっ、お前も頑張ってるだろ。お疲れ」
『ふふ、でも、私は真君がいるから頑張れる』
「俺もそうだ。…雨月、」
その温もりが、とても気持ちよくて。
俺も、抱き締めるように腕を伸ばす。
(ハグ何秒で、ストレスが何%減る…みたいな話があったが)
(本当なんだろうな)
(この感覚は、)
~癒し~
「…今日は、品数多くないか?」
『うん、疲れが取れるように色々考えてたらどんどん増えちゃって…デザートもあるの。アセロラゼリー』
「とにかくたんぱく質とクエン酸だってことは伝わった」
翌日の夕飯は、気を使われてるのが解る代物。弁当だって、喉を通りやすいようにと麺を持たせてくれた。
『お風呂も入浴剤用意したから使って』
「そんなに疲れて見えるか」
『見える。真君、本当に疲れてるときは愚痴すら言ってくれない』
「………」
『吐いても解決しないって、真君はすぐ理解しちゃうもんね。でも、仕事は手伝えなくても真君のサポートはできるんだから、我が儘いってよ、ね?』
それだけ尽くしておいて。
彼女はまだ、そうやって笑う。
「…残業明けたら、デートしよう」
『…勿論。…それ、私へのご褒美だね』
「お前は行きたいとこ考えておけよ。どこでもはナシだ」
『わかった。楽しみに考えとく』
はにかむ彼女と夕食をとって、微発泡の風呂に浸かって。
今日も早々に布団に潜る。
「…」
『ぅわ、…ふふ、甘えん坊』
背中から、先に布団に入っていた彼女を抱き寄せた。
彼女は擽ったそうに笑って、背中を預ける。
「………抱き枕があるとよく眠れるらしいからな」
『そうなんだ。抱き枕も、抱き締めてもらえるとよく寝れるよ』
「ふはっ、枕も寝るのな」
ちょっと間の抜けた彼女。
こいつの前では何も飾らなくていいし、取り繕わなくていい。
求めることに躊躇もいらない。
『ねえ、お休みになったら…抱き枕デートする?』
「ああ、1日こうやって、布団でぐずぐずしてるのもいいな」
((週末が、待ち遠しい))
fin.