花と蝶 番外
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《榛 ─ハシバミ─∶2020まこたん①》
「お前らって喧嘩しないの?」
それは、山崎がふと問い掛けた言葉。
「しないな」
『しないね』
俺も雨月も揃って首を振る。
「はあー、俺なんて会うたび喧嘩してるけどね」
「月に1回は別れるって言ってるしな」
「結局別れないで仲直りしてるが」
溜め息を吐いているのは原。
カノジョと会う度に喧嘩して、3回に1回のペースで別れを切り出されている。
実際に2回別れて、2回よりを戻した。
今回も喧嘩の報告と愚痴を聞いていた山崎が、"もう飽きた"と言わんばかりに俺達に話をふった。
「よくそんなに喧嘩する題材あるな」
『今回は何だっけ?』
「部活だからその日デート無理って言ったら激オコ」
「そうだな。デートで部活サボったら俺が激オコだわ」
「花宮の激オコうける」
大体いつもそんな内容だ。
約束した日に会えないとか、お揃いで買ったストラップ付けてないとか。
違うクラスの女子と仲良く喋ってた…とかも結構ある。
『…ふふ』
「えー、なに羽影ちゃん、笑う?女子目線だとどうなのコレ」
それを聞いて、雨月が可笑しそうに笑った。
『そんなの、彼女さん、原君のこと大好きなんだなって』
「へ…?だって、もうこの後バカ阿呆クズって怒涛の罵倒なんだよ?」
『恥ずかしいだけだよ、きっと。凄くデートしたかったんだね、怒っちゃうくらい期待してたんだよ』
「えー…ストラップとかも?」
『いつも一緒にいたい、って意味でお揃いにしたんじゃない?引き出しに大事に仕舞うんじゃなくてさ』
「…ねえ、何で引き出しに入れてるの知ってるの」
「……」
「あ、花宮が引き出しに入れるタイプ」
俺まで飛び火してるが、まあ、気持ちは解る。なくしたくない、とか、傷つけたくない、って思ってしまいこんでも。
彼女からしたら『それが、私の代わりに守ってくれるから』って。お守りみたいな感覚らしい。
『原君だって、彼女さん大好きだもんね?』
「………まあ、好きじゃなかったらヨリ戻さないよね」
『じゃあ、喧嘩するのもいいんだよ。お互いの意見いっぱい言って、解り合おうとするのが、原君たちなんじゃない?』
「…けど、今回はどうにもなんなくね?部活サボったら花宮が、ブフ、激オコwwらしいし」
「笑う余裕があるんだな。プンプン丸まで付けとくか」
「ねえもうシリアスさせてよ!」
「何でどうにもならないんだ?別の日じゃだめなのか?」
茶番を眺めていた古橋が、話を戻す。
「…その日ねぇ、アニバーサリーなの」
「あー…」
「なるほど」
付き合って何周年…とか、記念日好きな奴いるもんな。
『大丈夫だよ。それ、覚えてて欲しかっだけだと思うから』
「本当に?」
『うん。1日デートは出来ないけど、少しでも会えれば幸せだと思うよ。電話でもいい、1年一緒に居れて幸せだった…そう思いたい、伝えたいんじゃないかな』
「……ん、じゃあ、考えてみる」
「良かったな、羽影いて」
「それな。…花宮愛されてるわーって胸焼けしたけど」
原の件が落ち着いて、視線はまた俺達へ。
「あ?」
「その、お揃いのキーホルダー。そんだけ一緒にいて、まだ足りないってことだろ?」
『うん。私が頼んだの。ずっと、一緒に居たいっていう、願掛けで』
「花宮がそれを飲むから喧嘩にならないんだよな」
「羽影さんも素直に頼むしな」
確かに、俺達は喧嘩をしない。
お互い必要不可欠な存在なんだ、無駄に争うことは避ける。
意見の尊重もあるし、価値観の理解もある。
『ううん、真君が優しいから喧嘩しないの』
「はあ?どこが」
『えー?全部だよ、全部』
それは、優しいとは違うと思うが。
「俺達には羽影が優しいように見えるんだが」
「……あれは、ああやって上手く収まってるんだろう」
「当人たちと、端からじゃ見え方違うのかもね」
~調和~
「…雨月は、記念日とか言わねえよな。誕生日は張り切る癖に」
『え?ああ、付き合い始めた日とか、初デートの日とか覚えてるけど…。私は、真君に会える日はみんな特別なの。全部名前つけたらキリがないよ。だから真の誕生日に、その感謝とかお祝いとか全部詰め込んでる』
「……ああ、そう」
『…アニバーサリー、したかった?』
「したかった、わけじゃないが。…そうだな、俺達は記念日が多すぎるな」
『始まりは、窓を越えて真君が一緒に寝てくれた日』
「雨月がうどんを作ってくれた日」
『それが真君のお母さん公認になった日』
「………依存が明白になった日」
『それが恋になった日?』
「なんで疑問だよ、告白しただろうが」
『ふふ、なんか擽ったくて』
「…そうだな、恋人になった日」
『ファーストキスは、真君の誕生日と一緒』
「家族になった日は、お前の誕生日だな」
『…ふふ、やっぱりキリがないね』
「そうだな」
((ああでも、))
((結婚記念日ができたら))
((それは祝いたい))
~一致~
fin.