花と蝶 番外
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《コチョウラン:2019まこたん⑥》
銀婚式、結婚25周年を迎えた私達は。
特に旅行をするでもなく、豪華なレストランに出かけることもなく。
のんびりと家のソファーで寛いでいた。
「こうやって25年過ごしたと思うと、案外早かったな」
『そうね。もう平均寿命の半分は生きちゃったよ』
コーヒーを淹れて、クッキーを焼いて。
それをお供に談笑する。
「そうか、人生もあと半分か」
『やり残しが無いようにしないとね』
「これといって無いんだよな。今仕事してるのだって、お前との生活を維持するためだし」
『じゃあ、老後の楽しみは?』
「…考えてなかったな。雨月は?やり残したこと、老後にしたいこと」
お気に入りの音楽、懐かしい音楽を流しながら。
二人しかいないのに、囁くように会話した。
『私も、やり残したことはないかな。明日も真君の隣で目が覚めれば、それだけでいい。仕事が無くなったら、また一緒に居られる時間が増えるね』
「……そうだな。じゃあ、せいぜい長生きしないとな」
『うん。健康で、長生きね』
少し白髪の混ざってきた真君は、少しシワの出てきた私の肩を、今でも抱き寄せてくれる。
「…やり残したことはないが、あと半分しかお前と居られないのは……短ぇな」
『もっと長生きするよ、私も、真君も』
「それでもだ。……ふは、永遠なんて要らないと思ってたのにな」
頬を寄せて、抱きすくめる彼は。
私と吐息を重ねる。
「儚いから美しいとか、終わるから愛しいとか、それが解らない訳じゃない。花は散るから咲いた時が美しく思う、季節は移ろうからその一瞬が愛しくなる。……でも、その儚さを、終焉を、いつまでも見ていたいと思うんだよ」
『…』
「雨月となら、な。永遠があればいいと思う。変わらないものが欲しいと思う」
私は、息を詰まらせて。
返事が出来ないでいる。
この幸せが、あと半分続くと思っていたけれど、それは、いつか終わるという恐怖に変わってしまったのだ。
「…そんな顔するな。今すぐ終わる訳じゃない」
『……うん』
「それにな、俺は雨月の隣では永遠を感じるんだ。だから、終わりだと思う瞬間は終わりじゃない。また、どこかで、俺達は始まるんだと思う」
彼はそう、本気の声色で言ってのけた。
それから、私の左手をとって、薬指を撫でる。
「俺のせいでしんみりしちまったが…まあ、これからも宜しくな」
マリッジリングに重ねて、シルバーのエターナルリングが嵌められた。
『…銀婚式……だから?』
「ああ。金婚式はゴールドだ。楽しみだろ?」
彼の左手にも、同じものがあって。
『うん。……ありがとう、これからも宜しくね』
~永遠の愛、変わらぬ幸せ~
(私も、真君となら、永遠を感じられる)
(体が朽ちても、この想いは変わらない)
『愛してる』
「俺も、愛してる」
fin
花:コチョウラン
~永遠の愛、変わらぬ幸せ~
食:コーヒー