花と蝶 番外
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《three:2018はなたん①》
「誕生日、有給とっとけよ」
そう言われたのは数ヶ月前。
今年、24歳になる私の誕生日は月曜日で、3連休にしろ…とのことだった。
『うん。ね、どっか行くの?』
「そのつもりだが…したいことがあるなら先に言え。お前の為の日だからな」
『私は…真君がいればなんでもいいよ』
「それは大前提だろ。お前の誕生日、俺以上に尊く思ってる奴がいてたまるか」
その話をしたとき、彼にはお酒が入っていたけど、本当のことらしいので楽しみにしていて。
誕生日まで1ヶ月になると、彼は情報をくれた。
「…金曜の深夜に出て、土曜の夜から二泊三日。月曜の昼に帰ってくる」
『行き先は?』
「秘密。ああ、飛行機使うぞ。小さいが船にも乗る。あとは…歩くな、履き慣れた靴がいい」
『暖かいとこ?寒いとこ?』
「暖かいな。だが風もあるし雨も降るかも知れない、羽織るものは持ってけよ」
これだけ。
どんなに聞いても地名は教えてくれなかった。
「どうせ当日の飛行機でわかるだろ?なんなら空港も目隠しとイヤホンしてやるけど」
『…それは嫌です』
「だろうな」
私はパスポートを持ってないから、海外ではない。
暖かい国内…沖縄とか?
さて、そんな話をしてから早くも1ヶ月。
金曜の、夜。
『ただいま』
「おかえり。風呂は沸かしたから、先に入ってこい」
『ありがとう、冷蔵庫に麦茶あるから飲んで』
「ああ」
帰宅すれば既に真君は風呂上がりで、私は二番風呂に浸かる。
なんだか落ち着かなくて直ぐに出てしまったけど。
洗濯機を回して、三日家空けるしな…と、浴槽を洗う。
それなりに髪にドライヤーをあててリビングに戻れば、真君がテーブルに皿を並べていた。
『うわ…おしゃれ』
「移動前だから軽めにしたが…足りるか?」
『十分』
チーズトーストと、オニオンスープ。
これだけ聞くとシンプルだけど、スープに星形の人参が飾られている。
それからチーズトースト。うちには市販のパンは無く、ホームベーカリーを使って焼いているのだけど。今はその作り置きが無かった。
『パンも焼いたの?』
「いや。残念ながらパンは手作りじゃない。職場で旨いって評判の店があってな、そこのだ」
これが手抜きじゃないのを、私は知ってる。
私が、美味しいパンを作れるようになりたいと、最近市販のパンを買っているから。
逆に言えば、それ以外は手作りなわけで。
チーズトーストにパセリを振ったところとか、気遣いを感じる。
『そうなんだ…美味しそう』
「召し上がれ、ドリンクはジンジャエールだ」
『…写真撮らなきゃ、勿体ない』
「ふは、SNSやってねぇのに」
『いいの!』
笑われながら夕飯の写真を撮った。
確かにインスタとかブログとかやってないけど、残しておきたかったから。
まして、食べ進めたら
『…!』
「…」
ハート型の人参もスープから出てきて。
また携帯カメラを構えた。
真君は苦笑いしながらも嬉しそうだった。
(まだ誕生日始まってないのに)
(もうこんなに幸せ!!)
「仮眠しろよ、タクシー呼んであるから、それで空港いくぞ」
『ね、え。楽しみ過ぎて寝れないかも』
「…いや?お前は寝れるさ、俺が隣にいれば一瞬でな」
肩を抱き寄せられたソファー、
おやすみ
と柔らかな声がして。
本当に一瞬で眠りに落ちた。
(……)
(……本当に一瞬かよ)
(安心しすぎだ、バカ)
before three days
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