赤の似合う君と
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07
《サヨナラの逆転の裏で》ヒロイン視点
12月25日
「羽影検事!御剣検事が、御剣検事がっ!!」
『その件は…聞いてるよ、糸鋸刑事』
「羽影検事!頼みがあるっス!!この事件の裁判の検事をあなたに…」
『その件は狩魔検事に任せた』
「な、なんでっスカ!?御剣検事なら絶対無罪っス、しかし、このままでは有罪になってしまうっス!」
『解ってるよ』
不思議なことに、こんなに落ち着いていられるとは思わなかった。
「なら、どうして…」
『私は違う方向から彼を助けなければならない。もし私が裁判に立ったら…』
"真実が眠ってしまうかもしれないからね…"
飲みかけの紅茶を一気に啜って、口紅を差す。
「羽影検事…」
『弁護はどうせ彼に頼むんだろ?なら大丈夫だよ』
妙な胸騒ぎがする。早く、沢山の情報がいる。何か。何か裏がある気がしてならない。
糸鋸刑事の話だと、怜侍は成歩堂君の弁護を断ったとか。
『成歩堂君』
「あなたは!!」
「なるほど君、知り合いなの?」
『久しぶりだね、真宵ちゃん…』
留置所を出かけた成歩堂君を呼び止める。
『頼みがあるの…御剣君を…助けてほしい』
「…言われなくても、そのつもりですよ」
『うん、そう言ってくれると思ってた』
「検事は雨月さんがやるんですか!?」
『いや…もっと手強い人だよ。でも、私も力になる、困ったらおいで』
ヒラヒラと手を振って再び留置所へと戻る。
そして、慌てる看守を捩じ伏せ、留置所のガラスを隔たない方。彼と同じ部屋に入る。
「!羽影検事…」
『大変な事になったね、御剣君』
「こんな姿…貴女には見られたくなかった…っ」
目を伏せて顔を背けた彼。痛々しさがひしひしと伝わってくる。
『今回の裁判の担当検事の事なんだけどね』
「まさか…」
『いや、私じゃない。狩魔だ』
「狩魔検事…」
『私は私に出来る事を最大限にやる。だから御剣君も諦めないで』
「すまない…雨月……ぁ」
しまった。という顔をしている。
下の名前で呼ぶことの意味を悟ったのだろう。素知らぬふりをしてくれていた看守も目を丸くしていた。
私は気にしないけど。
『怜侍…』
クッと、彼の顎を持ち上げる。彼が座ってるからこそできる。
ゆっくり顔を近づけていくと、ひどく狼狽する彼。
『ふふっ、うろたえすぎ。本気にしないでよ』
ぎゅうっと抱きしめると、紅くなって何やらもごもご言っている。
看守は見ないふりを決め込んでくれているようだ。
『ファーストキスが留置所なんて、私嫌だもん』
耳に口を近づけて呟けば、体を固くした。
『あんまり待たせないでよ?』
そう付け加えて身を引こうとした。そしたら、腕を強く捕まれた。
「弁護は成歩堂に頼もうと思う」
『賢明だね。彼には力を貸すよ』
「……助かる」
用件は終わらないようで、腕が離されない。
『怜侍…?』
「クリスマスは駄目だったが、正月は一緒に過ごそう」
『…そうだね。初詣も、一緒に行こうか』
にっこり。朗らかに笑い、看守にお礼を言って立ち去る。調べなきゃいけないことは山積みだ。
私と入れ代わりで来た成歩堂君に弁護は依頼したみたい。
明日の裁判、どうなるか……
12月26日
法廷が始まり、傍聴席から裁判を眺める。
唇には紅い口紅、大事な時はこれをつける。この口紅の勝利のジンクスは未だ崩されていない。
序盤から、狩魔検事の責めは激しかった。
真宵ちゃんが動いてくれなければ、どうなっていただろう。
「成歩堂、彼女に伝えてくれ…」
成(素直じゃないなぁ)
真宵ちゃんが、怜侍を救ってくれた。
彼女の釈放手続きは私から口添えをして、保釈金は怜侍が払うことになった。
『御剣君、真宵ちゃん釈放されたよ』
「…そうか」
『今、成歩堂君と調査に行ってくれてる。私に出来ることは、糸鋸刑事を通していろいろな権利を与えるくらい』
「あいつなら、それで十分だろうな」
『明日もハラハラする裁判になりそうだけどね』
意地悪く笑ってみせると、む、と眉間を寄せた。
『私もいろいろ立ち回ってくるから、君も最後まで戦うんだよー』
ヒラヒラと手を振って立ち去る。資料室の鍵をキープしなきゃだし、アイツらの行動も把握しないと。
あと二日。
眠らせてなるものか。
.
12月27日
今度は矢張さん、という人が裁判を救ってくれた。
御剣君の友達は、皆彼の為に尽くしてくれる。
今、御剣君は成歩堂君と何やら話している。
そしてその後、成歩堂君に話した悪夢の事を私にも話してくれた。
『…君を繋ぐ鎖は…、酷く重たいね……』
「…」
『…でも』
「?…な、」
また、無理をいってガラスを隔てない方へ来ていた私は、彼を抱き寄せた。
『その鎖は、私と成歩堂君と真宵ちゃんで打ち砕くよ。必ず、必ず』
「羽影検事…」
彼に届くように、まっすぐな声で語る。
「だが、私が罪を犯したことに変わりはない」
『どうかな?』
「?」
『私はね、黒幕がいると思うんだ。15年間君を苦しめた悪魔が、今回も君を苦しめているんだと…』
腕に力を込める。
彼の苦痛を、私に話してくれたんだ。
これ以上、苦しめさせてたまるものか。
困ったように、辛そうな顔をする彼を放っておきたくない。…でも。
『…行く所があるから…。これで帰るね。明日、頑張って』
もう一度腕に力込めてから、部屋をでた。
狩魔と、管理人と、成歩堂君と真宵ちゃん…彼らと話さないと。
資料室へ向かいながらそんな事を考える。
明日で全てが終わるように………。
.
12月28日
「僕は君の無実を信じてるから」
『全て揃ってる、これで最後だよ』
張り詰めた空気。酷い悲鳴が木霊する中、無罪判決が響いた。
「こういう時は"ありがとう"っていうんだよ」
「そうか…あ、ありがとう成歩堂」
「ど、どういたしまして」
『私からもありがとう、成歩堂君、真宵ちゃん』
「うおぉっス!御剣検事!羽影検事!」
『糸鋸刑事、刑事もありがとう。これで皆でお祝いしてきて』
「いいんスか!」
糸鋸刑事にお金を渡して、再び裁判所へ向き直る。
「雨月さんは行かないんですか?」
『私はこれから狩魔の裁判だから』
「貴女が検事を…?」
『まあね。手筈は整えてあったし、手元に証拠は山ほどあるし』
悪戯っぽく、ファイルから証言書やDVDを見せる。
「それは?」
『資料室の録画。これで殺人罪、殺人補助罪、傷害罪、偽証罪、いっぱい訴えられるから。時間かかりそうだよ』
皆でちょっと笑って。
御剣君の方を向く。
『本当におめでとう』
「あ、ありがとう」
また裁判所に戻って、戦った。私の紅い口紅は、勝利のジンクス。
このジンクスは、今でも破られない。