人外霧崎とわちゃわちゃ
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人狼山崎と春にわちゃわちゃ
※人外霧崎 山崎落ち独立ストーリー
陽気がぽかぽかと暖かくなって来た頃。
春眠、暁を覚えず……と言わんばかりに私は熟睡していた。
その微睡みから引き摺り出したのは、玄関をノックする少し乱暴な音と
「[#dn=2#]ーっ!いるかー?」
私の名前を呼ぶ元気な声。
『おはよう、弘。朝からどうしたの?』
その声に応えて玄関を開ければ、オレンジ色の髪をした少年が立っていて。
屈託のない笑顔をむけてくれた。
「お花見、行こうぜ!」
目を丸くする私に、彼は山桜を見に行こうという。
桜なんてこの山にあったのかと考えていれば
「取って置きの場所に連れてってやる。人間で教えるのは[#dn=2#]が初めてだ」
と、今にも手を引いて駆け出しそうな勢いだ。
『ありがとう、行くよ、是非連れてって……でも、折角だから準備しよう』
「準備?なんの?」
『お弁当。お花見には美味しいご飯がつきものでしょ』
そんな彼も、そう伝えれば目を輝かせて頷く。
「そうだな!俺もなんか手伝う」
とは言え急に決まったお花見だ。
大した材料はないけど、買いにいくのは時間の無駄。
あるもので、おいしく、手軽に。
『…よし、ホットドッグと果物と…お菓子と水筒』
「できたか?歩きやすい靴選べよ、結構人間には大変な場所だから」
言うや彼は犬…じゃなくて狼の姿になる。
その方が彼にとっては歩きやすいようだった。
『弘、待って』
リュックを背負って彼の後ろを追う。
森林の坂道から、岩場まで。
で、岩場を越えると山の中なのに下り坂…窪地になっているところがあった。
『うわ…』
その狭い窪地に桜が密生している。
確かに、麓からは見えないとっておきの場所だ。
『え、くだるの?』
「ガウッ」
この桜は、上から見るのではなく下から見るものらしい。
大きめの岩が転がる坂をゆっくり下って弘を追う。
「…大丈夫か?」
『うん、大丈夫』
窪地の真ん中。
桜の根が蔓延って平らではない底面に、そこだけ座れそうな平地があって。
「ここから見上げるんだ」
と、人の姿になり、上を見る弘に倣う。
『…綺麗』
桜の、天井。
一面のピンクが空を覆っていた。
「な、いいだろ?」
『うん』
窪地のせいか風も少なく、穏やかで静か。軽やかに舞い落ちてくる桜の花弁がとても美しい。
ぐぅぅ。
『…!』
「あ…わりぃ」
『あはは、いいよ。ご飯にしよっか』
そんな空気を弘のお腹の音が裂いて。
可笑しくってたまらない。
罰が悪そうな弘に、やっぱりクスクス笑いながら。
私はリュックから食べ物を取り出す。
『もっといっぱい作ればよかった。こんな素敵な場所連れてきてもらったのに、お礼になるかな』
「十分じゃね?てか食っていい?」
『勿論』
ちゃんと「いただきます」と手を合わせるところが可愛い。
それから、彼はあんまり美味しそうに食べてくれるから。
もう見てるだけで幸せだった。
「これは逆に俺が貰い過ぎた気がするな」
『そんなことないよ』
「そうか?急に言ったのにこんなに用意してくれたんだぜ?お前本当最高」
次々空になっていくお弁当箱。
見ていて気持ちがいい。
『弘になら、いくらでも作ってあげられる気がする』
他人の努力を、自然に労える彼となら。
努力することに疲れることなく生きていけそうだ。
彼の笑顔は、そういう力がある。
「……っ、その顔、やめろよ」
『え?』
「…照れる…だろ、」
どうやら、私が弘に向けた顔は。
彼を照れさせる力があったらしい。
『照れればいいじゃん。なんで恥ずかしいのかわからないけど』
「は?そんなの可愛かったからに……あ」
『……自分の言葉に照れてるんじゃ世話ないじゃん。……でも、嬉しいよ、可愛いなんて……随分言われてないもの』
「…」
彼は、赤い頬できょとんとこちらを見ていた。
それから、ふいっと視線を逸らして
「……[#dn=2#]は、可愛い。それに、優しい。料理も上手い」
『…』
「いいとこいっぱいあるんだから、寂しそうな顔するなよ。そんな顔すんなら、さっきみたいに笑ってくれた方がいい」
頬を掻きながらそう呟く。
『…ありがとう。弘も、優しくてかっこよくて、温かいよ』
人の言葉の温かさを感じたのは、いつぶりだろう。
変人、付き合い悪い、暗い、冷たい。
今まで、そんな言葉の方がずっと多かった。
「!……っ、やっぱ、その顔駄目だ」
『え…』
「好きになるだろ、馬鹿」
恥ずかしさに耐え兼ねてか、弘は狼の姿になって伏せてしまった。
『私も、弘のこと好きだよ。好きになっちゃダメなの?』
「…」
『……別に、関係に特別な名前なんて要らないでしょ。私は弘が好きだし、弘が私を好きでいてくれるなら…会う理由も一緒にいる理由も、好きだから、で済むだけじゃない』
彼の背中に腕を回すようにして、胴に頭と背中を預けて寄りかかる。
呼吸に合わせて上下する腹と、聞こえてくる心臓の音が心地よい。
『…弘、好きになってよ』
そう、告げれば。耳がピクリと動いて、突然ムクリと起き上がった。
『わっ』
「……言われなくてもな、好きでもないやつにこの場所教えてやるほど優しくねぇんだよ」
人の体と成した彼は仰向けになり、突然体積の変わった彼についていけなかった私はそのまま彼の胸に寝そべった。
『優しいよ』
「あのなぁ…」
『私に優しい。そういう弘を、好きになった』
「くはっ、ありがとな」
俺も[#dn=2#]、大好きだ。
私を抱き寄せながら明るく笑う彼が、とても眩しい。
私はその眩しさに目を細めて、好き…と反復する。
「…だから、その顔駄目だっつってるのに……」
そして、ヒラヒラとゆっくり落ちてくる桜の花弁が。
私の背中に、彼の髪に積もるまで。
ずっと笑いあっていた。
Fin
「じゃあ、夏は水が涌き出てるとこ行こうぜ。秋はアケビがなるとこ、冬は…雪だるま作ってみたい」
『うん、そうしよう。夏はスイカ切って、秋は焼き芋して、冬は…鍋でもしよっか』
「楽しみだな」
『その前に目の前の桜、堪能しようよ』
「それもそうだ」
Fin.
※人外霧崎 山崎落ち独立ストーリー
陽気がぽかぽかと暖かくなって来た頃。
春眠、暁を覚えず……と言わんばかりに私は熟睡していた。
その微睡みから引き摺り出したのは、玄関をノックする少し乱暴な音と
「[#dn=2#]ーっ!いるかー?」
私の名前を呼ぶ元気な声。
『おはよう、弘。朝からどうしたの?』
その声に応えて玄関を開ければ、オレンジ色の髪をした少年が立っていて。
屈託のない笑顔をむけてくれた。
「お花見、行こうぜ!」
目を丸くする私に、彼は山桜を見に行こうという。
桜なんてこの山にあったのかと考えていれば
「取って置きの場所に連れてってやる。人間で教えるのは[#dn=2#]が初めてだ」
と、今にも手を引いて駆け出しそうな勢いだ。
『ありがとう、行くよ、是非連れてって……でも、折角だから準備しよう』
「準備?なんの?」
『お弁当。お花見には美味しいご飯がつきものでしょ』
そんな彼も、そう伝えれば目を輝かせて頷く。
「そうだな!俺もなんか手伝う」
とは言え急に決まったお花見だ。
大した材料はないけど、買いにいくのは時間の無駄。
あるもので、おいしく、手軽に。
『…よし、ホットドッグと果物と…お菓子と水筒』
「できたか?歩きやすい靴選べよ、結構人間には大変な場所だから」
言うや彼は犬…じゃなくて狼の姿になる。
その方が彼にとっては歩きやすいようだった。
『弘、待って』
リュックを背負って彼の後ろを追う。
森林の坂道から、岩場まで。
で、岩場を越えると山の中なのに下り坂…窪地になっているところがあった。
『うわ…』
その狭い窪地に桜が密生している。
確かに、麓からは見えないとっておきの場所だ。
『え、くだるの?』
「ガウッ」
この桜は、上から見るのではなく下から見るものらしい。
大きめの岩が転がる坂をゆっくり下って弘を追う。
「…大丈夫か?」
『うん、大丈夫』
窪地の真ん中。
桜の根が蔓延って平らではない底面に、そこだけ座れそうな平地があって。
「ここから見上げるんだ」
と、人の姿になり、上を見る弘に倣う。
『…綺麗』
桜の、天井。
一面のピンクが空を覆っていた。
「な、いいだろ?」
『うん』
窪地のせいか風も少なく、穏やかで静か。軽やかに舞い落ちてくる桜の花弁がとても美しい。
ぐぅぅ。
『…!』
「あ…わりぃ」
『あはは、いいよ。ご飯にしよっか』
そんな空気を弘のお腹の音が裂いて。
可笑しくってたまらない。
罰が悪そうな弘に、やっぱりクスクス笑いながら。
私はリュックから食べ物を取り出す。
『もっといっぱい作ればよかった。こんな素敵な場所連れてきてもらったのに、お礼になるかな』
「十分じゃね?てか食っていい?」
『勿論』
ちゃんと「いただきます」と手を合わせるところが可愛い。
それから、彼はあんまり美味しそうに食べてくれるから。
もう見てるだけで幸せだった。
「これは逆に俺が貰い過ぎた気がするな」
『そんなことないよ』
「そうか?急に言ったのにこんなに用意してくれたんだぜ?お前本当最高」
次々空になっていくお弁当箱。
見ていて気持ちがいい。
『弘になら、いくらでも作ってあげられる気がする』
他人の努力を、自然に労える彼となら。
努力することに疲れることなく生きていけそうだ。
彼の笑顔は、そういう力がある。
「……っ、その顔、やめろよ」
『え?』
「…照れる…だろ、」
どうやら、私が弘に向けた顔は。
彼を照れさせる力があったらしい。
『照れればいいじゃん。なんで恥ずかしいのかわからないけど』
「は?そんなの可愛かったからに……あ」
『……自分の言葉に照れてるんじゃ世話ないじゃん。……でも、嬉しいよ、可愛いなんて……随分言われてないもの』
「…」
彼は、赤い頬できょとんとこちらを見ていた。
それから、ふいっと視線を逸らして
「……[#dn=2#]は、可愛い。それに、優しい。料理も上手い」
『…』
「いいとこいっぱいあるんだから、寂しそうな顔するなよ。そんな顔すんなら、さっきみたいに笑ってくれた方がいい」
頬を掻きながらそう呟く。
『…ありがとう。弘も、優しくてかっこよくて、温かいよ』
人の言葉の温かさを感じたのは、いつぶりだろう。
変人、付き合い悪い、暗い、冷たい。
今まで、そんな言葉の方がずっと多かった。
「!……っ、やっぱ、その顔駄目だ」
『え…』
「好きになるだろ、馬鹿」
恥ずかしさに耐え兼ねてか、弘は狼の姿になって伏せてしまった。
『私も、弘のこと好きだよ。好きになっちゃダメなの?』
「…」
『……別に、関係に特別な名前なんて要らないでしょ。私は弘が好きだし、弘が私を好きでいてくれるなら…会う理由も一緒にいる理由も、好きだから、で済むだけじゃない』
彼の背中に腕を回すようにして、胴に頭と背中を預けて寄りかかる。
呼吸に合わせて上下する腹と、聞こえてくる心臓の音が心地よい。
『…弘、好きになってよ』
そう、告げれば。耳がピクリと動いて、突然ムクリと起き上がった。
『わっ』
「……言われなくてもな、好きでもないやつにこの場所教えてやるほど優しくねぇんだよ」
人の体と成した彼は仰向けになり、突然体積の変わった彼についていけなかった私はそのまま彼の胸に寝そべった。
『優しいよ』
「あのなぁ…」
『私に優しい。そういう弘を、好きになった』
「くはっ、ありがとな」
俺も[#dn=2#]、大好きだ。
私を抱き寄せながら明るく笑う彼が、とても眩しい。
私はその眩しさに目を細めて、好き…と反復する。
「…だから、その顔駄目だっつってるのに……」
そして、ヒラヒラとゆっくり落ちてくる桜の花弁が。
私の背中に、彼の髪に積もるまで。
ずっと笑いあっていた。
Fin
「じゃあ、夏は水が涌き出てるとこ行こうぜ。秋はアケビがなるとこ、冬は…雪だるま作ってみたい」
『うん、そうしよう。夏はスイカ切って、秋は焼き芋して、冬は…鍋でもしよっか』
「楽しみだな」
『その前に目の前の桜、堪能しようよ』
「それもそうだ」
Fin.