人外霧崎とわちゃわちゃ
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一つ目の原とわちゃわちゃ
最寄り駅に降りたら、霧が出ていた。
終電だったのもあって客は私だけ。
なのだけど、その小さな駅に少年が一人で座っている。
私が乗ってきたこの電車は終電だし、ここは終着駅だ。
いくらここらの終電が早いとはいえ夜中。誰かの迎えを待つにしても、時間が遅い。
『……』
無視しようかと思った。髪の毛も薄紫だし、なんかファンキーだし。
でも、もしなにか起きて、後味悪いのも嫌だ。
『…君、どうしたの』
「んー?ちょっと家出」
『ここはもう終電終わって暗くなるよ。せめて街の方にいったら?』
「えー…人がいるとこのが怖い」
たったこれだけの会話。
前髪に隠された目線は此方を多分見ていない。
それに、親近感を覚えた。
…人と関わることに、きっと、ちょっと疲れてる。
『…うち、来る?』
「は?」
『まあ、山の中のボロ家だけど。霧も出てるし屋根あるとこのがいいでしょ』
「いいの?」
『うん』
そこから、山道を30分かけて登った。
その間に彼が原一哉という名前で、友人や家族と喧嘩したのだと聞く。
『一哉は友達いるんだね』
「バカにしてんの?」
『まさか。私は友達いないから。喧嘩するのも気を遣うのも面倒がってたら独りになっちゃった』
「…」
『別にいいけど。でも、喧嘩になるくらい意見を言い合える相手なんでしょ?仲直りもできるよ』
「…そだね」
家について、お風呂やご飯を一通りおえれば、一哉から視線を感じる。
『なに?』
「無防備だなーって」
『そう?あ、風呂使う?』
「俺はいい。てか、初対面のやつ部屋に置いて風呂とかよく入れんね」
『盗まれるようなものないし。襲われる程美人でもないし』
「それが無防備」
リビングのカーペットに腰を降ろして、一哉に座布団とタオルケットを渡す。
「え?」
『うち布団ないんだよ。この前カビて捨てちゃったから、それ使って』
「ここで一緒に寝る気?」
『え、ダメ?』
視線は見えないけど、溜め息の盛大さで呆れられたのが解った。
「無防備、無頓着」
『確かに大概のことは気にならないかなぁ。私自身に興味ないし』
「……変わり者って言われるでしょ」
『まあね。人と違うって言われるけど、それすら興味ない。違うのがどう悪いことなのか解らないし、誰も納得できる説明出来なかった』
「……ねえ。口固い?」
『話す相手がいないから解んないな。なんで?』
「んー…俺の秘密、教えようかなって」
『秘密にしなくていいの?』
「雨月になら、教えたい」
座布団に座って、タオルを被った彼は、口元をちょっと緩めて。目元を覆う前髪を持ち上げた。
「俺ねー、一つ目なんだ」
『………可愛い』
「へ?」
『モノアイ?目おっきいね。これ、何色っていうの?黒…じゃないな…青?紫?もっとよく見ていい?』
彼は、本来二つの目がある場所の真ん中、鼻筋の上に、大きな目が一つあるだけだった。
その目は黒に見えるのだけど、光の反射で青にも緑にも見えて、とても綺麗。
余りに夢中で見入っていたら、一哉に手で押し返された。
お陰で、また前髪が彼の目を隠してしまう。
「…、興味ないんじゃなかったの」
『大体はね。でも、そんな綺麗なのに興味持つなってのは無理かも』
「きれい…?怖くないの?」
『うん』
「…気持ち悪くない?」
『別に?珍しいとは思うけど』
「……」
『ね、もう1回見せてよ。一哉の目、凄く綺麗だから』
怖いとか、気持ち悪いと言われたことがあるんだろうか。
それとも自分で思い込んでるんだろうか。
自分と他人の容姿の違いはそんなに大事なのか、私には解らない。
「……そんなこと、言われたことなかった」
『そうなの?』
彼はゆっくり、また前髪を上げてくれる。
その頬に手を添えて、瞳を覗きこんだ。
『…こんなに綺麗なのにね』
「だって、キモイって言われた。怖いって言われた」
『…そっか。それは、痛かったね』
だから嫌なんだ、人間は。
こんなに綺麗なものを淘汰してしまう。
『私は怖くもないし、気持ち悪いとも思わないよ』
「…」
『でもさ、視野とか狭くて困ったりしない?』
覗き込んだままいれば、一哉はゆっくり瞬きをして。
楽しそうに笑ってみせた。
「俺の目はね、人なんかよりずっとよく見えるんだよ。視野とか距離とか関係なく。見ようと思えば心の中まで」
キラキラと、瞳が輝く。
ビロードみたいだ。もしくは万華鏡。
「ごめんね、雨月の心の中、見ちゃった」
『…、どうだった?』
「話してよかったかな。アンタなら、本心で受け入れてくれると思ったんだ」
こうやって笑えばもっと可愛いんだな。なんて思ったら、彼は急に頬を膨らませる。
「男に可愛いはあんま嬉しくない」
『ごめんごめん、じゃあ、あどけない』
「言っとくけど俺、アンタよりずっと年上だし。霧崎にももっと前から住んでるから」
『そうなの?』
「そうなの。東の原っぱは俺の場所」
心を見るのに躊躇しなくなったらしい彼は、どうやら人じゃないようだ。この前の狼は西の山って言ってたし…
『…土地神様?』
「いや、ただの妖怪だから。俺は一つ目の千里眼」
なんか、弘ともこんな会話した気がする。
『あ、そういえば原っぱの野苺摘んじゃったけど、一哉のだった?』
「あの苺やっぱりが雨月採ったの?俺楽しみにしてたんだからね」
『あー…ごめん。苺ジャムにしたから、明日の朝食に出すから許して』
「ならよし」
などなど。
折角座布団やタオルを出してきたのに、話に夢中になってたら朝になって。
朝食の用意をすれば、一哉はジャムトーストを気に入ってくれたらしく、作り置きした分を全部食べてしまった。
「苺、採っていいから、またジャム作って」
『ありがと。じゃあ、また食べに来て』
それから、満足そうに笑って、霧の中へ駆けて行った。
(霧崎にはまだまだ不思議がいっぱいみたい)
fin
最寄り駅に降りたら、霧が出ていた。
終電だったのもあって客は私だけ。
なのだけど、その小さな駅に少年が一人で座っている。
私が乗ってきたこの電車は終電だし、ここは終着駅だ。
いくらここらの終電が早いとはいえ夜中。誰かの迎えを待つにしても、時間が遅い。
『……』
無視しようかと思った。髪の毛も薄紫だし、なんかファンキーだし。
でも、もしなにか起きて、後味悪いのも嫌だ。
『…君、どうしたの』
「んー?ちょっと家出」
『ここはもう終電終わって暗くなるよ。せめて街の方にいったら?』
「えー…人がいるとこのが怖い」
たったこれだけの会話。
前髪に隠された目線は此方を多分見ていない。
それに、親近感を覚えた。
…人と関わることに、きっと、ちょっと疲れてる。
『…うち、来る?』
「は?」
『まあ、山の中のボロ家だけど。霧も出てるし屋根あるとこのがいいでしょ』
「いいの?」
『うん』
そこから、山道を30分かけて登った。
その間に彼が原一哉という名前で、友人や家族と喧嘩したのだと聞く。
『一哉は友達いるんだね』
「バカにしてんの?」
『まさか。私は友達いないから。喧嘩するのも気を遣うのも面倒がってたら独りになっちゃった』
「…」
『別にいいけど。でも、喧嘩になるくらい意見を言い合える相手なんでしょ?仲直りもできるよ』
「…そだね」
家について、お風呂やご飯を一通りおえれば、一哉から視線を感じる。
『なに?』
「無防備だなーって」
『そう?あ、風呂使う?』
「俺はいい。てか、初対面のやつ部屋に置いて風呂とかよく入れんね」
『盗まれるようなものないし。襲われる程美人でもないし』
「それが無防備」
リビングのカーペットに腰を降ろして、一哉に座布団とタオルケットを渡す。
「え?」
『うち布団ないんだよ。この前カビて捨てちゃったから、それ使って』
「ここで一緒に寝る気?」
『え、ダメ?』
視線は見えないけど、溜め息の盛大さで呆れられたのが解った。
「無防備、無頓着」
『確かに大概のことは気にならないかなぁ。私自身に興味ないし』
「……変わり者って言われるでしょ」
『まあね。人と違うって言われるけど、それすら興味ない。違うのがどう悪いことなのか解らないし、誰も納得できる説明出来なかった』
「……ねえ。口固い?」
『話す相手がいないから解んないな。なんで?』
「んー…俺の秘密、教えようかなって」
『秘密にしなくていいの?』
「雨月になら、教えたい」
座布団に座って、タオルを被った彼は、口元をちょっと緩めて。目元を覆う前髪を持ち上げた。
「俺ねー、一つ目なんだ」
『………可愛い』
「へ?」
『モノアイ?目おっきいね。これ、何色っていうの?黒…じゃないな…青?紫?もっとよく見ていい?』
彼は、本来二つの目がある場所の真ん中、鼻筋の上に、大きな目が一つあるだけだった。
その目は黒に見えるのだけど、光の反射で青にも緑にも見えて、とても綺麗。
余りに夢中で見入っていたら、一哉に手で押し返された。
お陰で、また前髪が彼の目を隠してしまう。
「…、興味ないんじゃなかったの」
『大体はね。でも、そんな綺麗なのに興味持つなってのは無理かも』
「きれい…?怖くないの?」
『うん』
「…気持ち悪くない?」
『別に?珍しいとは思うけど』
「……」
『ね、もう1回見せてよ。一哉の目、凄く綺麗だから』
怖いとか、気持ち悪いと言われたことがあるんだろうか。
それとも自分で思い込んでるんだろうか。
自分と他人の容姿の違いはそんなに大事なのか、私には解らない。
「……そんなこと、言われたことなかった」
『そうなの?』
彼はゆっくり、また前髪を上げてくれる。
その頬に手を添えて、瞳を覗きこんだ。
『…こんなに綺麗なのにね』
「だって、キモイって言われた。怖いって言われた」
『…そっか。それは、痛かったね』
だから嫌なんだ、人間は。
こんなに綺麗なものを淘汰してしまう。
『私は怖くもないし、気持ち悪いとも思わないよ』
「…」
『でもさ、視野とか狭くて困ったりしない?』
覗き込んだままいれば、一哉はゆっくり瞬きをして。
楽しそうに笑ってみせた。
「俺の目はね、人なんかよりずっとよく見えるんだよ。視野とか距離とか関係なく。見ようと思えば心の中まで」
キラキラと、瞳が輝く。
ビロードみたいだ。もしくは万華鏡。
「ごめんね、雨月の心の中、見ちゃった」
『…、どうだった?』
「話してよかったかな。アンタなら、本心で受け入れてくれると思ったんだ」
こうやって笑えばもっと可愛いんだな。なんて思ったら、彼は急に頬を膨らませる。
「男に可愛いはあんま嬉しくない」
『ごめんごめん、じゃあ、あどけない』
「言っとくけど俺、アンタよりずっと年上だし。霧崎にももっと前から住んでるから」
『そうなの?』
「そうなの。東の原っぱは俺の場所」
心を見るのに躊躇しなくなったらしい彼は、どうやら人じゃないようだ。この前の狼は西の山って言ってたし…
『…土地神様?』
「いや、ただの妖怪だから。俺は一つ目の千里眼」
なんか、弘ともこんな会話した気がする。
『あ、そういえば原っぱの野苺摘んじゃったけど、一哉のだった?』
「あの苺やっぱりが雨月採ったの?俺楽しみにしてたんだからね」
『あー…ごめん。苺ジャムにしたから、明日の朝食に出すから許して』
「ならよし」
などなど。
折角座布団やタオルを出してきたのに、話に夢中になってたら朝になって。
朝食の用意をすれば、一哉はジャムトーストを気に入ってくれたらしく、作り置きした分を全部食べてしまった。
「苺、採っていいから、またジャム作って」
『ありがと。じゃあ、また食べに来て』
それから、満足そうに笑って、霧の中へ駆けて行った。
(霧崎にはまだまだ不思議がいっぱいみたい)
fin