純白の花と紺碧の蝶
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*5日目 [花宮視点]
サントリーニ島の朝。
早朝、では無いが午前のうちに散策をしようとホテルを出た。
午後は暑くて外出には向かないから。
「……」
『…?なぁに。』
隣を歩く彼女は、俺の視線が気になるようで。
度々顔をあげる。
「似合うな、と思って」
彼女の大きな麦わら帽子。
この旅行の為に買ったのに、今日まですっかり忘れられていた。
『ありがとう。真君の見立てだもの、外れないよ』
白く染めた麦わら帽子、水色のリボンには金糸で刺繍された小花。
眩しそうにこちらを見上げた彼女は、小さくはにかんだ。
『真君も、サングラス、似合ってる』
「…お前の見立てだからな」
俺も、サングラス…よりは薄いブラウンのカラーグラスを買っていた。あんなに眩しかったのに今更思い出すんだから、余程ハネムーンに浮かれてんだと思う。
サントリーニ島の高級地区にあたるイアは、賑わっているけれど品のある小さな町で。
町並みを楽しむとか、海風を感じるとか、そういう散策にはとてもいい場所だ。
とはいっても、入り組んだ道が多いから、穴場とかそういうのは地図があっても辿り着くの難しそうだ。
『ふふ、どうしたの?』
ふいに、また彼女は俺を見上げた。
俺が見詰めていると、どうやら直ぐに気付くらしい。
「…いや」
『なあに?気になるよ』
クスクス笑いながら、上目遣いの雨月は。帽子が落ちないよう片手でつばを掴んでいる。
「…似合うな、と」
『それだけ?』
「…ああ」
『ほんとに?』
カラーグラス越しに、何か見透かされたような気がした。
(帽子が似合うのは、確かなんだが)
(帽子のつばが邪魔で顔が見えないんだよな)
(歩き疲れてないか、とか。顔色もみたいし)
(喜んでるなら、そういう顔もみたいのに)
あと、視線を感じて見上げてくる仕種が、妙に可愛く感じられるのも、ある。
「歩き疲れてなきゃいいな、と思ったんだが。丁度着いたし休むか?」
観光地のひとつ、ジョージ教会。
サントリーニでは珍しい、黄色い壁の建物だ。
広場と木陰もあるし、そこの小さな白壁の建物は周りがベンチのような形になっていて座れる。
『うん、座ろ』
日陰に入った雨月は、壁に寄りかかる為に帽子をとった。
(この方が、顔が見れていい)
『ふふ、そんなに疲れてないよ』
「無理すんなよ?お前は体力ないんだから」
見上げる彼女に視線が合うよう、俺も一度カラーグラスを外した。
白い世界に、彼女が良く映える。
『大丈夫。真君と居るとね、時間とか疲れとか、忘れちゃうくらい楽しいの』
笑顔とか、本当に眩しい。
「…だから、心配してんだよ」
目尻が下がるのを感じて、カラーグラスを掛け直す。
それから彼女の手を取って、次の目的地。
エクリシア・オノウフリオス教会。
こっちは白い壁に青い屋根。
特徴的なのは、ピラミッド型に積んだベル。
実は、昨日の写真撮影でも来てる。
この後行くブルードームもエクリシア・アギア・エカテリーニも、イアの古城も。
昨日はゆっくり見れたわけじゃないから、今日は観光が目的。
写真は撮らなくてもいいかと思ってたんだが、
『何度見ても綺麗だね』
ドレスじゃない彼女も当然のように、良くて。
「…そうだな。なあ、そのまま、」
『うん?』
教会を、鐘を、ドームを背景に。彼女の写真をスマホを翳して撮った。
彼女も真似をして俺の写真を撮っていた。
個人的には、ドームを背景にした彼女のバストアップが上手く撮れて。暫くロック画面にしようと思う。
『…うー、ん、やっぱり、実物がいいなぁ…』
一方、元々カメラが苦手な彼女は、気に入った出来映えにならなかったらしい。
拗ねたように腕を組んで抱きついてきた。
「ふはっ、いいじゃねえか。景色は良く撮れてる。俺は何時でも見れるんだから、これでいいだろ」
むくれる雨月の頬を撫でて。
昼飯を食べる予定の店に向かっていく。
『…ここでは、地図見るんだね』
「ああ。路地が入り組んでるからネットじゃ見れなくてな。まあ、帰りは無くてもいけるだろ」
『すご…私は地図見てもわかんないよ』
目的の店は観光地から少し離れる。
景色は見れないが地中海料理が食べられる店だ。
このエリアは景色が見えるところだと物価が跳ね上がる。景色は景色、飯は飯のほうがコスパはいい。
『またあれ食べたい。烏賊のフライ、えっと、カラマリ』
「…あるぞ。地中海食はオーソドックスなのは大体あるんじゃないか」
彼女お気に入りのカラマリ、鶏肉のグリル、生トマトとパルメザンのパスタ、シーフードピザ。
テイクアウトも出来るというので、野菜と海鮮のミックスグリル、ラム肉のシチュー、チーズピザを持ち帰る。それは、夕飯にする予定。
手を繋ぎ直して、昨夜泊まったホテルへ戻る。
彼女念願の洞窟ホテルで、広いジャグジーがついているとこ。
真っ白な部屋にバルコニーもあって、値段は張ったがそれだけの価値はあると思う。そこに、連泊している。
『あっっつかったぁ』
「ギリシャの昼時は本当に歩くもんじゃないな」
ホテルの部屋に着いて、エアコンを起動しながら愚痴を溢す。
灼熱の日射しもいいところ。汗だくだ。
彼女は帽子を脱いでから、買ってきた惣菜を冷蔵庫にいれている。
俺はバスタブにぬるめの湯を張りにジャグジーへ。
『まことくーん?…あ、お風呂?』
「シャワーだけでもいいが、ぬるめに溜めれば温水プールみたいになるかと思って。午後はどうせ暑くて外出れないんだ、風呂でゆっくりしてもいいだろ」
『賛成!』
当然のように一緒に入ることになって、彼女が水着を出してきたら水着も着ることになって。
汗かいたから体洗ってから水着になれば良かった!
でも濡れてると着るの難しい、水着の上から洗うの難しいしなんか変!と、困ってるんだかはしゃいでるんだかな彼女を、既にバスタブに浸かって待っている。
…水着がな、ホルターネックのワンピースなんだ。
正面から見ると、太もも全見えのミニスカートワンピースみたいなんだが、背中がな。ほぼ見えてる。
首と、胸の後ろと、腰に細いリボンが結んであって。
濡れないようにと髪の毛を上げて結ったせいでそれが綺麗に見えてる。……目の毒だ。
「…お前、イラクリオンのホテルのプール、行かなくて正解だな」
『え、なんで?』
「プールサイドで俺と合流した途端に部屋に戻されてたと思う」
バスタブに近寄って来た彼女に声をかければ、首を傾げて。返事を聞くと、恥ずかしそうに、その場でゆっくり回って見せた。
『…そのくらい、似合ってる?』
「ああ。これは一人占めするに限る」
『……あのさ、真君。海もプールも、水着で行くと絶対に真君のシャツ着せられて、水着だけで過ごせた記憶がないんだけど』
「俺以外の前ではしまっとけ。妬けるだろ」
初めて彼女のビキニを見たとき、ジャージを着させたのを思い出した。胸が無いのが恥ずかしいとか言ってたっけ。
翌シーズンには一緒に選びに行って、オフショルダーのセパレートを買った筈なのに、ビーチサイドで見たら結局俺の上着を着せることになった。
『…かわいい?』
「可愛い」
『…好みだった?』
「かなり」
腕を伸ばして腰のリボンを撫でる。
この旅行のために新調した水着は、言葉を聞く限り俺を意識して選らんだんだろう。
それも含めて可愛いんだ、自分の好みで買えばいいのに、全部俺が中心で回るとこ。馬鹿で、可愛い。
「ほら、」
更に腕をのばせば、頬を染めた彼女が腕に収まるように近づいてきて。水に浸る。
『…真君も、水着のとき、上着着てて欲しい』
「は…?」
『…。だって、格好いいもん。海とか、私がちょっと離れると色んな女の人が盗み見てて…ほんとに、もう…私の、真君なのに』
「…っ」
暑いからって入った筈の水風呂で、抱き締め合うように密着している。
お互いの頬が熱を持って触れていた。
「海の家で席取っとけって言っても、頑なに一緒に行動するのはそれか」
『そうだよ。私なんかでもね、隣にいれば“この人はフリーじゃありません”って伝わるから』
「……雨月しか、見えてないんだがな」
『それでも、って思うの、お互い様でしょ?』
「ふはっ、そうだな」
背中をいっそう抱き寄せて。広いジャグジーなのに2人で縮こまってクスクス笑う。
『…カラーグラスも、かっこよかったなぁ…』
「お前の帽子も良かったけど」
『ありがと。でもね、やっぱり直に見たいと思っちゃうの。……ふふ、半日ぶりなだけなのに、恥ずかしいくらい格好いい』
首もとにすり寄って、彼女は尚微笑んだ。
触れる熱い頬が、言葉の本気度を物語る。
バスタブが水じゃなかったら絶対に逆上せてた。
「…俺も、明るい世界で見るお前が一番綺麗だよ」
5日目終
サントリーニ島の朝。
早朝、では無いが午前のうちに散策をしようとホテルを出た。
午後は暑くて外出には向かないから。
「……」
『…?なぁに。』
隣を歩く彼女は、俺の視線が気になるようで。
度々顔をあげる。
「似合うな、と思って」
彼女の大きな麦わら帽子。
この旅行の為に買ったのに、今日まですっかり忘れられていた。
『ありがとう。真君の見立てだもの、外れないよ』
白く染めた麦わら帽子、水色のリボンには金糸で刺繍された小花。
眩しそうにこちらを見上げた彼女は、小さくはにかんだ。
『真君も、サングラス、似合ってる』
「…お前の見立てだからな」
俺も、サングラス…よりは薄いブラウンのカラーグラスを買っていた。あんなに眩しかったのに今更思い出すんだから、余程ハネムーンに浮かれてんだと思う。
サントリーニ島の高級地区にあたるイアは、賑わっているけれど品のある小さな町で。
町並みを楽しむとか、海風を感じるとか、そういう散策にはとてもいい場所だ。
とはいっても、入り組んだ道が多いから、穴場とかそういうのは地図があっても辿り着くの難しそうだ。
『ふふ、どうしたの?』
ふいに、また彼女は俺を見上げた。
俺が見詰めていると、どうやら直ぐに気付くらしい。
「…いや」
『なあに?気になるよ』
クスクス笑いながら、上目遣いの雨月は。帽子が落ちないよう片手でつばを掴んでいる。
「…似合うな、と」
『それだけ?』
「…ああ」
『ほんとに?』
カラーグラス越しに、何か見透かされたような気がした。
(帽子が似合うのは、確かなんだが)
(帽子のつばが邪魔で顔が見えないんだよな)
(歩き疲れてないか、とか。顔色もみたいし)
(喜んでるなら、そういう顔もみたいのに)
あと、視線を感じて見上げてくる仕種が、妙に可愛く感じられるのも、ある。
「歩き疲れてなきゃいいな、と思ったんだが。丁度着いたし休むか?」
観光地のひとつ、ジョージ教会。
サントリーニでは珍しい、黄色い壁の建物だ。
広場と木陰もあるし、そこの小さな白壁の建物は周りがベンチのような形になっていて座れる。
『うん、座ろ』
日陰に入った雨月は、壁に寄りかかる為に帽子をとった。
(この方が、顔が見れていい)
『ふふ、そんなに疲れてないよ』
「無理すんなよ?お前は体力ないんだから」
見上げる彼女に視線が合うよう、俺も一度カラーグラスを外した。
白い世界に、彼女が良く映える。
『大丈夫。真君と居るとね、時間とか疲れとか、忘れちゃうくらい楽しいの』
笑顔とか、本当に眩しい。
「…だから、心配してんだよ」
目尻が下がるのを感じて、カラーグラスを掛け直す。
それから彼女の手を取って、次の目的地。
エクリシア・オノウフリオス教会。
こっちは白い壁に青い屋根。
特徴的なのは、ピラミッド型に積んだベル。
実は、昨日の写真撮影でも来てる。
この後行くブルードームもエクリシア・アギア・エカテリーニも、イアの古城も。
昨日はゆっくり見れたわけじゃないから、今日は観光が目的。
写真は撮らなくてもいいかと思ってたんだが、
『何度見ても綺麗だね』
ドレスじゃない彼女も当然のように、良くて。
「…そうだな。なあ、そのまま、」
『うん?』
教会を、鐘を、ドームを背景に。彼女の写真をスマホを翳して撮った。
彼女も真似をして俺の写真を撮っていた。
個人的には、ドームを背景にした彼女のバストアップが上手く撮れて。暫くロック画面にしようと思う。
『…うー、ん、やっぱり、実物がいいなぁ…』
一方、元々カメラが苦手な彼女は、気に入った出来映えにならなかったらしい。
拗ねたように腕を組んで抱きついてきた。
「ふはっ、いいじゃねえか。景色は良く撮れてる。俺は何時でも見れるんだから、これでいいだろ」
むくれる雨月の頬を撫でて。
昼飯を食べる予定の店に向かっていく。
『…ここでは、地図見るんだね』
「ああ。路地が入り組んでるからネットじゃ見れなくてな。まあ、帰りは無くてもいけるだろ」
『すご…私は地図見てもわかんないよ』
目的の店は観光地から少し離れる。
景色は見れないが地中海料理が食べられる店だ。
このエリアは景色が見えるところだと物価が跳ね上がる。景色は景色、飯は飯のほうがコスパはいい。
『またあれ食べたい。烏賊のフライ、えっと、カラマリ』
「…あるぞ。地中海食はオーソドックスなのは大体あるんじゃないか」
彼女お気に入りのカラマリ、鶏肉のグリル、生トマトとパルメザンのパスタ、シーフードピザ。
テイクアウトも出来るというので、野菜と海鮮のミックスグリル、ラム肉のシチュー、チーズピザを持ち帰る。それは、夕飯にする予定。
手を繋ぎ直して、昨夜泊まったホテルへ戻る。
彼女念願の洞窟ホテルで、広いジャグジーがついているとこ。
真っ白な部屋にバルコニーもあって、値段は張ったがそれだけの価値はあると思う。そこに、連泊している。
『あっっつかったぁ』
「ギリシャの昼時は本当に歩くもんじゃないな」
ホテルの部屋に着いて、エアコンを起動しながら愚痴を溢す。
灼熱の日射しもいいところ。汗だくだ。
彼女は帽子を脱いでから、買ってきた惣菜を冷蔵庫にいれている。
俺はバスタブにぬるめの湯を張りにジャグジーへ。
『まことくーん?…あ、お風呂?』
「シャワーだけでもいいが、ぬるめに溜めれば温水プールみたいになるかと思って。午後はどうせ暑くて外出れないんだ、風呂でゆっくりしてもいいだろ」
『賛成!』
当然のように一緒に入ることになって、彼女が水着を出してきたら水着も着ることになって。
汗かいたから体洗ってから水着になれば良かった!
でも濡れてると着るの難しい、水着の上から洗うの難しいしなんか変!と、困ってるんだかはしゃいでるんだかな彼女を、既にバスタブに浸かって待っている。
…水着がな、ホルターネックのワンピースなんだ。
正面から見ると、太もも全見えのミニスカートワンピースみたいなんだが、背中がな。ほぼ見えてる。
首と、胸の後ろと、腰に細いリボンが結んであって。
濡れないようにと髪の毛を上げて結ったせいでそれが綺麗に見えてる。……目の毒だ。
「…お前、イラクリオンのホテルのプール、行かなくて正解だな」
『え、なんで?』
「プールサイドで俺と合流した途端に部屋に戻されてたと思う」
バスタブに近寄って来た彼女に声をかければ、首を傾げて。返事を聞くと、恥ずかしそうに、その場でゆっくり回って見せた。
『…そのくらい、似合ってる?』
「ああ。これは一人占めするに限る」
『……あのさ、真君。海もプールも、水着で行くと絶対に真君のシャツ着せられて、水着だけで過ごせた記憶がないんだけど』
「俺以外の前ではしまっとけ。妬けるだろ」
初めて彼女のビキニを見たとき、ジャージを着させたのを思い出した。胸が無いのが恥ずかしいとか言ってたっけ。
翌シーズンには一緒に選びに行って、オフショルダーのセパレートを買った筈なのに、ビーチサイドで見たら結局俺の上着を着せることになった。
『…かわいい?』
「可愛い」
『…好みだった?』
「かなり」
腕を伸ばして腰のリボンを撫でる。
この旅行のために新調した水着は、言葉を聞く限り俺を意識して選らんだんだろう。
それも含めて可愛いんだ、自分の好みで買えばいいのに、全部俺が中心で回るとこ。馬鹿で、可愛い。
「ほら、」
更に腕をのばせば、頬を染めた彼女が腕に収まるように近づいてきて。水に浸る。
『…真君も、水着のとき、上着着てて欲しい』
「は…?」
『…。だって、格好いいもん。海とか、私がちょっと離れると色んな女の人が盗み見てて…ほんとに、もう…私の、真君なのに』
「…っ」
暑いからって入った筈の水風呂で、抱き締め合うように密着している。
お互いの頬が熱を持って触れていた。
「海の家で席取っとけって言っても、頑なに一緒に行動するのはそれか」
『そうだよ。私なんかでもね、隣にいれば“この人はフリーじゃありません”って伝わるから』
「……雨月しか、見えてないんだがな」
『それでも、って思うの、お互い様でしょ?』
「ふはっ、そうだな」
背中をいっそう抱き寄せて。広いジャグジーなのに2人で縮こまってクスクス笑う。
『…カラーグラスも、かっこよかったなぁ…』
「お前の帽子も良かったけど」
『ありがと。でもね、やっぱり直に見たいと思っちゃうの。……ふふ、半日ぶりなだけなのに、恥ずかしいくらい格好いい』
首もとにすり寄って、彼女は尚微笑んだ。
触れる熱い頬が、言葉の本気度を物語る。
バスタブが水じゃなかったら絶対に逆上せてた。
「…俺も、明るい世界で見るお前が一番綺麗だよ」
5日目終