短編①
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《欠けてる者同士》:花宮
※唐突に始まって唐突に終わる
※「類は友を呼ぶ」同一ヒロイン(読んでなくても、男っぽい娘だと思ってもらえれば)
[ヒロイン視点]
花宮、という人間は大切な物が欠落してる。
例えば、慈愛の心だったり、善意だったり、そういったもの。
しかし、それがなんたるか理解していない確信犯ではないのだ。
自分のしていることは悪事だと、理解した上で愉悦している故意犯。
これはこれで質が悪い。
ただ、優しく振る舞うこともできるし、悪事を隠すだけの頭脳もある。
なのに、最後までそれを貫けないのは、彼の忍耐の欠損によるものかもしれない。
「人をディスるのはそんなに楽しいか?なあ」
『え、ディスってないけど』
「欠落だの欠損だの言っておいてよく言うぜ」
『…マコのそれは欠点じゃないし』
「あ?」
私がここにいる理由。
類は友を呼ぶ…とは言うが、私も彼も群れるのは好かない筈なのに。
何故か部活以外の時間もつるむ事が多くなった。今も、昼休みに二人で弁当を食べていたところ。
その理由を考えていたのだ。
そして、冒頭の考察が生まれた。
うっかり口に出てたのは誤算だったけど…まあいいか。
困るものでもない、ついでに聞いてもらおう。
『ミロのビーナス、もしくは三日月』
「…不完全の美か」
『うん。マコはさ、頭いいしバスケも上手い。てか、大概のことはそつなくこなせる…能力的に完成してるって言えちゃうじゃん』
「はっ、オレの人間性がビーナスの腕だって?」
『そ、三日月のがしっくり来るけど…欠けてるのが自然なんだよね。寧ろ、欠如してるのが愛しい』
あ、愛しいは言い過ぎたかも。
でも、可愛いって思うこともあるし、可愛いって"愛す可き"って書くし、間違ってはないか。
『月は満ちてても欠けてても綺麗だし、それぞれの良さがある。欠けてる事が必ずしも欠陥ではない。マコの欠けてるとこは、マコが人らしく、高校生らしくあるために必要な部分だと思う』
「…」
『あー…だからさ、欠けてていいし、欠けてるから、私も居心地いいんだなって』
「…」
『気兼ねしなくていいじゃん、似たようなとこ足りないんだから』
「…」
『なんか言えよ』
私は、答えが出せた。
結局マコといるのが居心地よくて、軽口叩かれたりからかわれても可愛いと思えるくらいには気を許せる奴なのだ。
つるんでいたって同じ価値観で話ができるし、歯に衣着せて話す必要もない。
つるまない理由がなかった。
それで、何故か押し黙ってしまった彼をつつく。
あれか、友情ゴッコキモいんだよバァカがくるのか?
「……なあ」
『ん?』
「…そうだな、俺もお前は居心地いい。馬鹿でしょうがねぇが、それも愛しいと思えるわ」
それを、口に出されて、やっぱり言い過ぎたと気付いた。
なんだこれ、存外恥ずかしいな。
『…私に向かって愛しいとか、大丈夫かマコ』
「そのまま返すぞ、バァカ」
でも、その分以上に嬉しい。
似た者同士、きっと感じることは同じ筈だから。
『ははっ、でも本心だ。愛しいよ、大好きだ』
「…っ!?」
『マコとなら、信頼とか絆とか、築いてみたいと思う』
私が一番欲しい本音を言葉にした。
欠けてるところは、満たして欲しいところ。
同じところが欠けてる私達は、同じ物が欲しいはず。
「…クソッ、先に言ってんじゃねーよ、バァカ!」
『…っ!わっ…』
「お前なんか今気付いたとこだろうが!俺は、最初に誘った時からずっと…っ」
"好きだったのに"
消え入りそうな声が聞こえたのは、彼が私を抱き寄せたから。
その声に堪らず彼の背に腕をまわして、熱を持った頬をすり寄せた。
fin
(欠けてるから、私達は一緒にいられる)
※唐突に始まって唐突に終わる
※「類は友を呼ぶ」同一ヒロイン(読んでなくても、男っぽい娘だと思ってもらえれば)
[ヒロイン視点]
花宮、という人間は大切な物が欠落してる。
例えば、慈愛の心だったり、善意だったり、そういったもの。
しかし、それがなんたるか理解していない確信犯ではないのだ。
自分のしていることは悪事だと、理解した上で愉悦している故意犯。
これはこれで質が悪い。
ただ、優しく振る舞うこともできるし、悪事を隠すだけの頭脳もある。
なのに、最後までそれを貫けないのは、彼の忍耐の欠損によるものかもしれない。
「人をディスるのはそんなに楽しいか?なあ」
『え、ディスってないけど』
「欠落だの欠損だの言っておいてよく言うぜ」
『…マコのそれは欠点じゃないし』
「あ?」
私がここにいる理由。
類は友を呼ぶ…とは言うが、私も彼も群れるのは好かない筈なのに。
何故か部活以外の時間もつるむ事が多くなった。今も、昼休みに二人で弁当を食べていたところ。
その理由を考えていたのだ。
そして、冒頭の考察が生まれた。
うっかり口に出てたのは誤算だったけど…まあいいか。
困るものでもない、ついでに聞いてもらおう。
『ミロのビーナス、もしくは三日月』
「…不完全の美か」
『うん。マコはさ、頭いいしバスケも上手い。てか、大概のことはそつなくこなせる…能力的に完成してるって言えちゃうじゃん』
「はっ、オレの人間性がビーナスの腕だって?」
『そ、三日月のがしっくり来るけど…欠けてるのが自然なんだよね。寧ろ、欠如してるのが愛しい』
あ、愛しいは言い過ぎたかも。
でも、可愛いって思うこともあるし、可愛いって"愛す可き"って書くし、間違ってはないか。
『月は満ちてても欠けてても綺麗だし、それぞれの良さがある。欠けてる事が必ずしも欠陥ではない。マコの欠けてるとこは、マコが人らしく、高校生らしくあるために必要な部分だと思う』
「…」
『あー…だからさ、欠けてていいし、欠けてるから、私も居心地いいんだなって』
「…」
『気兼ねしなくていいじゃん、似たようなとこ足りないんだから』
「…」
『なんか言えよ』
私は、答えが出せた。
結局マコといるのが居心地よくて、軽口叩かれたりからかわれても可愛いと思えるくらいには気を許せる奴なのだ。
つるんでいたって同じ価値観で話ができるし、歯に衣着せて話す必要もない。
つるまない理由がなかった。
それで、何故か押し黙ってしまった彼をつつく。
あれか、友情ゴッコキモいんだよバァカがくるのか?
「……なあ」
『ん?』
「…そうだな、俺もお前は居心地いい。馬鹿でしょうがねぇが、それも愛しいと思えるわ」
それを、口に出されて、やっぱり言い過ぎたと気付いた。
なんだこれ、存外恥ずかしいな。
『…私に向かって愛しいとか、大丈夫かマコ』
「そのまま返すぞ、バァカ」
でも、その分以上に嬉しい。
似た者同士、きっと感じることは同じ筈だから。
『ははっ、でも本心だ。愛しいよ、大好きだ』
「…っ!?」
『マコとなら、信頼とか絆とか、築いてみたいと思う』
私が一番欲しい本音を言葉にした。
欠けてるところは、満たして欲しいところ。
同じところが欠けてる私達は、同じ物が欲しいはず。
「…クソッ、先に言ってんじゃねーよ、バァカ!」
『…っ!わっ…』
「お前なんか今気付いたとこだろうが!俺は、最初に誘った時からずっと…っ」
"好きだったのに"
消え入りそうな声が聞こえたのは、彼が私を抱き寄せたから。
その声に堪らず彼の背に腕をまわして、熱を持った頬をすり寄せた。
fin
(欠けてるから、私達は一緒にいられる)