短編①
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《Hllwn》∶花宮 ハロウィン
『トリック・オア・トリート』
花宮くんに、両手を差し出した。
『お菓子ちょうだい?無いなら、イタズラさせて?』
彼は、まじまじと私を見て、溜め息。
「…それはガキの行事だろ。お前いくつだよ」
『じゅうなな!まだ未成年!』
「同い年の俺に菓子ねだるな。大人に菓子貰うもんだろ」
『同い年だけど、花宮くんは子供じゃないって思ってるんでしょ?ね?トリック・オア・トリート!』
今年のハロウィンは、ちょうど休みの日。
花宮くんのお家にピンポンしてみた。
仮装したまま出掛けてくる勇気はないから、普通に、恋人としてお家に入れてもらって。お手洗い借りたついでにお着替え。
黒いフリルのミニワンピに網タイツ、小さな角つきヘッドドレスにチョーカー。
「………そもそもなんの仮装だよ」
『バンパイア!お菓子くれなきゃ、カプカプしちゃうよ!』
実は、それでもいいと思ってる。
悪戯を大義名分に好きなだけキスさせて貰おうとか。
そんな下心もある。
「………これで良ければ」
差し出される、食べかけの苦いチョコレート。
カカオ100%とか、えげつない。
でも、花宮くんの真似して食べてたら、結構好きになった。
花宮くんとキスすると、こういう味するなって。
ニマニマしてしまう。
『ほしい』
食べさせてよ、って。
口を開けて見せれば、板チョコから一欠片に割って、口に入れてくれた。
『…苦い』
「だろうよ」
『でもね、好き』
纏わりつく苦さは、花宮くんの連れないトコや、意地悪したり容赦ないトコに、よく似てる。
それでも、後を引くその苦さに惹かれていくのも事実。
こんなに苦くて、嫌い…って思っても。思い出してはまた、味わいたくなって。
苦いのもいいなって思う頃には、芳醇な香りや纏わりつくと感じていた濃厚な部分が見えてくる。
魅力だと思うのに、上手く語れない。
ただ、ただ、好きだなって。
欲しいって、そればっかりになってしまう。
『…好きでね、どうしようもないの。行事に興味ないのは知ってるんだけど、一緒にいる口実になれば何でもよかったんだ』
「…」
『カプカプ、してもいい?』
苦いチョコは、花宮くんの味。
唇に触れたくてたまらない。
「…トリック・オア・トリート」
『へ…?』
そんな、焦れた私を見透かしたように、彼は笑う。
「悪戯されたいなら、菓子は隠しておくんだな」
私の手提げ鞄を一瞥して尚笑う彼に、ドキリとする。
意地悪、でも、好き。
『…おかし、もってない』
「イイコだ」
ふはっ…って、聞き慣れた笑い声とも吐息ともつかない音を漏らして。その唇は近づく。
『…っ』
額に、目尻に、鼻先に。
触れる唇が焦れったい。嬉しい、気持ちいい、焦れったい。
「お前がしてほしいことしたら、悪戯にならねぇだろ」
べー、って。花宮くんは舌を出してる。
私ときたら、その、赤い舌にすら魅入ってしまうのだ。
『…ぅ、そうだけど…』
「ほんと、馬鹿」
見せつけていた、赤い舌は。不意に私の唇を舐めた。
ゾクゾクしたものが背中を駆け上がって、心臓がトクトク音を立てる。
「どんだけ好きなんだよ」
『…いっぱい』
「そ。ほら、好きなだけ”カプカプ“すれば?」
花宮くんが、カプカプなんて言うと思わなかった。
だし、していいなんて、言われるとはもっと思わなかった。
『いいの?』
なんて、私は心底嬉しそうな声で彼に抱きつく。
首に腕を回しながら、かぷ。
唇を食むように、ふにふにとキスをした。
花宮くんも、さっきまでチョコ食べてたのかも。
カカオのいい匂いと独特な苦さが伝わってくる。
「雨月、」
『ん』
名前を呼ばれただけで、従順に唇を離してしまう。
よく躾られてしまった。
ついで口を薄く開ければ、また一欠片のチョコが入ってくる。
『にが…?…っ!?』
それから、口を閉じきる前に、花宮くんが覆い被さってキスをした。
まだ溶けきってないチョコが、私と花宮くんの舌の間を言ったり来たりしてる。
『っ…!』
漫画なら、目からハートが飛んでるくらいクラクラしてる。
カプカプなんて甘噛みじゃない。
食べられちゃう、って、怖くなるくらいの激しさ。
息が出来なくて苦しい。
なのに。
(…もっと、ほしい)
花宮くんは、私が苦しそうにすると、嬉しそうで。
嫌そうにすると、優しく笑ってくれる。
ほんと、「いい性格」してる。
『…っは、あ、くる、し』
「なんだよ。悪戯されたかったから、鞄に入ってる菓子は無いってことにしたんだろ?」
『…ぅ、…ぃ、いじわる』
「ふはっ!どうも」
意地悪だ、酷い、あんまりだ。
そうやって並べ立てると、花宮くんは満足そうに笑う。
それでいて、さっきまでの激しさは何処に…というくらい優しく啄むようなキスを繰り返す。
『………花宮くん』
「ん?」
『イタズラさせてくれたお礼に、お菓子あげるね』
「………。お前、本当にハロウィンどうでもよかったんだな」
私にとってハロウィンとは。
かわいい服をきて、彼にお菓子と悪戯をねだる日。
それから、イタズラしてお菓子をあげる日。
fin
『トリック・オア・トリート』
花宮くんに、両手を差し出した。
『お菓子ちょうだい?無いなら、イタズラさせて?』
彼は、まじまじと私を見て、溜め息。
「…それはガキの行事だろ。お前いくつだよ」
『じゅうなな!まだ未成年!』
「同い年の俺に菓子ねだるな。大人に菓子貰うもんだろ」
『同い年だけど、花宮くんは子供じゃないって思ってるんでしょ?ね?トリック・オア・トリート!』
今年のハロウィンは、ちょうど休みの日。
花宮くんのお家にピンポンしてみた。
仮装したまま出掛けてくる勇気はないから、普通に、恋人としてお家に入れてもらって。お手洗い借りたついでにお着替え。
黒いフリルのミニワンピに網タイツ、小さな角つきヘッドドレスにチョーカー。
「………そもそもなんの仮装だよ」
『バンパイア!お菓子くれなきゃ、カプカプしちゃうよ!』
実は、それでもいいと思ってる。
悪戯を大義名分に好きなだけキスさせて貰おうとか。
そんな下心もある。
「………これで良ければ」
差し出される、食べかけの苦いチョコレート。
カカオ100%とか、えげつない。
でも、花宮くんの真似して食べてたら、結構好きになった。
花宮くんとキスすると、こういう味するなって。
ニマニマしてしまう。
『ほしい』
食べさせてよ、って。
口を開けて見せれば、板チョコから一欠片に割って、口に入れてくれた。
『…苦い』
「だろうよ」
『でもね、好き』
纏わりつく苦さは、花宮くんの連れないトコや、意地悪したり容赦ないトコに、よく似てる。
それでも、後を引くその苦さに惹かれていくのも事実。
こんなに苦くて、嫌い…って思っても。思い出してはまた、味わいたくなって。
苦いのもいいなって思う頃には、芳醇な香りや纏わりつくと感じていた濃厚な部分が見えてくる。
魅力だと思うのに、上手く語れない。
ただ、ただ、好きだなって。
欲しいって、そればっかりになってしまう。
『…好きでね、どうしようもないの。行事に興味ないのは知ってるんだけど、一緒にいる口実になれば何でもよかったんだ』
「…」
『カプカプ、してもいい?』
苦いチョコは、花宮くんの味。
唇に触れたくてたまらない。
「…トリック・オア・トリート」
『へ…?』
そんな、焦れた私を見透かしたように、彼は笑う。
「悪戯されたいなら、菓子は隠しておくんだな」
私の手提げ鞄を一瞥して尚笑う彼に、ドキリとする。
意地悪、でも、好き。
『…おかし、もってない』
「イイコだ」
ふはっ…って、聞き慣れた笑い声とも吐息ともつかない音を漏らして。その唇は近づく。
『…っ』
額に、目尻に、鼻先に。
触れる唇が焦れったい。嬉しい、気持ちいい、焦れったい。
「お前がしてほしいことしたら、悪戯にならねぇだろ」
べー、って。花宮くんは舌を出してる。
私ときたら、その、赤い舌にすら魅入ってしまうのだ。
『…ぅ、そうだけど…』
「ほんと、馬鹿」
見せつけていた、赤い舌は。不意に私の唇を舐めた。
ゾクゾクしたものが背中を駆け上がって、心臓がトクトク音を立てる。
「どんだけ好きなんだよ」
『…いっぱい』
「そ。ほら、好きなだけ”カプカプ“すれば?」
花宮くんが、カプカプなんて言うと思わなかった。
だし、していいなんて、言われるとはもっと思わなかった。
『いいの?』
なんて、私は心底嬉しそうな声で彼に抱きつく。
首に腕を回しながら、かぷ。
唇を食むように、ふにふにとキスをした。
花宮くんも、さっきまでチョコ食べてたのかも。
カカオのいい匂いと独特な苦さが伝わってくる。
「雨月、」
『ん』
名前を呼ばれただけで、従順に唇を離してしまう。
よく躾られてしまった。
ついで口を薄く開ければ、また一欠片のチョコが入ってくる。
『にが…?…っ!?』
それから、口を閉じきる前に、花宮くんが覆い被さってキスをした。
まだ溶けきってないチョコが、私と花宮くんの舌の間を言ったり来たりしてる。
『っ…!』
漫画なら、目からハートが飛んでるくらいクラクラしてる。
カプカプなんて甘噛みじゃない。
食べられちゃう、って、怖くなるくらいの激しさ。
息が出来なくて苦しい。
なのに。
(…もっと、ほしい)
花宮くんは、私が苦しそうにすると、嬉しそうで。
嫌そうにすると、優しく笑ってくれる。
ほんと、「いい性格」してる。
『…っは、あ、くる、し』
「なんだよ。悪戯されたかったから、鞄に入ってる菓子は無いってことにしたんだろ?」
『…ぅ、…ぃ、いじわる』
「ふはっ!どうも」
意地悪だ、酷い、あんまりだ。
そうやって並べ立てると、花宮くんは満足そうに笑う。
それでいて、さっきまでの激しさは何処に…というくらい優しく啄むようなキスを繰り返す。
『………花宮くん』
「ん?」
『イタズラさせてくれたお礼に、お菓子あげるね』
「………。お前、本当にハロウィンどうでもよかったんだな」
私にとってハロウィンとは。
かわいい服をきて、彼にお菓子と悪戯をねだる日。
それから、イタズラしてお菓子をあげる日。
fin