短編①
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《阿呆な君が好き》∶古橋
※2023古橋生誕祭
『古橋、誕生日おめでとう』
「ありがとう」
今、6月30日の0時01分。
数十分前に『寝付けないから、少しだけ電話してもいい?』と彼女からラインが届いたので、そのまま電話して今に至る。
『ふふ、一番乗り』
「そうだな、一番乗りだ……というか今日も会う約束してただろ」
『うん。だってお祝いしたいもの。日曜日にごめんね、家族もお祝いしてくれるでしょ?』
「まあ、確かに夜は食事に行く予定だが…構わないさ。部活も午前だけだ、午後はお前と過ごすのも悪くない」
『そっか、部活もあるんだ。忙しくない?』
「大丈夫だ。明日、13時に駅だな」
『うん。あ、お昼食べる時間ある?少し遅らそうか?』
「そうだな……いや、早めよう。12時半に駅で、昼を一緒に食べないか?その方が長く一緒に居られる」
ふと。
着替えを持って練習に行き、駅のロッカーか最悪部室に練習着を置いていけば…もっと早く会えるだろうと思い付く。
それを口にすれば
『いいの?大変じゃない?』
「問題ない。駅前は店も多いしな。お前は大丈夫なのか?」
『全然大丈夫だよ!早く会えるの、凄く嬉しい!』
彼女の嬉しそうな声が電話越しに聞こえた。
「……そうか。なら、そうしよう」
『えへへ、明日、楽しみ。…練習頑張ってね。………おやすみ……康次郎』
「ああ。………おやすみ、雨月」
はにかむような、少し小さな声で就寝の挨拶を告げられ。
俺が応えれば、通話は終わりになった。
(………かわいい)
(電話の終わりは、震えた声で名前を呼んでくれる)
(恥ずかしいから呼べないとか言ってたくせに)
(………恥ずかしいだけで、呼びたいんだろうな)
(それは、俺も一緒だが)
翌日、練習着を結局ロッカーに放置して駅へ向かう。
花宮の機嫌が奇跡的に頗る良かったので、予定より早く練習が終わり、駅に着いたのも待ち合わせより前。
現在、12時15分。
『…!古橋、早かったね』
「お前の方が早いだろ」
『うん、待ちきれなくて』
「………そうか」
『あ、でもね、私、古橋を待つ時間好きなの。だから、気にしないで』
「変わった趣味だな」
『趣味じゃない!………うーん、待ってる間は、古橋のこと考えてるの。いっぱい考えて、会いたいを溜めて溜めて溜めて…我慢出来ないくらいになると、古橋が来てくれる』
「………変わった趣味だな」
『趣味じゃない!』
彼女の、こういう阿呆なところが結構気に入っている。
我慢出来ないくらい会いたいのを、自分で助長するなんて。マゾの鑑だ。
「………さて、飯にしよう。腹が減った」
『何食べたい?』
「…………これといって」
『お腹空いてるのは古橋でしょ。遠慮しないで………って、夕飯豪華だもんね?』
「豪華…かは知らんが、多分洋食だな。毎年ハンバーグ食べてる気がする」
『じゃあ、洋食外そうか。…近くにあるのは………ラーメン、うどん、そば、お好み焼き、パスタ…』
「麺か粉ものばかりだな」
『ご飯なら定食とか丼ものかな。回転でもお寿司はお財布的にアウト』
「そうだな………うどん、にするか」
『おうどん!あそこ、チェーンだけど美味しいよね』
別に、うどんが食べたかったわけじゃない。
そのラインナップなら、[#dn=1#]はうどんが好きだろうな。と思っただけ。
他に、強いて言えば
『ん…んん………っ』
麺をすすれなくて、もどかしげに食べる姿が好きだから…だろうか。
「……噛みきって食べれば良くないか?」
『だって、お行儀悪い…』
顔を真っ赤にして吸っているのに、麺は中々口に入れられない。
『ぷはっ…。…うー』
諦めて一度口を放す仕草も好きだ。
だから、そんなに大変なら麺じゃなくて丼ものを頼めばいいのに、とは口にしないし。
「…俺の前では気にしなくていいから。食べやすいように食べろ」
そう言い出すのも、散々啜れずにもがく姿を楽しんだ後だ。
それなのに、
『いいの?ごめんね、見苦しくて』
そう、謝ってみせる。
「優しい」ように見えるらしい。
(阿呆だな)
(抜けてるというか)
(苛めたくなる可愛さとでもいうか)
『あのね、古橋』
昼食を終えて、久しぶりのデートだと喜ぶ彼女が問いかける。
『今日は、古橋の行きたいとことか、したいことにしようよ』
「これと言って無いが…」
『今見たい映画とか』
「ない」
『欲しい服とか』
「ない」
『遊びたいこと…とか』
「ないな」
問われたことに、全てNOを返せば。
彼女はどんどん焦っていく。
『あ、あのね、古橋のしたいデートをしようとしてたから、ノープランなの』
「だろうな」
『なんか、私が逢いたいだけの我が儘でごめん。お願い、お祝いしたいの…何か我が儘を言ってほしい。プレゼントは用意してるけど、古橋の思い出に残る日にしたいから』
最後、泣きそうにそう告げると。
しゅん…と下を向いてしまった。
「………ワガママか」
『そう。私にできることなら、なんでも。私にして欲しいことでもいい』
困った様子で視線を泳がす彼女を、しばらく無言で見つめた。
彼女を困らすのが楽しい。
困った彼女がなんせ可愛い。
俺に尽くそうとしてるところが、阿呆でアホであほで、堪らなく愛しかった。
「……………」
『…………ない、かな』
「…いや、そうだな。じゃあ、1つ頼んでもいいか?」
『うん!1つなんて言わないで、何でも言って!!』
そんなこと、一つも口にしないで。
目を輝かす彼女に頼み事をする。
「…羽影にキスをしたいんだが、どこかいい場所に案内してくれないか」
彼女である、彼女にしてほしい、お願いごと。
「無ければ、ここでもいいんだが」
人通りのある駅前で、大通りに目を向けながら呟けば。
『…っ、わ、私のお家でもいい?』
控えめに、恥ずかしそうに、俺の袖を掴みながらそう言った。
「ああ、構わない。…そうだ、1つじゃなくていいんだよな、頼み事」
あまりに、その仕草も可愛いかったから。
「迷わないように、手も繋いでもらおうか」
その手をそっと握って、"案内してくれ"と催促した。
「[#dn=2#]、早く。我慢できない」
(素直に従う、阿呆なくらいの真面目さと)
(それだけ真摯に俺を好きでいてくれるところが)
(本当に大好きだ、雨月)
お誕生日おめでとう、古橋
fin
※2023古橋生誕祭
『古橋、誕生日おめでとう』
「ありがとう」
今、6月30日の0時01分。
数十分前に『寝付けないから、少しだけ電話してもいい?』と彼女からラインが届いたので、そのまま電話して今に至る。
『ふふ、一番乗り』
「そうだな、一番乗りだ……というか今日も会う約束してただろ」
『うん。だってお祝いしたいもの。日曜日にごめんね、家族もお祝いしてくれるでしょ?』
「まあ、確かに夜は食事に行く予定だが…構わないさ。部活も午前だけだ、午後はお前と過ごすのも悪くない」
『そっか、部活もあるんだ。忙しくない?』
「大丈夫だ。明日、13時に駅だな」
『うん。あ、お昼食べる時間ある?少し遅らそうか?』
「そうだな……いや、早めよう。12時半に駅で、昼を一緒に食べないか?その方が長く一緒に居られる」
ふと。
着替えを持って練習に行き、駅のロッカーか最悪部室に練習着を置いていけば…もっと早く会えるだろうと思い付く。
それを口にすれば
『いいの?大変じゃない?』
「問題ない。駅前は店も多いしな。お前は大丈夫なのか?」
『全然大丈夫だよ!早く会えるの、凄く嬉しい!』
彼女の嬉しそうな声が電話越しに聞こえた。
「……そうか。なら、そうしよう」
『えへへ、明日、楽しみ。…練習頑張ってね。………おやすみ……康次郎』
「ああ。………おやすみ、雨月」
はにかむような、少し小さな声で就寝の挨拶を告げられ。
俺が応えれば、通話は終わりになった。
(………かわいい)
(電話の終わりは、震えた声で名前を呼んでくれる)
(恥ずかしいから呼べないとか言ってたくせに)
(………恥ずかしいだけで、呼びたいんだろうな)
(それは、俺も一緒だが)
翌日、練習着を結局ロッカーに放置して駅へ向かう。
花宮の機嫌が奇跡的に頗る良かったので、予定より早く練習が終わり、駅に着いたのも待ち合わせより前。
現在、12時15分。
『…!古橋、早かったね』
「お前の方が早いだろ」
『うん、待ちきれなくて』
「………そうか」
『あ、でもね、私、古橋を待つ時間好きなの。だから、気にしないで』
「変わった趣味だな」
『趣味じゃない!………うーん、待ってる間は、古橋のこと考えてるの。いっぱい考えて、会いたいを溜めて溜めて溜めて…我慢出来ないくらいになると、古橋が来てくれる』
「………変わった趣味だな」
『趣味じゃない!』
彼女の、こういう阿呆なところが結構気に入っている。
我慢出来ないくらい会いたいのを、自分で助長するなんて。マゾの鑑だ。
「………さて、飯にしよう。腹が減った」
『何食べたい?』
「…………これといって」
『お腹空いてるのは古橋でしょ。遠慮しないで………って、夕飯豪華だもんね?』
「豪華…かは知らんが、多分洋食だな。毎年ハンバーグ食べてる気がする」
『じゃあ、洋食外そうか。…近くにあるのは………ラーメン、うどん、そば、お好み焼き、パスタ…』
「麺か粉ものばかりだな」
『ご飯なら定食とか丼ものかな。回転でもお寿司はお財布的にアウト』
「そうだな………うどん、にするか」
『おうどん!あそこ、チェーンだけど美味しいよね』
別に、うどんが食べたかったわけじゃない。
そのラインナップなら、[#dn=1#]はうどんが好きだろうな。と思っただけ。
他に、強いて言えば
『ん…んん………っ』
麺をすすれなくて、もどかしげに食べる姿が好きだから…だろうか。
「……噛みきって食べれば良くないか?」
『だって、お行儀悪い…』
顔を真っ赤にして吸っているのに、麺は中々口に入れられない。
『ぷはっ…。…うー』
諦めて一度口を放す仕草も好きだ。
だから、そんなに大変なら麺じゃなくて丼ものを頼めばいいのに、とは口にしないし。
「…俺の前では気にしなくていいから。食べやすいように食べろ」
そう言い出すのも、散々啜れずにもがく姿を楽しんだ後だ。
それなのに、
『いいの?ごめんね、見苦しくて』
そう、謝ってみせる。
「優しい」ように見えるらしい。
(阿呆だな)
(抜けてるというか)
(苛めたくなる可愛さとでもいうか)
『あのね、古橋』
昼食を終えて、久しぶりのデートだと喜ぶ彼女が問いかける。
『今日は、古橋の行きたいとことか、したいことにしようよ』
「これと言って無いが…」
『今見たい映画とか』
「ない」
『欲しい服とか』
「ない」
『遊びたいこと…とか』
「ないな」
問われたことに、全てNOを返せば。
彼女はどんどん焦っていく。
『あ、あのね、古橋のしたいデートをしようとしてたから、ノープランなの』
「だろうな」
『なんか、私が逢いたいだけの我が儘でごめん。お願い、お祝いしたいの…何か我が儘を言ってほしい。プレゼントは用意してるけど、古橋の思い出に残る日にしたいから』
最後、泣きそうにそう告げると。
しゅん…と下を向いてしまった。
「………ワガママか」
『そう。私にできることなら、なんでも。私にして欲しいことでもいい』
困った様子で視線を泳がす彼女を、しばらく無言で見つめた。
彼女を困らすのが楽しい。
困った彼女がなんせ可愛い。
俺に尽くそうとしてるところが、阿呆でアホであほで、堪らなく愛しかった。
「……………」
『…………ない、かな』
「…いや、そうだな。じゃあ、1つ頼んでもいいか?」
『うん!1つなんて言わないで、何でも言って!!』
そんなこと、一つも口にしないで。
目を輝かす彼女に頼み事をする。
「…羽影にキスをしたいんだが、どこかいい場所に案内してくれないか」
彼女である、彼女にしてほしい、お願いごと。
「無ければ、ここでもいいんだが」
人通りのある駅前で、大通りに目を向けながら呟けば。
『…っ、わ、私のお家でもいい?』
控えめに、恥ずかしそうに、俺の袖を掴みながらそう言った。
「ああ、構わない。…そうだ、1つじゃなくていいんだよな、頼み事」
あまりに、その仕草も可愛いかったから。
「迷わないように、手も繋いでもらおうか」
その手をそっと握って、"案内してくれ"と催促した。
「[#dn=2#]、早く。我慢できない」
(素直に従う、阿呆なくらいの真面目さと)
(それだけ真摯に俺を好きでいてくれるところが)
(本当に大好きだ、雨月)
お誕生日おめでとう、古橋
fin