短編①
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《ゆびさき》∶古橋
※2021古橋生誕祭
「今日、誕生日なんだが」
古橋君は唐突に口を開いた。
平日、登校日の、放課後。
部活も終わった校門で。
…少し、ムッとしたような声だった。
表現は、どことなく寂しそう。
『…知ってるよ。おめでとう、古橋君』
これでも恋人なので、それは解ってた。
ただ、日付が変わるきっかりにメールだとかLINEだとか…電話とか。そういうのはしなかったのだ。
…恥ずかしくて。
普通は寝てる時間に、連絡して起こしちゃったらどうしよう…なんて携帯を使うことを断念。
あがり症がたたって、本人を目の前にしたら「おめでとう」の一言が言えず。
いつ伝えようかとソワソワしていたら、もう、帰る時間。
お陰で、催促されてしまう始末。
「………」
『…?』
「…それだけか?」
『…手紙、書いてきたの』
「それから?」
『……クッキー、焼いてきた』
「他には?」
『お、お揃いの、ストラップ』
それもこんな執拗に。
もう無いよ、そう思って身構えれば、彼は徐に手を差し出す。
「…お前が、祝ってくれるんじゃないかって、昨夜からとても期待してた。…、その分、忘れられてたらと…とても不安だったんだ」
その台詞と、眉尻を下げた表情に、とても申し訳なくなって。
『……待たせてごめんね』
鞄に丁寧にしまっていた手紙と、クッキーと、ストラップを、彼の手に乗せた。
「…ありがとう」
彼は、それを大切そうに抱えた後。
手紙を目の前で読み始めた。
…音読されないのがせめてもの救いだろうか。
それから、クッキーを1つつまみ、残りを大事に鞄へ入れる。
最後にストラップを、彼の携帯に付けた。
『気に入って、もらえた?』
「ああ。クッキーも好みだし、ストラップも趣味がいい」
『よかった』
携帯に、私も付けてるのよ。
なんて見せれば、彼は目を細める。
「…まだ欲しい、といったら怒るか?」
『怒らない…私に用意できるものなら…だけど。寧ろ、古橋君は、怒ってない?』
「怒ってない。お前が恥ずかしがりなのは知ってるからな。…用意できるか、は問題ないと思う」
彼は、私に一歩近づく。
私はそれにドキドキして、一歩下がりそうになるのを、グッと堪えた。
「手を繋ぎたい、名前を呼びたい、…2人で、もう少し過ごせないだろうか」
彼は、小さく、雨月…と呟いた。
私はやっぱり恥ずかしくて。
逃げ出しそうな足を心で叱咤しながら、彼に応える。
『もちろん。私も、手を繋ぎたいよ、…っ…康次郎君』
振り絞った勇気は、彼にちゃんと届いた。
少し驚いた表情と、何処と無く嬉しそうな雰囲気で、彼は私の手をそっと握る。
「…明日も、明後日も、こうしていいだろうか」
『…うん。ずっと、離さないで』
(指先から、私の好きが伝わればいい)
(指先から、俺の喜びが伝わればいい)
お誕生日おめでとう、古橋。
※2021古橋生誕祭
「今日、誕生日なんだが」
古橋君は唐突に口を開いた。
平日、登校日の、放課後。
部活も終わった校門で。
…少し、ムッとしたような声だった。
表現は、どことなく寂しそう。
『…知ってるよ。おめでとう、古橋君』
これでも恋人なので、それは解ってた。
ただ、日付が変わるきっかりにメールだとかLINEだとか…電話とか。そういうのはしなかったのだ。
…恥ずかしくて。
普通は寝てる時間に、連絡して起こしちゃったらどうしよう…なんて携帯を使うことを断念。
あがり症がたたって、本人を目の前にしたら「おめでとう」の一言が言えず。
いつ伝えようかとソワソワしていたら、もう、帰る時間。
お陰で、催促されてしまう始末。
「………」
『…?』
「…それだけか?」
『…手紙、書いてきたの』
「それから?」
『……クッキー、焼いてきた』
「他には?」
『お、お揃いの、ストラップ』
それもこんな執拗に。
もう無いよ、そう思って身構えれば、彼は徐に手を差し出す。
「…お前が、祝ってくれるんじゃないかって、昨夜からとても期待してた。…、その分、忘れられてたらと…とても不安だったんだ」
その台詞と、眉尻を下げた表情に、とても申し訳なくなって。
『……待たせてごめんね』
鞄に丁寧にしまっていた手紙と、クッキーと、ストラップを、彼の手に乗せた。
「…ありがとう」
彼は、それを大切そうに抱えた後。
手紙を目の前で読み始めた。
…音読されないのがせめてもの救いだろうか。
それから、クッキーを1つつまみ、残りを大事に鞄へ入れる。
最後にストラップを、彼の携帯に付けた。
『気に入って、もらえた?』
「ああ。クッキーも好みだし、ストラップも趣味がいい」
『よかった』
携帯に、私も付けてるのよ。
なんて見せれば、彼は目を細める。
「…まだ欲しい、といったら怒るか?」
『怒らない…私に用意できるものなら…だけど。寧ろ、古橋君は、怒ってない?』
「怒ってない。お前が恥ずかしがりなのは知ってるからな。…用意できるか、は問題ないと思う」
彼は、私に一歩近づく。
私はそれにドキドキして、一歩下がりそうになるのを、グッと堪えた。
「手を繋ぎたい、名前を呼びたい、…2人で、もう少し過ごせないだろうか」
彼は、小さく、雨月…と呟いた。
私はやっぱり恥ずかしくて。
逃げ出しそうな足を心で叱咤しながら、彼に応える。
『もちろん。私も、手を繋ぎたいよ、…っ…康次郎君』
振り絞った勇気は、彼にちゃんと届いた。
少し驚いた表情と、何処と無く嬉しそうな雰囲気で、彼は私の手をそっと握る。
「…明日も、明後日も、こうしていいだろうか」
『…うん。ずっと、離さないで』
(指先から、私の好きが伝わればいい)
(指先から、俺の喜びが伝わればいい)
お誕生日おめでとう、古橋。