短編①
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《チョコレヰト》∶花宮
高3花宮とカノジョのバレンタイン
[ヒロイン視点]
***
「ん」
差し出される手が、最初は何を意味するのか解らなかった。
2月14日の夕方、彼氏が可愛らしい箱を突き出してきている。
『チョコ…?』
卒業式まで半月あまり。
大学入試を終えた人も出てきて、自由登校になる中、数少ない全体登校日だった。
当然のように進路が決まった花宮君とは違い、まだ受験が終わらない私は内心かなり焦っている。
そんな愚痴を溢したつもりはないんだけど、彼は「バレンタインは用意しなくていいから勉強しろよ。お前が受からねぇと春休みがつまらなくなる」と、不器用なLINEをくれた。
その前提があるから、今回はバレンタインチョコを用意してない。
なのに、彼の手にあるのは明らかにチョコレート。
「勉強の合間に摘まむにはいい糖分だろ?」
中身が見えるラッピングから伺えるのは、彼が好きな苦いやつじゃなくて。私が好きなホワイトやストロベリーの甘くてかわいいやつ。
恐る恐る受け取れば、カカオとミルクのいい匂いがした。
『……嬉しい。ありがとう』
花宮君が、逆チョコしてくれるなんて思いもしなかった。
好きな人にチョコを貰うのがこんなに嬉しいなんて知らなかった。
「……ん」
あまつ、頭をポンポンと撫でられて。
甘酸っぱい気持ちで胸がいっぱいになる。
『花宮君、進路決まったら一番に報告するから、待っててね』
「ああ、待ってる」
家まで送ってもらって。
彼に貰ったチョコを携えてラストスパートの勉強を始める。
きりのいいところでラッピングをほどいて、ホワイトチョコを一つ摘まむ。
一口大で甘くて美味しい。よく見たらストロベリーのピンクのチョコにはハート型もある。かわいい。
(あれ…チョコの下に、カード…?)
チョコの隙間から覗く、敷き紙とは異なる厚紙。
そっと引き出して、折りたたまれたそれを開く。
「雨月 本命だ、残さず食べろよ 花宮」
(……っ、好き)
(残さず食べたい、でも、永遠に取っておきたい…っ)
(とりあえず、受験。それからだけど)
(でも、ちゃんと終わったら)
『…食べきれないくらいお返ししよう』
***
高3花宮とカノジョのホワイトデー
[花宮視点]
***
バレンタインデーにチョコを渡した。
所謂、逆チョコ。
彼女の好きそうな甘くて可愛らしいやつを選んだ。
大喜びして、それを傍らに受験勉強ラストスパートをかけたらしい。
ついさっき、
『受かった!受かったよ!!』
凄いハイテンションで電話がかかってきた。
「よかったな」
『うん!花宮君が勉強教えてくれたおかげだよ!』
「…頑張ったのはお前だろ。おめでとう」
『…っ、ありがとう!』
ひとしきりはしゃいで、1度電話を切る。
学校にも連絡しないとだし、入学手続きとか新居探しだとか色々あるだろう。
忙しいとはいえ春休み、少しくらい会う時間が取れればいいんだが…
『もしもし、花宮君!』
「は?もう報告終わったのかよ」
逡巡する時間もややで、再び電話が鳴る。
未だにテンション高々な彼女は早口に言った。
『あのね、ホワイトデー!明後日!空いてる?少しでもいいの、お返しがしたい!』
カレンダーを見て、ああ、と納得。
「空いてる。1日1人だから、家に来いよ」
『わかった、準備があるから午後一で行くね!』
お前の準備は優先順位それでいいのか。
とも思ったけれど。
(まあ…楽しみなのは確かだし)
お返しを貰う側もソワソワするんだな、と。口角を緩めた。
そして、ホワイトデー。
家のチャイムが鳴って、彼女を招き入れる。
制服以外の装いを見るのは久しぶりで、春物のワンピースに白いカーディガンが可愛らしかった。
その次に目を引いたのが、背中に隠した花束のようなもの。
『花宮君、ハッピーホワイトデー!!』
次の瞬間には目の前に差し出されて、正体を見る。
「……飴、なのか」
半透明の花弁が何枚も重なる、バラを模した飴。
本物の花より煌めくそれは、砂糖の甘い匂いがした。
『うん。飴細工の花束』
「……綺麗だな」
良く見れば、花の数がパッと見より多く繊細だと気づく。
『花宮君、あのね』
「うん?」
花束の向こう、目を潤ませる羽影が見えて。
言葉の続きを待った。
『高校卒業しても、恋人でいてくれる?』
少し、彼女の目を見つめて。
ふはっと笑ってしまった。
「…そのつもりだったんだが。まさかお前から2回も告白してもらえるとは」
飴の花束を受け取りながら、どうしたものかと笑いが止まらない。
「お前、ホワイトデーの菓子の意味も知らない癖に、花言葉は知ってるんだな」
バラに見立てた飴の数は、12。
全てが赤色で、トゲは作られていない。
トゲのないバラは誠意を表すし、赤色のバラは誰もが知る愛の象徴。そして。
「12本のバラは“付き合ってください”、だろ?なんで不安になったか知らねぇけど、受け取るぞ、この花束」
可愛いことするんだな、と。花束を片手で抱えて、空いた手で彼女の頭を撫でた。
きょとんとしていた彼女は、徐々に顔を赤くしていく。
「………お前、花言葉も知らなかったな」
『…し、知らなかった』
「…はぁ。ぬか喜びした気分だ」
そんなことだろうとは思った。むしろ花言葉を知ってる俺が恥ずかしい。
『まってまって!意味は知らなかったけど、花宮君に告白しようとしたのは間違ってないの!ほら、私、最初にチョコを投げつけたから。ちゃんと、改まって告白したくて。…っ、好きだ、から!これからも一緒にいたいです!』
深々と頭を下げるあたり、切実さは伝わってくる。
馬鹿なんだろうなぁ。
俺はずっと、答えは是だと言っているのに。
「…」
おもむろに、受け取った飴のうちの3本を抜いて。
彼女に残りの9本を差し出す。
『え…?』
「言葉は十分受け取った。俺はこの3本があればいい。…数の意味は自分で調べろよ」
相変わらず察せなくて狼狽える彼女の額に、キスを一つ。
「ほら、折角のデートだろ?久しぶりの二人きり、満喫しないとな」
***
3本のバラ『愛の告白』
9本のバラ『いつもあなたを思っている』
Fin
高3花宮とカノジョのバレンタイン
[ヒロイン視点]
***
「ん」
差し出される手が、最初は何を意味するのか解らなかった。
2月14日の夕方、彼氏が可愛らしい箱を突き出してきている。
『チョコ…?』
卒業式まで半月あまり。
大学入試を終えた人も出てきて、自由登校になる中、数少ない全体登校日だった。
当然のように進路が決まった花宮君とは違い、まだ受験が終わらない私は内心かなり焦っている。
そんな愚痴を溢したつもりはないんだけど、彼は「バレンタインは用意しなくていいから勉強しろよ。お前が受からねぇと春休みがつまらなくなる」と、不器用なLINEをくれた。
その前提があるから、今回はバレンタインチョコを用意してない。
なのに、彼の手にあるのは明らかにチョコレート。
「勉強の合間に摘まむにはいい糖分だろ?」
中身が見えるラッピングから伺えるのは、彼が好きな苦いやつじゃなくて。私が好きなホワイトやストロベリーの甘くてかわいいやつ。
恐る恐る受け取れば、カカオとミルクのいい匂いがした。
『……嬉しい。ありがとう』
花宮君が、逆チョコしてくれるなんて思いもしなかった。
好きな人にチョコを貰うのがこんなに嬉しいなんて知らなかった。
「……ん」
あまつ、頭をポンポンと撫でられて。
甘酸っぱい気持ちで胸がいっぱいになる。
『花宮君、進路決まったら一番に報告するから、待っててね』
「ああ、待ってる」
家まで送ってもらって。
彼に貰ったチョコを携えてラストスパートの勉強を始める。
きりのいいところでラッピングをほどいて、ホワイトチョコを一つ摘まむ。
一口大で甘くて美味しい。よく見たらストロベリーのピンクのチョコにはハート型もある。かわいい。
(あれ…チョコの下に、カード…?)
チョコの隙間から覗く、敷き紙とは異なる厚紙。
そっと引き出して、折りたたまれたそれを開く。
「雨月 本命だ、残さず食べろよ 花宮」
(……っ、好き)
(残さず食べたい、でも、永遠に取っておきたい…っ)
(とりあえず、受験。それからだけど)
(でも、ちゃんと終わったら)
『…食べきれないくらいお返ししよう』
***
高3花宮とカノジョのホワイトデー
[花宮視点]
***
バレンタインデーにチョコを渡した。
所謂、逆チョコ。
彼女の好きそうな甘くて可愛らしいやつを選んだ。
大喜びして、それを傍らに受験勉強ラストスパートをかけたらしい。
ついさっき、
『受かった!受かったよ!!』
凄いハイテンションで電話がかかってきた。
「よかったな」
『うん!花宮君が勉強教えてくれたおかげだよ!』
「…頑張ったのはお前だろ。おめでとう」
『…っ、ありがとう!』
ひとしきりはしゃいで、1度電話を切る。
学校にも連絡しないとだし、入学手続きとか新居探しだとか色々あるだろう。
忙しいとはいえ春休み、少しくらい会う時間が取れればいいんだが…
『もしもし、花宮君!』
「は?もう報告終わったのかよ」
逡巡する時間もややで、再び電話が鳴る。
未だにテンション高々な彼女は早口に言った。
『あのね、ホワイトデー!明後日!空いてる?少しでもいいの、お返しがしたい!』
カレンダーを見て、ああ、と納得。
「空いてる。1日1人だから、家に来いよ」
『わかった、準備があるから午後一で行くね!』
お前の準備は優先順位それでいいのか。
とも思ったけれど。
(まあ…楽しみなのは確かだし)
お返しを貰う側もソワソワするんだな、と。口角を緩めた。
そして、ホワイトデー。
家のチャイムが鳴って、彼女を招き入れる。
制服以外の装いを見るのは久しぶりで、春物のワンピースに白いカーディガンが可愛らしかった。
その次に目を引いたのが、背中に隠した花束のようなもの。
『花宮君、ハッピーホワイトデー!!』
次の瞬間には目の前に差し出されて、正体を見る。
「……飴、なのか」
半透明の花弁が何枚も重なる、バラを模した飴。
本物の花より煌めくそれは、砂糖の甘い匂いがした。
『うん。飴細工の花束』
「……綺麗だな」
良く見れば、花の数がパッと見より多く繊細だと気づく。
『花宮君、あのね』
「うん?」
花束の向こう、目を潤ませる羽影が見えて。
言葉の続きを待った。
『高校卒業しても、恋人でいてくれる?』
少し、彼女の目を見つめて。
ふはっと笑ってしまった。
「…そのつもりだったんだが。まさかお前から2回も告白してもらえるとは」
飴の花束を受け取りながら、どうしたものかと笑いが止まらない。
「お前、ホワイトデーの菓子の意味も知らない癖に、花言葉は知ってるんだな」
バラに見立てた飴の数は、12。
全てが赤色で、トゲは作られていない。
トゲのないバラは誠意を表すし、赤色のバラは誰もが知る愛の象徴。そして。
「12本のバラは“付き合ってください”、だろ?なんで不安になったか知らねぇけど、受け取るぞ、この花束」
可愛いことするんだな、と。花束を片手で抱えて、空いた手で彼女の頭を撫でた。
きょとんとしていた彼女は、徐々に顔を赤くしていく。
「………お前、花言葉も知らなかったな」
『…し、知らなかった』
「…はぁ。ぬか喜びした気分だ」
そんなことだろうとは思った。むしろ花言葉を知ってる俺が恥ずかしい。
『まってまって!意味は知らなかったけど、花宮君に告白しようとしたのは間違ってないの!ほら、私、最初にチョコを投げつけたから。ちゃんと、改まって告白したくて。…っ、好きだ、から!これからも一緒にいたいです!』
深々と頭を下げるあたり、切実さは伝わってくる。
馬鹿なんだろうなぁ。
俺はずっと、答えは是だと言っているのに。
「…」
おもむろに、受け取った飴のうちの3本を抜いて。
彼女に残りの9本を差し出す。
『え…?』
「言葉は十分受け取った。俺はこの3本があればいい。…数の意味は自分で調べろよ」
相変わらず察せなくて狼狽える彼女の額に、キスを一つ。
「ほら、折角のデートだろ?久しぶりの二人きり、満喫しないとな」
***
3本のバラ『愛の告白』
9本のバラ『いつもあなたを思っている』
Fin