短編①
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《チョコ・シュガー》:花宮
※2019花宮生誕祭
背中が反れて、後ろに倒れそう。
そのくらいの勢いで、今、私は前方から立ったまま体重をかけられている。
……彼氏である、花宮から。
『…っ、ふ、んんっ!』
唇を合わせたまま、かれこれ何分たったのか。
体感的には数十分だけど、実際は5分も経たないだろう。……経験上。
『はなみゃ…息、くるし……っ』
体を支える為に、彼の首に回していた腕をなんとかほどいて。
たくましい胸を少し押し返す。
口を離して、精一杯酸素を取り入れる私とは裏腹に。花宮は不満顔。
「……もう1回」
『まっ、…っっ!』
そして続けざま、再び唇は捕らえられる。
頭はクラクラするし、膝は折れそうだし、背中はもうこれ以上反れないし、なんならもう腰も抜けそう。
そんな私を、彼は首から頭を右腕で、腰から背中を左腕で支えて貪っている。
どちらかの腕が離れたら、私はたちまち床に崩れるだろう。
それくらい、花宮のキスは激しかった。
……いや、あくまで恋人だから。
求められるのは嬉しい。凄く、凄く嬉しい。
キスだって嫌じゃない。むしろ好き。
何が問題かって…
「おーい、花宮ー、部活始めてよー」
ここは学校で。
部活前の部室だということ。
「…チッ」
体育館で点呼とアップをしている他の部員から声がかかるまで、部室に隠った私達はいつもこうやって時を過ごす。
…それを中断された花宮は、ドアに向かって毎回舌打ちをした。
「…羽影、」
それから、名残惜しそうに優しく唇を重ねて。
労るように唇を一舐めする。
最後、愛しげにきつく抱き締めてから
「帰り、待っててくれよ?」
と寂しそうに部活に参加するのだ。
(甘えん坊、寂しがり)
私にとっての花宮は、悪童でも不誠実な糞野郎でもなく。
温かさに餓えたただの人間だった。
その分、与えた温もりは、愛情は、倍以上になって戻ってきて。
尚且つ、「もっと」と、甘えられる。
それを許していたら、彼は隙あればああやって求めるようになってしまったのだけど。
(それを可愛いと思ってる私も、大概だよねぇ)
私は、部に出入りこそしているがマネージャーではない。気まぐれに現れるお手伝いで、正式な部員ではなかった。
「羽影は俺のであって、部のものじゃねぇ」
という、花宮の拘りによって。
どんだけ独占欲強いの。と、ちょっと呆れてちょっと喜んだのは2年生。
1年生から付き合い始めたから、もうじき2周年。今は、3年生。
「羽影、」
部活終わり、昇降口に立っていれば、花宮が小走りでやってくる。
『お疲れ様、さ、帰ろう』
「ん」
靴を履き替えた彼と自然に手を繋いで、家路を急ぐでもなく、ゆっくり歩く。
嬉しいことに、彼と私は同じ団地に家があって。
ギリギリまで一緒に帰ることができた。
「羽影、今週末、部活終わったら家で勉強な」
『うん、お願いします』
「そのまま、泊まってけ」
『やった!お着替え持ってくね』
「ちなみに今日は?」
『少しなら。でも、家には呼べない』
「…俺ん家」
『うん』
手を引かれて、彼の家に上がり込む。
私の家と似た間取りで、彼の部屋の位置は私と同じ。
「羽影、」
『ねえ、苗字じゃなくて、名前がいい』
「…」
『嫌?私は、真って呼びたい』
「…、呼んで。雨月…」
『真、好き。大好きだよ』
学校とか、部活とか、そういう檻から出てしまえば。花宮真程、素直で誠実で優しい人間を、私は知らない。
もちろん、全て対私限定かもしれないけど。
「雨月、」
嬉しそうに名前を呼びながら、真はベッドに寝転んで、私をきつくきつく抱き締める。
頭を胸に抱き寄せ、足先まで絡ませて。
『んん、苦しいってば』
「雨月は小さいんだよなぁ」
『違う、真が大きいの』
見上げれば、ゆっくり、軽く唇があわさって。それから強く押し付けられた。
『……こんな大きいのに、本当甘えん坊』
「…?好きな奴にキスしたいのは普通じゃね?」
『ところ構わずなんだもの。寂しがり』
「だから、好きな奴と少しでも一緒にいたいのは普通じゃねぇの?」
お前は違うの?
と、一瞬不安そうに見つめられて。
『真、好きよ』
違わない。とキス仕返した。
「俺も、好き、雨月…」
ほらな、と。彼は満足そうに笑って、顔中にキスしてくる。
…こういうところが甘えん坊、っていう言ってるんだけどな。
ただただキスして、ハグして、手を繋いで。
それだけで時間はどんどん過ぎる。
『真…私、帰んなきゃ』
「……送る」
『いいの?』
「言ったろ、少しでも一緒に居たいんだよ」
門限も迫ると、彼は私を家の前まで送ってくれた。
指を絡ませて手を繋ぎながら。
『またね』
「ああ。朝、迎えに来るから」
『たまには私が行くよ』
「マジ?…玄関出たら雨月がいるとか、テンション上がるな」
『…バカ。私いつもそうなんだからね』
名残惜しく手を離して、明日の約束をした。
じゃあ、と玄関に手を掛ければ、彼は後ろからふんわりと優しく抱きついて。
「おやすみ、明日、すげぇ楽しみ」
そう耳もとで囁くや、そのままチュッと、耳へキスして帰っていった。
(う、わあああ)
彼の言葉は、行動は、チョコレートみたいに甘くて。溶けてはドロドロと私を包み込む。
彼は私を砂糖みたいに甘くて可愛いというけれど、砂糖だって熱され続ければ溶けるというもの。
バクバクと高鳴る胸を無理矢理寝かしつけて、待望の朝。
彼がいつも来てくれる時間、彼の家に向かえば。
インターホンを押すまでもなく、真は玄関の外に立っていた。
『おはよう』
「はよ」
いつものように、手を繋ごうとしたら、そのまま手首を引かれて抱き締められる。
『…っ?』
「待つ……てのもいいもんだが、やっぱ待ちきれないわ、明日からはまた俺が迎えにいく」
『そ、う?』
「ああ。だから、寝癖ちゃんと直してから出てこいよ?」
え、と。慌てて頭を上げれば。
謀ったようにキスされた、
『!』
「おはようのキス、まだだったな」
Fin
※2019花宮生誕祭
背中が反れて、後ろに倒れそう。
そのくらいの勢いで、今、私は前方から立ったまま体重をかけられている。
……彼氏である、花宮から。
『…っ、ふ、んんっ!』
唇を合わせたまま、かれこれ何分たったのか。
体感的には数十分だけど、実際は5分も経たないだろう。……経験上。
『はなみゃ…息、くるし……っ』
体を支える為に、彼の首に回していた腕をなんとかほどいて。
たくましい胸を少し押し返す。
口を離して、精一杯酸素を取り入れる私とは裏腹に。花宮は不満顔。
「……もう1回」
『まっ、…っっ!』
そして続けざま、再び唇は捕らえられる。
頭はクラクラするし、膝は折れそうだし、背中はもうこれ以上反れないし、なんならもう腰も抜けそう。
そんな私を、彼は首から頭を右腕で、腰から背中を左腕で支えて貪っている。
どちらかの腕が離れたら、私はたちまち床に崩れるだろう。
それくらい、花宮のキスは激しかった。
……いや、あくまで恋人だから。
求められるのは嬉しい。凄く、凄く嬉しい。
キスだって嫌じゃない。むしろ好き。
何が問題かって…
「おーい、花宮ー、部活始めてよー」
ここは学校で。
部活前の部室だということ。
「…チッ」
体育館で点呼とアップをしている他の部員から声がかかるまで、部室に隠った私達はいつもこうやって時を過ごす。
…それを中断された花宮は、ドアに向かって毎回舌打ちをした。
「…羽影、」
それから、名残惜しそうに優しく唇を重ねて。
労るように唇を一舐めする。
最後、愛しげにきつく抱き締めてから
「帰り、待っててくれよ?」
と寂しそうに部活に参加するのだ。
(甘えん坊、寂しがり)
私にとっての花宮は、悪童でも不誠実な糞野郎でもなく。
温かさに餓えたただの人間だった。
その分、与えた温もりは、愛情は、倍以上になって戻ってきて。
尚且つ、「もっと」と、甘えられる。
それを許していたら、彼は隙あればああやって求めるようになってしまったのだけど。
(それを可愛いと思ってる私も、大概だよねぇ)
私は、部に出入りこそしているがマネージャーではない。気まぐれに現れるお手伝いで、正式な部員ではなかった。
「羽影は俺のであって、部のものじゃねぇ」
という、花宮の拘りによって。
どんだけ独占欲強いの。と、ちょっと呆れてちょっと喜んだのは2年生。
1年生から付き合い始めたから、もうじき2周年。今は、3年生。
「羽影、」
部活終わり、昇降口に立っていれば、花宮が小走りでやってくる。
『お疲れ様、さ、帰ろう』
「ん」
靴を履き替えた彼と自然に手を繋いで、家路を急ぐでもなく、ゆっくり歩く。
嬉しいことに、彼と私は同じ団地に家があって。
ギリギリまで一緒に帰ることができた。
「羽影、今週末、部活終わったら家で勉強な」
『うん、お願いします』
「そのまま、泊まってけ」
『やった!お着替え持ってくね』
「ちなみに今日は?」
『少しなら。でも、家には呼べない』
「…俺ん家」
『うん』
手を引かれて、彼の家に上がり込む。
私の家と似た間取りで、彼の部屋の位置は私と同じ。
「羽影、」
『ねえ、苗字じゃなくて、名前がいい』
「…」
『嫌?私は、真って呼びたい』
「…、呼んで。雨月…」
『真、好き。大好きだよ』
学校とか、部活とか、そういう檻から出てしまえば。花宮真程、素直で誠実で優しい人間を、私は知らない。
もちろん、全て対私限定かもしれないけど。
「雨月、」
嬉しそうに名前を呼びながら、真はベッドに寝転んで、私をきつくきつく抱き締める。
頭を胸に抱き寄せ、足先まで絡ませて。
『んん、苦しいってば』
「雨月は小さいんだよなぁ」
『違う、真が大きいの』
見上げれば、ゆっくり、軽く唇があわさって。それから強く押し付けられた。
『……こんな大きいのに、本当甘えん坊』
「…?好きな奴にキスしたいのは普通じゃね?」
『ところ構わずなんだもの。寂しがり』
「だから、好きな奴と少しでも一緒にいたいのは普通じゃねぇの?」
お前は違うの?
と、一瞬不安そうに見つめられて。
『真、好きよ』
違わない。とキス仕返した。
「俺も、好き、雨月…」
ほらな、と。彼は満足そうに笑って、顔中にキスしてくる。
…こういうところが甘えん坊、っていう言ってるんだけどな。
ただただキスして、ハグして、手を繋いで。
それだけで時間はどんどん過ぎる。
『真…私、帰んなきゃ』
「……送る」
『いいの?』
「言ったろ、少しでも一緒に居たいんだよ」
門限も迫ると、彼は私を家の前まで送ってくれた。
指を絡ませて手を繋ぎながら。
『またね』
「ああ。朝、迎えに来るから」
『たまには私が行くよ』
「マジ?…玄関出たら雨月がいるとか、テンション上がるな」
『…バカ。私いつもそうなんだからね』
名残惜しく手を離して、明日の約束をした。
じゃあ、と玄関に手を掛ければ、彼は後ろからふんわりと優しく抱きついて。
「おやすみ、明日、すげぇ楽しみ」
そう耳もとで囁くや、そのままチュッと、耳へキスして帰っていった。
(う、わあああ)
彼の言葉は、行動は、チョコレートみたいに甘くて。溶けてはドロドロと私を包み込む。
彼は私を砂糖みたいに甘くて可愛いというけれど、砂糖だって熱され続ければ溶けるというもの。
バクバクと高鳴る胸を無理矢理寝かしつけて、待望の朝。
彼がいつも来てくれる時間、彼の家に向かえば。
インターホンを押すまでもなく、真は玄関の外に立っていた。
『おはよう』
「はよ」
いつものように、手を繋ごうとしたら、そのまま手首を引かれて抱き締められる。
『…っ?』
「待つ……てのもいいもんだが、やっぱ待ちきれないわ、明日からはまた俺が迎えにいく」
『そ、う?』
「ああ。だから、寝癖ちゃんと直してから出てこいよ?」
え、と。慌てて頭を上げれば。
謀ったようにキスされた、
『!』
「おはようのキス、まだだったな」
Fin