短編①
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
《名前で》∶今吉
………今吉視点………
雨月と付き合い始めたのは中学を卒業する頃からで。
同じ高校に通うようになって早3年。残り少ない制服デートを楽しむべく、昇降口で毎日待ち合わせていた。
『こんきちー』
「いや、こんきちちゃう、いまよし」
『いやいや、こんきちでしょ。その胡散臭さ、狐並み』
「いやいやいや、それはお狐様に失礼やわ」
部活があろうが無かろうが、毎日のやりとり。
彼女は自分を今吉…『こんきち』と呼ぶ。
名字じゃなくて名前で呼んで欲しい、とかそれ以前の問題だった。
『まあいいけどさ、聞いてよ、こんきち』
「何も良くあらへんけど?!」
『この前偶然、真を見かけたんだよね』
「マコト?…花宮?」
『そうそう。でさ、呼び止めたの』
通学路を遠回りして河川敷に向かいながら、彼女はその時のことを思い出す。
……
『あ、おーい、まことー!』
「っ?!」
『ねーえー』
「わかったからでかい声で呼ぶな!」
『え、返事ないから聞こえてないのかと』
「あ゛ーもう、で、なに?」
『別に?見かけたから呼んだだけ』
「用も無いのにそんな遠くから呼び止めてんじゃねぇよバァカ!」
……
『ってことがあってさ、バァカはないよね?』
河川敷の、ちょっと崩れたような石造りのベンチに座って。雨月は少しむくれて見せた。
「……」
『こんきち?』
色々、思うところはある。
それはいつの話でどこでなのかとか。
相変わらず花宮は敬語を使わないとか。
ひとの彼女にバカ、はやっぱり腹立つとか。
「…なあ、なんでただの後輩の花宮は真で、彼氏のワシは"こんきち"なん?」
けど、一番はそれ。
なんでなん?
「名前で呼ぶとか…妬けるわぁ」
雨月のこととなると途端に余裕の無くなる自分が嗤える。
隣に座る彼女の手と指を絡めて、強く握り締めた。
『……名前、呼んで欲しかったの?』
「おん」
『そっか、気づかなくてごめんね、翔一』
その指を握り返しながら、彼女は恥ずかしそうに笑った。
「…もう一回」
『翔一』
「もう一回、」
『ふふ、欲張り。いや、甘えん坊かな?…翔一、好きだよ』
もう、それが可愛いくて可愛いくて。
「ワシも好きやで、雨月」
いつまでも、手を繋いでいたいと思った。
happy birthday 今吉先輩
………今吉視点………
雨月と付き合い始めたのは中学を卒業する頃からで。
同じ高校に通うようになって早3年。残り少ない制服デートを楽しむべく、昇降口で毎日待ち合わせていた。
『こんきちー』
「いや、こんきちちゃう、いまよし」
『いやいや、こんきちでしょ。その胡散臭さ、狐並み』
「いやいやいや、それはお狐様に失礼やわ」
部活があろうが無かろうが、毎日のやりとり。
彼女は自分を今吉…『こんきち』と呼ぶ。
名字じゃなくて名前で呼んで欲しい、とかそれ以前の問題だった。
『まあいいけどさ、聞いてよ、こんきち』
「何も良くあらへんけど?!」
『この前偶然、真を見かけたんだよね』
「マコト?…花宮?」
『そうそう。でさ、呼び止めたの』
通学路を遠回りして河川敷に向かいながら、彼女はその時のことを思い出す。
……
『あ、おーい、まことー!』
「っ?!」
『ねーえー』
「わかったからでかい声で呼ぶな!」
『え、返事ないから聞こえてないのかと』
「あ゛ーもう、で、なに?」
『別に?見かけたから呼んだだけ』
「用も無いのにそんな遠くから呼び止めてんじゃねぇよバァカ!」
……
『ってことがあってさ、バァカはないよね?』
河川敷の、ちょっと崩れたような石造りのベンチに座って。雨月は少しむくれて見せた。
「……」
『こんきち?』
色々、思うところはある。
それはいつの話でどこでなのかとか。
相変わらず花宮は敬語を使わないとか。
ひとの彼女にバカ、はやっぱり腹立つとか。
「…なあ、なんでただの後輩の花宮は真で、彼氏のワシは"こんきち"なん?」
けど、一番はそれ。
なんでなん?
「名前で呼ぶとか…妬けるわぁ」
雨月のこととなると途端に余裕の無くなる自分が嗤える。
隣に座る彼女の手と指を絡めて、強く握り締めた。
『……名前、呼んで欲しかったの?』
「おん」
『そっか、気づかなくてごめんね、翔一』
その指を握り返しながら、彼女は恥ずかしそうに笑った。
「…もう一回」
『翔一』
「もう一回、」
『ふふ、欲張り。いや、甘えん坊かな?…翔一、好きだよ』
もう、それが可愛いくて可愛いくて。
「ワシも好きやで、雨月」
いつまでも、手を繋いでいたいと思った。
happy birthday 今吉先輩